シロップ

PEOPLEText: Sachiko Kurashina

シロップは、ニューヨークとフィンランドの首都、ヘルシンキという2都市で活動していますがヘルシンキに注目したのはなぜですか?また、フィンランドのクリエイティブ事情についても教えて下さい。

シロップは、基本的にニューヨークを拠点に活動していますが、2001年に、アンティ・ヒンクーラとテーム・スヴィアーラを迎えて、フィンランドのヘルシンキに、ヨーロッパ支部とも言える新しいオフィスをオープンしました。この新しい動きの目的は、ヨーロッパでのシロップの存在を強めることと、より多くのクライアントを獲得するために、これからの世界規模での見解をより大きなものにすることです。フィンランドを選んだのは、単純にアンティとテームがその国にいたから。それと、ジェイコブは、スウェーデンの出身なのですが、彼が持つスカンジナビア風デザインのテイストと、アンティとテームの才能が見事に調和したからです。しっかりとした実利的な独立体として、ヨーロッパのコミュニティを増強したことで、大陸を越えてのビジネスが、以前よりもスムーズになりました。ヘルシンキという街も、他のどこの街よりもフレッシュな場所ですしね。

アイディアはどこから得ているのでしょうか?

普段の生活の中や、日々体験する出来事から。様々な文化や人それぞれの歴史に触れたりするのも、大きいですね。シロップのスタッフは、いろいろな国から集まっているので、シロップ自体が人種の坩堝ですよね。そういった背景の違いから生み出されるユニークなアイディアを、ひとつのテーブルに集まり発表する。そうしながら、僕達は成長し続けています。だからこそ、ニューヨークはシロップの拠点としては最適だし、アメリカっぽい、ニューヨークっぽい、そしてスカンジナビアっぽい考え方をミックスするのが好きなのです。もしかしたら今後は、タイや中国、ペルシャ地方、アフリカ、南アメリカへと、シロップの地図は広がって行くかもしれません…。

今あるアイディアを活用して何ができるかについては、ものすごく長い時間を費やして考えますし、そうすることで新たなアイディアを得ている部分もあります。コンセプトは、何が何でも一番重要!1つの問題に対して10の答を用意するのが、私達のスタイルです。

私達はまた、この近代的な世の中の連結性からぐんぐんと成長し続けている、新しい世界規模のカルチャーの一部である、という認識もしっかり持つようにしています。そう意識することで、すごく刺激を受けていますし、今は混沌としたこの世界がいつかは、より良い場所になるかもしれないという希望を持つことができます。

多くのクライアントに受け入れられた理由は何だと考えていますか?

私達のポートフォリオでは、実に幅広い種類の作品が紹介されています。クライアントのみなさんは、それを通じて、このポートフォリオは私達のスタイルを紹介しているだけではなく、私達が物事をどう捉えているかも分かるので、シロップは頼りがいがあり、想像力豊かなグループだと理解してくれているのだと思います。あと、先ほども触れましたが、信頼と誠実から育まれたクライアントとの関係は重要です。例えば何かプロジェクトをやっていて、それについて何か居心地の悪さを感じたら、私達は正直に私達なりの意見は言いますし、クライアントにもそうであってほしいと思っています。シロップでの仕事では、もうこれは何だか結婚と似ていて、私達はクライアントと同じベッドに寝ているような感じです。だからこそ、喧嘩もするし、仲直りもするし、お互いを大嫌いになってしまうときもあれば、それでも大好きになってしまうときもある。こういった親密な関係性を築けないのなら、そのプロジェクトは最悪なものになると思いますよ。実際、この関係性を好まないクライアントは、私達のリストからは削除です。

今回制作していただいた、カバーデザインについて教えて下さい。

2ヶ月ほど前にパーティーをした時に、このお菓子を使っていろいろな言葉を書いてみて、それカメラで撮影して、その画像を友人達に送ったりしましたのですが、今回はそれの延長です。これもある意味、アイディアでもありコンセプト。こういったものは、本当にどこにでも転がっている!といった感じです。どのようにアイディアを活用できるかを試していた時、そうこうしているうちに自然と他のアイディアが浮かんでくる。ひとつのプロジェクトに何個もアイディアを注ぎ込むことは無理ですが、そういった実験というか、調査から得た結果は全てきちんと保存し、他のプロジェクトで活かすようにしています。だから、お菓子で遊ぶというアイディアは結果的に、シフトのためものだった、ということになります。

今後の予定を教えて下さい。

会社として小規模であり続ける、というポリシーは変わりません。でも、仕事の量は着実に増えてきているので、徐々に拡大しつつあるのは否めません。大きなプロジェクトを勝ち取ること。そしてA級のクライアントと仕事をすること。私達が目標にしているのは、この2つのポイントです。現在も、ファッションやアクセサリー、テレコミュニケーションのトップ企業と仕事をさせてもらっていますが、自分達のフィールドも拡大しつつ、こういった会社とのプロジェクトも、もっともっと進めていきたいです。テレビのコマーシャル制作も、将来的にはやってみたいですね。

私達にとっては、メディア(広告、TV、インタラクティブ、ビデオなど)は、1番目ではなく、コンセプトが最優先です。私達は、メディアをインターナルなものにしてきた、そして新しいテクノロジーを直感的に取り入れてきた世代の一員なのですから、昔より大きなビジョンを持つことも、大きな企業をクライアントとして持つのも自然なこと。ブランドから発せられるメッセージは、私達が最も注目しているものでもあります。だからこそ私達は、コンセプトを全て実行に移しながらも調和でき、クリエイティブ性を作りあげられるように努力しているわけです。そうすることで、クライアントにはブランド性についての明確な予想図を提供できますし、クライアントが協調したいメッセージがしっかりと理解できるものとして表現されていることを、証明できると考えています。

最後に、シフト読者に向けてメッセージをお願いします。

「WORK OR GO HOME」(働くか、家に帰るか。)

SYRUP
住所:476 Broome Street, New York, NY 10013
TEL:+1 212 680 1477
info@syrupnyc.com
https://www.syruphelsinki.com

Text: Sachiko Kurashina

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