ベンジャミン・グロッサー

PEOPLEText: Memi Mizukami

いま、街はテクノロジーで溢れ、私たちは毎日のように新しい技術に驚かされている。しかし時々ふと疑問に思う。テクノロジーは、この先どうなっていくのだろう、と。ベンジャミン・グロッサーはアメリカで活躍するアーティスト/作曲家だ。彼は日々、何か面白いものや今までになかったものを探し、素晴らしい作品を作り上げる。無限の可能性を持つ作品「インタラクティブ・ロボティック・ペインティング・マシーン(相互作用的な、ロボットによる絵画製造機)」を完成させた彼にインタビューを行い、彼の考え方に触れてみた。

selfportraitdigital800.jpgベンジャミン・グロッサー
自画像(2009) アーティストが開発したソフトによってコンピュータ制御で生成されたデジタル画像

まずはじめに自己紹介をお願いします。

私はアーティストであり作曲家です。現在は、アメリカのイリノイ大学アーバナ・シャンペーン校でニューメディアの美術修士課程(MFA)にあります。以前は同大学で作曲に関する2課程を修了後、ベックマン高等科学技術研究所でイメージングテクノロジーグループを率いていました。

あなたが毎日、どのようなことを考えているのか興味があります。どこからインスピレーションを得るのですか?

私たちの日々の体験をテクノロジーが変えていく、その様子に私は大きな魅力を感じています。自分がテクノロジーを利用するときは常に、それが文化的、社会的、心理的にどういった効力を持つのかを分析しています。例えば、コンピュータはどう画像を表示するのかを調べているときは、コンピューターを介した映像は、コンピュータを介さない時の私たちの物の見方を変えるのかどうか考えています。リアリティ番組を観ているときは、カットの切り替わりのペースがどんどん早くなっていることに気づきました。そこで、「リアルな」メディアは、メディアを介さない本当の現実を変えてしまっているのではないかと考えました。また、GoogleやFacebookのような、ユーザーが欲するものを絶えず見つけ出そうとし続けるウェブサービスを使うときは、人工知能システムを、それ自体のニーズのために動くよう開発するかわりに、人間の手助けをするようにデザインしてみたらどうなるだろうかと自問するに至りました。この種の疑問は、私自身が持っている批判理論、科学、人文科学の解釈の中からも生まれてきます。そしてこうした疑問の答えを探求しようと、作品の制作に繋がっていきます。

作品を創作する時の信条は何ですか?

私は自分の作品が、これまで研究されてこなかった文化や技術の側面を明らかにするものであって欲しいと思っています。同時に作品で明らかにしたことは、どのような受け手にも理解できるものであって欲しいのです。高度な美術史のコンテクストを当てはめて私の作品を解釈する人もいます。一般的な興味だけがあり、それをテクノロジーに関する個人的な体験と結びつけて作品の本質を見る人もいます。その両極、そして中間に位置する全ての人と対話するため、私は作品に、いくつもの意味を層のように重ねあわせて設定します。誰もが理解できるポイントを提供するのです。作品に取り組めば報われます。拒否されることはありません。

また、私が探求している疑問に対して、鑑賞者一人一人が考えやすくなるように、私はよくインタラクティブな方法を用います。特定のインタラクティブな体験を作り出すことによって、鑑賞者は自身の体験と、私が彼らに提示するテクノロジーの効果とを結びつけて考えることができるのです。

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