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フジロックフェスティバル 2003

HAPPENINGText: Yasuharu Motomiya

最終日、正直やっとたどり着いたという気持ちだった。連日の雨が体を冷やし、ステージ間の移動と地面の荒れが足を棒のようにする。でも約束通り最後は晴れるものだ。体の疲れとは裏腹に気分だけは、晴れ空を見て高揚する。今日で終わりなのだ。この日ものんびりと過ごす事に。

見たいアーティストは沢山いるが、それを全部見ようとするのは不可能だ、その問題とどう折り合いをつけその場その場を楽しんでいくのかが、長いフェスティバルの一つの楽しみ方だろう。数限りある良いものから自分なりに選択していく。そこだけは大自然の中にいながら、まるで都会の生活の中にいる気分だけどしょうがない。

日中マーケットで友人と話していたが、各ステージで行われているアーティストの演奏が気になり、どこか上の空だった。


Mogwai © Hideo Kojima

しかしここであせるわけには行かない、最後の夜まで体力は温存だ。なぜならモグワイが待ってるからだ。小休止のあと「ホワイトステージ」へ、その時「グリーンステージ」では、マッシヴ・アタックがプレイ中。正直あまり注目はしていなかったのだが、足を止めざるおえなかった。アルバム「メザニーン」の「エンジェル」がボクの耳を強烈に捉えたからだ。前日は女性の歌が苗場を覆ったがこの時は、男性の歌が苗場を包み震わしていた。前者を天からの声だとしたら、これは大地からの声だった。「ホワイトステージ」への足を運ぼうにも地面から足を動かすことが難しかった、強烈に「グリーンステージ」のなだらかな丘をボクのほうへ音と歌が駆け上ってくる。それを振りほどくようにモグワイへと歩を進める。

やっと、その磁場から解放されたボクの頭の中には「モグワイ・フィア・サタン」がずっと鳴っている。この後現実に聴くことになるのだが。

こうしてフジロックフェスティバルは終わった。これは、当たり前だけど10万分の1のストーリーでしかない。その他9万9千以上ものストリーがこのイベントを覆っているのだ。そして、これらのストーリーは、終わることなくその後も参加した人、一人一人の中で続いていくのだろう。モグワイのギターフィードバックのように。

巨大であるがゆえに、共有できない部分があり、それが音楽、野外フェスティバルの魅力であるし、誰かが足を止めて聴きにいけなくても、演奏している人間がいる限り違う誰かが足を運びストーリーを紡いでいく。音は終わることはなくエンドレスに何処かで鳴り続けるのだ。このフェスティバルが終わったとしても。そして当然のように、音楽は続いていく。

FUJI ROCK FESTIVAL ’03
会期:2003年7月25日(金)〜27日(日)
会場:新潟県・苗場スキー場
出演者:国内外数十アーティスト
主催:スマッシュ
https://www.fujirockers.org

Text: Yasuharu Motomiya
Photos: Yasuharu Motomiya

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