ライアン・マクギネス展「まるで本物のような夢」
HAPPENINGText: Taka Kawachi
「GAS BOOK」から新生した「GAS」。すでに「GAS BOOK」や「GAS DVD」を通じて、才能溢れるクリエイター達のタイトルが多く発表されている。GAS発足と同時にGASショップを中目黒にオープン。階下に併設されたギャラリースペースでは、昨年12月18日からライアン・マクギネスの展覧会が開催されている。
展覧会のタイトルは、「THIS DREAM IS SO LIFE-LIKE」。ライアンのトレードマークともいえる様々なアイコンやサインを繋ぎ合わせたデザイン壁画を中心に、絵画、シルクスクリーン作品、「GAS DVD」での作品の上映が行われている。今号では、本展覧会を企画した河内タカ氏によるライアン・マクギネスのインタビューをお届けします。
今回の展覧会は「THIS DREAM IS SO LIFE-LIKE(まるで本物のような夢)」というタイトルで行われていますが、どういった内容のものですか?
僕は夢やシュールレアリズム、不条理演劇がどのように現実の世界に関係するのかということに興味があるんだ。効率的な形で分かりやすく伝達するデザインのように、具体的な形に定着した美学にも興味がある。あえて人生を詩的、主観的解釈をする前者と、人生を表現するためにできる限り直接的、客観的であることを目指す後者のように、この2つの興味は本質的に反対のものなんだ。僕たちが現実だと分かっていることが、夢の世界だと思っていることに覆されていると想定したのが『THIS DREAM IS SO LIFE-LIKE』なんだ。本当はこの世界が夢なんだと僕は断言するね。“現実の”世界にそっくりなんだと僕は気付いたんだ。
ニューヨークのダイチ・プロジェクトで行われた展覧会のタイトルにも、 “DREAM(夢)” という言葉を使われていましたね?
ダイチでの展覧会はアーティスト、ジュリア・チェンとのコラボレーションだったんだ。僕たちの夢を育て、願望を実現させて夢を叶える庭環境を作りたかったから、「Dream Garden(夢の庭)」と名付けたんだ。夢を育てるために、ちょっと庭の手入れをするだけで、全ての夢が叶うような世界だったら…と想像してみてよ。それが僕たちの住んでいる世界なんだよ。
サインやアイコンといったものを使うとき、もしくは作品に織り交ぜるとき、最初からストーリーやテーマなどがあるのですか?
それはないね。大抵、物語を展開させるために要素をまとめるんだ。そうすることで無意識(たぶん、もともとは普遍的無意識だと思う)に、作品の中で形にするのが可能になるんだ。一つ一つの要素は、そのデザインや内容の中で慎重に検討されるけれど、並列することで、もっとフリーフォームなアプローチを選べると思うんだ。作品の中での関連性は無意識のうちに作られることが多いし、大抵の人は僕とは違った作品の解釈をするからね。もちろん多いに結構なことだし、実際、いろんな解釈には励まされるよ。この作品が意味するのは~、なんて解説すること自体、気取ってるし古くさいと思ってる。全ての発言が平等に扱われる、多文化で、多くの視野を持った流動的な世界に僕たちは生きているんだ。そして的確な解釈の中で、流動的で漠然とした作品を創るのが僕のゴールなんだ。とはいうものの、単に人間であるというだけで経験することを経たみんなにとって、身近に感じるテーマをにおわせることができたらいいと思ってる。無意識、またはぼんやりと作品作りをすることで、こういったテーマが浮かび上がってくるんだよね。
展覧会で壁画アートをすることが多いですが、その魅力は何でしょう?
作品が完成するにつれて、文字から音、言葉、文章、段落といったものを話、物語、神話、テーマ、そして最終的に世界全体に自分の世界を作り上げていることに気付くんだ。その世界というのは、僕がみんなに伝えたい、みんなを招き入れたい世界なんだ。壁に掛かっているだけの作品からは想像もつかないほどの大きさで、見ている人を直面させる環境を作ることができるのが壁画やインスタレーションだからね。
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