東京デザイナーズ・ブロック 2001

HAPPENINGText: Naoko Ikeno

長大作の展示会場は、今回2ケ所であったが、そのうち「リ・デザイン」と称した椅子の展覧会を行っていたのは、イデーショップパシフィック。彼自身によると、この「リ・デザイン」には2つの流れがあるという。ジャン・プルーべの鉄製脚の食堂小椅子からリ・デザインを繰り替えして発展させた木製脚の小椅子が一つ。坂倉準三デザインの「竹篭低座椅子」からリ・デザインを展開したものがもう一つ。そのように「リ・デザイン」してきた椅子や低座椅子がずらり。和洋を見事に融合したものとして有名な、竹材を応用した椅子の他に、落ち着いた色調の革や布を用いた、日本人としてほっとするようなデザインが、店内の薄明かりの下で独特な雰囲気を醸し出す。

トム・ディクソンが、機械より押し出されるスパゲティ状のプラスティックを成形するパフォーマンスを行ったのは、ラフォーレミュージアム原宿。もともと、籠づくりやガラス細工などクラフトワークが好きな彼が、プラスティックでしかも鋳型を作ったりする必要がないのでコストをかけずに、作品を制作することに成功した。多様な色のプラスティックで作られた籠が、会場内に展示された。また、トム・ディクソンの他にもアーティストや一般来場者が、押し出し機から延々と落ち続けるプラスティックと格闘し、おのおのの作品を作り上げていた。アズミはオレンジの球を3つ繋げたようなオブジェを作り、エアコンディションドはフォークに絡み付くパスタを、ピータークリスチャンは家族でかわいらしい「面」を、といったように一つの機械から、様々な表現を生み出していく。


ユナイテッドアローズ原宿本店アネックスと、ディストリクト・ユナイテッドアローズで展覧会を行ったのは、カリム・ラシッド。本店では「トリ・ボウル」と「バイ・ボウル」が展示された。そして、手ぬぐいのプロジェクト「手拭処束矢(テヌグイドコロ・タバヤ)」では、ラシッド氏デザインによる柄を和の技術で染めた手ぬぐいの限定販売も行われ、13日にはその半数のデザインが完売になるなど、好評を博していた。ディストリクトユナイテッドアローズでは、カラフルな色彩が楽しい「OUチェア」とフェルトでできた「サーモチェア」が展示された。イデーの為にデザインされた「サーモチェア」は、これまで自動車産業の為に使われてきた技術を応用して生まれた、シンプルながらも有機的なフォルムを持つ椅子。「柔らかくて座り心地が良く簡潔なフォルムには一切の無駄がないが、そこには人間の精神の感覚的な特質が現れている。」と彼が言うように、軽やかで優しい椅子がそこにあった。

原宿、青山、西麻布、渋谷、代官山、恵比寿、東京のエリアをカバーした東京デザイナーズブロックは、期間中、東京の街を大きなデザインギャラリーにしてしまったようだった。デザインに敏感な若者、美術館を楽しむように会場を見て回る夫婦、国内外からTDBのために訪れたデザイナーをはじめとする関係者が街中に溢れ、同時多発するデザインでそれぞれ自由に遊んでいた、というのが全体としての印象だ。パーティーやイベントでは、デザインに関する会話を楽しそうに交わす人たちの姿も多く見受けられた。開催期間を同じくした東京デザイナーズ・ウィークなどの他のデザインイベントとの相乗効果もあり、デザインで沸き返る東京で、お祭り気分を満喫できた。

東京デザイナーズブロック2001
会期:2001年10月10日(水)~14日(日)
会場:原宿、青山、西麻布、渋谷、代官山、恵比寿エリア
https://www.tokyodesignersblock.com

Text: Naoko Ikeno
Photos: Naoko Ikeno

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