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平沢進インタラクティブ・ライブ

HAPPENINGText: Jiro Ohashi

先日解散した日本のビジュアル系ロックバンド「LUNA SEA」のラストコンサートでは、ワイドショーで活躍する中年女性レポーターが感動で目を赤く腫らしてレポートしていたけれど、そのテレビ映像は異常だった。メンバーが(ファンという安全な観客の埋め尽くす)客席に投げる感傷的な歯の浮く台詞も異様だけれど、それに熱狂する観客も異様だった。それは良質な音楽やパフォーマンスに触れたときの感動とはほど遠い、閉じた円環の中の一過性のヒステリーだった。しかしこれが立派なビジネスとなってくると、ライブコンサートの多くは表現とは別のタレントショーになった。高級なアーティストに憧れる俗悪な自我の陳列と、表現の質を見極める感受性とインテリジェンスが欠落した観客による共犯関係がビジネスとして成立するとこで、アミューズメントショーとして社会に認知されてしまった不幸である。

ところが、平沢のこのソロコンサートは「インタラクティブ・ライブ・ショー」とはっきり銘打たれたアミューズメントショーなのである。80年代のニューウェイブ黎明期に、音楽表現のエッジ部分でヒリヒリする緊迫感のなかで P-MODEL を開始し、アーティスト活動を行ってきた平沢は、音楽とテクノロジーの可能性を一貫して追及してきたように思える。それは筑波博の「TV WAR」以来の坂本龍一がインターネットライブなどで試みてきたアート&テクノロジーの実験とも重なってみえる。ロックミュージックの虚構のスター性と、RPG(テレビゲーム)やインターネットという現在のカジュアルなテクノロジーをモチーフに、ステージで自ら道化のようなカリスマを演じる滑稽さは、僕も含めた外部の観客には正直笑いを誘うものだった。しかしその反面、あまりに現状に即したテクノロジー環境の描写とそのショーとしての提示には空恐ろしさもまた感じ取れる。

テクノポップのオリジネーター、筋金入りのアミーガ使い、インタラクティブ・ライブという独自のコンサート形式、ネットを介したコラボレーション、積極的なウェブ展開、ネット音楽配信への黎明期からの試みなどなど……、これらは“新しモノ好き”のトレンド戦略とはまったく別種の業の深さでもある。かつての一握りの(良質な)ファンを維持しながらも、アニメファン、ゲームファン、CGマニアといった濃ゆいオタク(?)を巻き込みながら、新たなファンを獲得する様はどこか悪食的なモンスターじみている。円環はどんどん閉じて行くように見えて、その中心で捻れて拡散している。

アンコールの際に、僕の座った2階席で何かが弾けたように絶叫する女の子がいた。招待客やプレス関係者の多いいわばスカした客の固まるいやらしい一角で、一人椅子から立ち上がって髪を振り乱して絶叫し踊り狂う様は異様だったが、彼女は大江戸線の中で見たイッセイのプリーツワンピースを着た女の子だった。

平沢進 INTERACTIVE LIVE SHOW 2000 賢者のプロペラ
日時:2000年12月18日(月)
会場:浜松町メルパルクホール
住所:東京都港区芝公園2丁目5−20
https://susumuhirasawa.com

Text: Jiro Ohashi

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