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ポール・グランジョン

PEOPLEText: Jerome Lacote

今日はパリではなく、UKの話題。先日フランス人エレクトロニック・アーティスト、ゼット・プロッドのポール・グランジョンに会った。彼は展覧会「ゼット・ラブ 2001」を紹介してくれた。
その展覧会は昨年4月カーディフのチャプター・アート・センターで行われ、5年以上前の作品を展示する回顧展であった。

さてポール。この展覧会について教えてくれますか?

この展覧会は3つの主だった部分で成り立っています。まずは「ロボット・ラビット」と呼ばれるもので、手を加えた既製のおもちゃのうさぎが、一区画の本物の芝生の上に立っています。それが「ラビット‐ロボット」と永遠にくり返すのです。一回「ラビット‐ロボット」と言うごとにカウンターが増えていきます。
2台のコンピューターが動力源で、水の入ったコンテナとポンプが取り付けられています。定期的に水が芝生に汲み上げられますが、数日置きに植えかえないといけません。

「オートメーション・フォレスト」は、森で過ごす時間を人工的につくり出すという環境提案です。壁が森の巨大な写真でおおわれ、ロボットの鳥が見ている人の頭上で鳴きます。人工的な夜が森に訪れると、鳥たちはだんだん大人しくなり、暗闇にホタルが光りだします。
また朝が来ると、鳥たちは大きな声でさえずりだします。丸太のベンチが備え付けてあるので、訪れた人はリラックスしたひとときを楽しめますし、お望みなら昼夜通して座り続けていただいても結構です。昼は40分、夜は10分で夕暮れと夜明けが5分ずつあります。

「CCTV サウンドスケープ」は、ビデオカメラがとらえたモデル風景を元にしています。その景色には工場や汚染された湖といった工業ゾーンと小さな家や畑、森林といった田園ゾーンが含まれています。別室にはカメラからのリアル映像が写し出されたビデオプロジェクターがあり、その前にジョイスティックがついたコントロールパネルがあります。そのジョイスティックでカメラをコントロールできるのです。音声は現在どんな景色が写し出されているかによって変わります(カウベル、鳥、工場が出す音等)。特殊イベントが定期、不定期でおこります。

私がデザインした「ふわふわしたタマゴッチ」あるいは「トゥトゥ」「ロボヘッド」のようなロボットも展示しました。その中のいくつかはまだ作業中なんですけれどね。それに「2分間のエンターテイメント&実験」と題する連作ビデオが上映されています。

アーティストとしてのあなたを形成したものは何でしょうか?

たまたまマルセイユ(フランス)の「ボザ−ル」でアートを学び、すぐさまフォトグラフィーとビデオに多大な興味を持ちました。イギリスに来てからエレクトロニクスやロボティクス、プログラミングなどにますます興味をひかれたのです。今ではそれが私の芸術活動の主なメディアとなっています。

あなたの作品の多くには、BBCコンピューターのようなローテクの電子機器を使ったものが多く見受けられますが、なぜですか?

理由は沢山ありますが、まず第一にハイテク製品の消費を躍起になって促す市場に対する反抗という意味があります。第二に、それらローテク製品は安価で無料のものさえあります。おかげで財界や国の援助など気にせずにいられ、どこからも独立していられるのです。
最後にBBCコンピューターのように古いものはとてもシンプルでありながらその可能性は膨大で未だに利用しつくされていません。これらのマシンはどうやってコンピューターが動き、コンピューターとはいったい何なのかを理解するためにはとても適したものだと思います。

現在はどんな作品を作っているのですか?

ビーム・テクノロジー(バイオロジー・エスセティック・アーティスティック・マシーン)をスポンサーに向え、自律型ロボットを開発しています。洗練された振る舞いができるようにし、ロボットに驚くような存在感を与えたいと思っています。

長期的な目標は何でしょう?

社会と同調できるように、私の芸術作品に対して産業的な結果を出したいと思っています。私の作品が子供達のおもちゃとして売れるかどうか見極めようと努力しています。その他にはビデオやテレビ番組の制作に関わっています。たとえばBBCチャンネルのような仕事です。まったく自由にビデオを作らせて欲しいですね。

日本についてどう思いますか?

一度も訪れたことがないのです。招待されるのを待っているんですけど!ロボット愛好家にとって日本は夢の国です。日本のテクノロジーにはヨーロッパでは経験し得ない全く異なった広がりがあります。

どんな事に刺激されますか?

21 世紀に生きること、 ポスト・ヒューマニズムの観念、人間とロボットの関係でしょうか。このような問題には芸術が口をはさむ余地があると信じています。

お気に入りの情報源をいくつか教えていただけますか?

アーティスト:デュシャン、ウィリアム・ギブソン、トシオ・イワイ、ナム・ジュン・パイク、タマゴッチ

ウェブサイト:ミュート・マガジンニューポート・アートカレッジサバイバル・リサーチ・ラボラトリーイレーショナル(ヒース・バンティングをチェック)

書籍:ダイアモンド・エイジ/ニール・スティーブンソン、マーチ・オブ・マシーンズ/ケビン・ワーウィック

Text: Jerome Lacote
Translation: Eriko Nakagawa

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