WE DON’T KNOW GOD: CHIM↑POM 2005-2019

THINGSText: Hikaru Nakasuji

第3章:前提なき共同体ー共感のネットワーク


“私という作品を解説する作品という私”, 2010, ガラス, ペンキ, 音声 CD, CD プレーヤー, ヘッドフォン, サイズ可変, 制作協力:松下学 © Chim↑Pom Courtesy of the artist and ANOMALY

ミニマルな展示をめずらしく思い、ふとページをめくる手が止まった。前提を極限まで削ぎ落とし、個に向き合う静謐な空間をつくり上げている。“自分” と共感する。“自分と共感している他人” と共感する。この作品を見た全員が俯瞰することで生まれる不思議なネットワークがある。

第4章:肥大化する欲望ー現代を生きる


“King & Queen”, 2009, ラムダプリント, 116×77.3cm, 撮影:森田兼次 © Chim↑Pom Courtesy of the artist and ANOMALY

十字架に架けられたキリストの石膏像に跨りキスをするエリイからは、タブーへの挑戦と欲望を感じる。キリスト像にキスをしてはいけない合理的な説明は存在しないはずなのに、なぜだろうか。それは、長い年月をかけて我々に染み込まれてきた、無意識的なバイアスのせいかもしれない。世界や共同体の存立にとって、タブーの遵守は欠かせないものだ。そんな社会構造にメスを入れるのがチン↑ポムなのである。

第5章:超監視社会ー自由への意志


“It’s the wall world”, 2014-, インスタレーション © Chim↑Pom Courtesy of the artist and ANOMALY

美術館やギャラリーの壁をパズル状にくり抜き、世界中のさまざまな壁と交換するプロジェクト。インターネットをはじめとする技術の進歩により、世界を身近だと勘違いしがちだが、生で触れて感じなければ意味がない。壁の一部を物理的に移動させることでその重みを感じさせる展示だ。

情報や知識という資本が社会で力を持ち、所持している情報の多寡から支配関係が成立していく時代が到来している。スマートフォンで撮影した展示写真が拡散され、注目され、価値や共感が決めつけられる現象も目にする。そういった目的で撮影を許可しているアートが増える中、特定の空間を構成、変化、異化させ、リアルな体験を与えるチン↑ポムのような活動は貴重になっていくのかもしれない。チン↑ポムはこれからも社会と相対し同化しながら進んでいくのだろう。流れゆく先を見られるのは、現代社会を生きる私たちの特権である。

Chim↑Pom 作品集「We Don’t Know God: Chim↑Pom 2005-2019」
定価:5,500円(税別)
日本国内刊行日:2019年6月4日
仕様:B5、292ページ、ハードカバー、ワックス加工、箔押し
発行:ユナイテッドヴァガボンズ
http://www.unitedvagabonds.com

Text: Hikaru Nakasuji

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