鈴木将弘

PEOPLEText: Ilaria Peretti

私が彼に会ったのは、マルセイユの現代美術館の地下にある共同スタジオだった。階段を下りていくと、彼の持ち場がどこなのかすぐに見て取ることができた。植物、発酵された花やハーブなどの植生の芳香な香りが鼻をくすぐる。
鈴木将弘は12年前に日本を去り、長い放浪の末に南フランスに根を下ろすことになった。彼は自身を“異文化ノマド”と称し、研究や制作を含意する語として用いている。それは東京ドレスデンエクス=アン=プロヴァンスマルセイユと各地を転々としながら勉強し続けた人だからこそだろう。ここ数年は「フォンダシオン・ヴァザルリ」というアーティスト・イン・レジデンスに参加し、第62回サロン・ド・モンルージュにおいて「FRAC PACA」で展示を催した。最近ではマルセイユのビデオクロニクスでのグループ展も記憶に新しい。


© Masahiro Suzuki

作品に用いている自然の素材は、表現の幅にどのような影響をもたらしましたか?

自然は常に刺激を与えてくれます。現在ですと、例えば植物からさまざまな色彩の陰影を生み出し、作品に使っています。これらの天然色は絵に対する向き合い方を変え、自分のアートの素地をつくり上げてくれました。正直言って自然の複雑さに魅了されてしまっていて、石の研究を並行して進めているのもそれが理由です。硬いものから粉のように脆いものまで。自然に既存するコントラストや極端さは私の作品の本質でもあります。硬さと展性、石と花など、物質のありとあらゆる形状です。


Pflanzliche Aschen (series : Vegetable ashes)
 Plate of melted glass, plants of Kasel-Golzig, collected cadavres of flies in the studio of Beate Bolender. 24×11.5×5 cm, 2018, CreativQuartier – Spektrale 8 in Luckau © Masahiro Suzuki

感覚や自問することなど、自然に対する個人的な姿勢について教えていただけますか?

時間という観念についてよく考えます。例えば、花のはかなさに気づくことは容易です。それは人間の一生が花のいのちより長いからですよね。でも石と比較すると、我々の一生はとても限られた時間しかない。にも関わらず、石はきっとずっと昔に花として生きていた過去があり、風食しながら姿かたちを変えてきた。いつかは消えるかもしれない。そう考えると、時間とは不安定な観念だと思います。 本来、私は全ての要素に精神的時間を与えるようにしています。新しい時間軸を与える、と言いましょうか。物に時間を与え直すために、それを拾い上げ共生させることが好きなんです。


Hors cadre No. 2 (Out of frame)
 Rabbit skin glue, oil on burnt canvas, materials collected on site, colored tire, pieces of broken and painted miror, sack of jude, pvc pipe, rope, dried sea urchin, industrial wood, cardboard, polystlen, polyurethane foam, rusty metal, mattress, bauxite stones from Sommieres, Variable dimensions, 2013, ESAAix in Aix-en-Provence © Masahiro Suzuki

あなたの絵には、ご自身が通ってきた風景がたくさん出てきています。そのノマド精神と旅が制作に変化をもたらしたのでしょう。これらがアートとの関係性をどのように形づくったのか詳しくお伺いできますか?

私にとって不可欠なものですね。物事を見る目、感覚を完全に変えてしまった。移住すればするほど人々の境遇、環境、人間社会について理解が深まります。おそらく私だけじゃなくて他の人たちにとっても同じではないでしょうか。私は自分の内なる直観の赴くままに旅をします。イタリアやドイツなどを転々としたあとに南フランスへきたのもそうですね。いつも感情を揺さぶる風景を探しています。物や世界との関わり方を変えうるもの、社会環境やそれを取り巻くものなどです。そういった物事の投影や取り組み方は、私の創作活動を形成し、自分の足跡を残していけます。あとは、相互交換を強く信じています。自分が訪れた先々では、先駆者たちの精神または物理的な足跡を見つけ、その土地で育まれた自分自身の足跡も残していきます。

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