兼松佳宏

PEOPLEText: Chiho Araki

京都を中心に「フリーランスの勉強家」として、教育分野の中で精力的に活動する兼松佳宏。元グリーンズ編集長、京都精華大学人文学部の特任講師、一人で/みんなで勉強する【co-study】のための空間作りの手法「スタディホール」研究者、著述家、と様々な顔を持つ。

あいまいな自分らしさを言葉にする「beの肩書き」を提唱し、「beの肩書き」の見つけ方や、ワークショップの開き方までをまとめた初の単著『beの肩書き:「人生の肩書き」は、プレゼントしよう』が2018年11月にグリーンズ出版から発売。まるで心理カウンセリングを受けているように、心の中できつく複雑に絡み合っていた紐がスーっとほどけていくような、不思議な感覚を覚えた書籍だ。

兼松さんとは一体どんな人なのか。出版記念イベントの直前に話を聞くことができた。


© Natsumi Kinugasa / Evertale

まずはじめに自己紹介をお願いします。

自己紹介をしてくださいと言われたら、シンプルに『京都で大学の教員をしています』と言うと皆さん安心しますね。『勉強家です』から始めると、勉強家とは何かをかなり説明しないといけないので、本一冊分くらいになります(笑)具体的に言うと、空海のことや学び方のコツなど、勉強して調べたことをウェブマガジンで連載させていただいたり、ソーシャルデザイン教育を担当する大学教員をしながらフリーランスでいろんな仕事をしていて、それらをまとめて「勉強家」と言っています。

beの肩書き」がまさにそうなのですが、何らかの新しいコンセプトを提唱する、だけでなく、それを誰でも実感できるようなワークショップもデザインしたいと思っていて、最近は「ワークショップができる哲学者」を目指しています。

大学の教員になるまでは、グリーンズというウェブマガジンの編集長をしたり、『ソーシャルデザイン』という書籍を刊行したり、いろんな顔をもっていますが、根底にある「勉強家」というものを一番大事にしています。


「beの肩書き」マウナケア・スケッチ図

「beの肩書き」の中に、マウナケア・スケッチというものがありますが、更に複数の「beの肩書き」を俯瞰して見ることのできる図もありましたね。

普段のワークショップでは、ハワイにあるマウナケアという火山に見立てて真横から見た島の断面図を描いてもらっています。海面から顔を出している目に見えている島の部分が普段やっている職業である「doの肩書き」。島のすぐ下に隠れているマグマの部分が自分のあり方を表す「beの肩書き」。更に奥のマントルにあたる根っこの部分に自分の名前があります。

体験版では、「beの肩書き」をひとつ決めてもらうのですが、その発展系として、横から見た断面図をドローンで真上から見たような曼荼羅図を取り入れています。自分を例に挙げると、「大学教員」の他に「お父さん」や「著述家」など、それぞれの「doの肩書き」の下に「beの肩書き」があります。beの肩書きに喜劇俳優とありますが、あくまで「喜劇俳優のような人」ということで、実際に俳優をしているわけではありません。beの肩書きを一言で言えば、職業名をメタファーにして自分らしさを表現しようとするワークなんです。

ちょうど2月と3月に、「beの肩書き」を一日でつくる特別ワークショップもあるので、興味のある方はぜひチェックしてみてください。


「beの肩書き」兼松佳宏のマウナケア曼荼羅図

先ほど「勉強家の兼松佳宏」と書いてある名刺を頂戴しましたが、普段名刺は使い分けていますか?

この名刺だけですね。グリーンズの編集長を卒業したのが2015年の年末なのですが、その後に久しぶりに個人名刺を作りました。

初めて「勉強家」を名乗ったのは30歳くらいのときで、イベントに出演させてもらう時のプロフィール文に、こっそり「勉強家」と書いたのですが、『これでよかったですか?』『大丈夫ですか?』と問い合わせが来たりもしました。子どもが生まれた直後は「勉強家 兼 お父さん」と入れ始めたら今度は『お父さんは必要ですか?』と聞かれて『必要です。入れてください。』と返してたり(笑)昔からずっと肩書きで遊ぶのが好きみたいです。

名刺でよく言われるのが『肩書き大きいね(笑)』って。名前と同じ文字の大きさ、それがポイントです。肩に乗せるのが肩書きじゃないですか。肩に乗らないので、隣書きですね(笑)

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