「超日本」展

HAPPENINGText: Ayumi Yakura

葛西由香は、大学の卒業制作である襖絵「明治物語」が、札幌地下コンコースの500m美術館へ昨年展示されSNSでも話題となった若手作家だ。彼女は「若い世代も純粋に楽しめる身近な日本画」を目指し、ウェブ上で流行した「きのこたけのこ戦争」(明治製菓「きのこの山」対「たけのこの里」のネタ画像)を、鎌倉時代の「平治物語絵詞」に見立てて描き上げた。

葛西由香 アートフェア札幌2016
葛西由香「明治物語」2016年, 1,820 x 3,620 x 60 mm, 日本画, 襖絵/澁木智宏「遠く見ゆる」2016年, 100%ウール, 水盤(作:丸善)

戦況は、明治製菓が実施した人気投票結果を反映し「たけのこの里」に軍配が上がっている。一つだけ潜むモグリ(たけのこを被ったきのこ)を探して発見する楽しみもあると同時に、時代を超え、伝統的な表現技法である「見立て」や「やつし」の中に昔の日本人の粋なユーモアを再発見する事ができる。

独特の質感をもつ「漆」という素材から発想し、空間や時間に“色”を添え、内と外を感じさせる造形表現を試みている渡邊希。彼女は、仏像を作るため奈良時代に生まれた乾漆技法を現代アートに応用し、石膏で作った型の上に、漆と地の粉を混ぜたもので麻布を貼り重ねて固める事で、液体や布のような曲面を作り出している。

渡邊希
渡邊希「Boundary -朱-」2006年, 1,200 x 680 x 200 mm, 乾漆(漆、麻布、地の粉)

彼女は、黒と赤、艶とマットの質感を、作品のコンセプトに合わせて自在に使い分ける。本展で宙へ吊り下げられた赤く艶のある「Boundary -朱-」は、日本語で“境界”を意味し、鏡のように反射する視覚効果により現実の造形を超え、作品の表面と空間の境界を曖昧に見せる。一方で、赤くマットな「女こゝろ」は、時刻が移ろい日射しが変わる度、気まぐれに形が違って見える作品だ。

ワビサビ
ワビサビ「Air Bonsai」2016年. 310 x 230 x 170 mm, ビ二ール, 透明 / 黒

会場では更に、“音のオートクチュール”をコンセプトとして活動する作曲家・サウンドデザイナーの畑中正人による「moment」(モーメント)を聞く事ができる。同じ空間の別の場所で異なる2つのトラックを同時に再生し、様々な音の組み合わせを味わえる音響のアートだ。

本作は、“耳をひらき”音に気づくための、音楽を超えた実験的なシリーズ「ear opener」(イヤー・オープナー)の一環であり、鹿威しのように時々音が鳴ったり、和楽器のような音がうっすらと持続したり、同時に流れてくる“音のかたち”はそれぞれ異なる。それらは聞く人の意識ひとつで、音の庭のような世界を形成し得るが、意識へ届くことなくただ耳を通り抜けるだけかもしれず、音を“聞く”という行為が人間にとって何であるかを問いかける。

温故知新。承前啓後。故きを温ねて新しきを知り、未来を導き開く「超日本」的なアート表現が、非日常から日常へ“和”の心を呼び覚ましてくれる。

開廊5周年記念「超日本」展
出品作家:ワビサビ、葛西由香、澁木智宏、渡邊希、畑中正人
会期:2017年2月4日(土)〜3月31日(金)
時間:11:00〜19:00(月曜日・第三火曜日休廊)
※3月20日は祝日のため開廊し、3月21日、22日は振替休廊日
会場:クラークギャラリー+SHIFT
住所:札幌市中央区南3条東2丁目 MUSEUM 2階
TEL:011-596-7752
http://www.clarkgallery.co.jp

Text: Ayumi Yakura

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