アートフェア札幌 2016

HAPPENINGText: Ayumi Yakura

ここからはそれぞれに特色ある出展ギャラリーを紹介していく。まずは、東京を拠点に海外にも支店を持つなど国際的に活動を展開するギャラリーの数々。これらのギャラリーが出展することで、札幌に居ながら国際的なトレンドを知ることができる貴重な機会になっている。実際に会場を訪れたつもりで記事を読んでみてほしい。

※写真をクリックすると他の写真も見ることができます。

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1405号室 hpgrp GALLERY(東京・ニューヨーク)

先述の戸塚憲太郎がディレクターを務める「hpgrpギャラリー」(東京・ニューヨーク)は、時代や社会を映し出すコンセプトを持って活動するアーティストをセレクトしていた。姉川たくの新作は、インターネット上の出来事の記念碑を残すべく、インターネット上の画像に合成レタッチを繰り返して刺繍化したもの。絵画の二次元平面上における高次元空間の可視化に挑む野村康生は、NASAの衛星データを元にした作品等を出品。上野友幸は、花が写った古いモノクロ写真の上に、蝶の羽模様を切り取って作った花を重ねて命の繋がりを表現していた。

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1404号室 SORaC gallery in collaboration with AI KOWADA GALLERY(東京・上海)

今年、東京にオープンした「ソラック・ギャラリー」が、「アイコワダ・ギャラリー」(東京・上海)とのコラボレーションで出展。壁面にはイタリアのセルジオ・マリア・カラトローニによる優美に透きとおった花びらの写真があり、その下に、長澤裕子による小さくもスケール感のある大理石やローズクオーツの造形が点在していた。六角形の鏡面にアクリルペイントが施されたユー・リの作品は、ミニマルでありながら鏡面に映る世界を際限なく取り込んでしまう。

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1406号室 EINSTEIN STUDIO(東京)

アインシュタイン・スタジオ」(東京)は、「日本の写真家を世界へ」をスローガンに、アワードの開催や出版、アートフェアへの参加などを通して、海外へ向けて写真家のプロモーションや出版を行う団体。180人の若手写真家を集めたカタログ「ニュー・ジャパン・フォト」の掲載作家を中心とした出品作品の中でも特に、大塚美紀の彫刻写真や、相島大地の「フォトジェニック・3D・ドローイング」はアートフェアと親和性が高いと感じた。窓際には、写真集「JP-EN イシュー.4」から、鈴木淳也松根大樹らによる作品が展示された。

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1403号室 Emigre Collection(東京)

エミグレ・コレクション」(東京)は、国内外のアートフェア出展を中心に活動しており、銀や真鍮を用いた造形作品等を手がけるキリクがディレクターを兼務している。浅間明日美は、糸やビーズ、ラインストーン、スパンコール等を刺繍するイラストレーターで、「アンノウン・アジア 2016」では高田昭代賞を受賞している。井上相雨の造形作品には墨の筆跡が立体化したような躍動感があった。赤と黒の層でつややかな画面を構成した鈴木詩織の作品は、同色をイメージカラーとするクロスホテル札幌によって購入され、ホテルのフロントに常設されることになった。

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