アートフェア札幌 2016

HAPPENINGText: Ayumi Yakura

ここからは、国内外へのフェアにも積極的に参加している、国内の地方都市から出展したギャラリーを紹介する。普段出会うことのない地方都市のギャラリーの出展により、来場者は各部屋を巡ることで、ちょっとした旅行気分を味わいながら、その土地の作家の作品を通して、その都市の傾向や文化を知る機会になることも、本フェアの特色となっている。

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1306号室 アートギャラリー水無月(岐阜)

アートギャラリー水無月」(岐阜)の入り口では、何匹もの動物を模様のようにぎっしりと描き込んだ飯沼由貴の作品が出迎えた。その奥には、動物と静物を不自然に構成しながら実在するかのようなリアルさで描き出す奥村晃史の立体的に見えるダンボールに入ったブタの平面絵画などが展示された他、それらが織物になったワッペンやコースターがソファに広げられていた。対照的に、輪郭にゆらぎのあるタッチで少女が描かれた工藤千紘の絵画は、可愛らしくも描かれた内面性にドキリとさせられた。

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1303号室 LAD GALLERY(名古屋)

ラッド・ギャラリー」(名古屋)は、プライマリー・マーケットにおいて本当の意味で心を揺さぶる、溌溂とした感性と同時代性を備えた作品を発信している。ベッドには、しめ縄と黒髪と花が一体化した「御神花」が面相筆で描き込まれた絵画と、異なる植物の要素を掛け合わせて創作された植物の立体造形。どちらも加藤千尋作品だ。工業製品等をモチーフとしている高橋大地の平面作品は、近づいてよく見ると方眼紙の線を縦横になぞり、その空白で文字や図案を表していた。魚住哲宏・紀代美の布を被った少女の絵画が布団の上に展示されていたのはホテルフェアならでは。

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1305号室 YOD Gallery(大阪)

YODギャラリー」(大阪)は、芸術表現がグローバル化の傾向にある今、全世界に共通する価値観を国内外の作家・作品の思想から見いだすと共に、日本人のアイデンティティを見直し、世界に提示できる独自の芸術観を持った作家や作品を発掘している。佐竹龍蔵が描いた少女の顔はCGのプリズムを合成したような表面だが、筆遣いが特殊な日本画だという。そして杉山卓朗の作品もCGではなく、手書きの線を複雑に繋ぎ合わせたアクリル画だというから驚くばかり。昨年に続き、小川宣之の雅でモダンな器や、窓に吊り下げられた服部正志の「ひっつきひと」も人気を集めた。

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1304号室 同時代ギャラリー(京都)

毎年の出展を楽しみにしているリピーターが多い「同時代ギャラリー」(京都)では、窓にかかる小島柚穂の半透明な藍染の青が、日射しの移ろいと共に表情を変えた。とろりと黒い液体が零れ落ちそうな漆作品の柞磨祥子は、京都芸大修士課程を卒業したばかりという気鋭の作家。鑑賞者の解釈を限定しない松尾栄太郎の平面は、焼いた紙のコラージュという思いがけない手法から生み出されていた。さらに、貝殻の白が散りばめられた佐々木萌水の漆など、日本の伝統を受け継ぎながらその枠を超えていくような作品を見る事ができた。

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