山口碧生 個展「陰翳」

HAPPENINGText: Ayumi Yakura

カリフォルニアを拠点に書家/アーティストとして活動する山口碧生の個展「陰翳」が、出身地である北海道のクロスホテル札幌にて4月30日まで開催されている。紙へ向かう際にはまず瞑想し、「花」を書く前には心を花に、「海」を書く前には心を海にしてから筆を下ろすという彼女は、自身の内面世界を深く見つめながらも、異文化の架け橋として世界各地へ赴き、新しい手法で「書道」という伝統芸術を人々へ伝えている。

個展のテーマである「陰翳」を3つの視点から見つめ、詩に書き起こし、そのイメージを現代創作書で表現した新作インスタレーション、そして、個展開催に先駆けて2つの異なる場面で行われたライブ書道パフォーマンスから、彼女が平面を越えて表現する多様な「陰翳」が浮かんできた。

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山口碧生 x Corey Fuller ライブ書道パフォーマンス, CROSS GENERATION Vol.19 in ICE HILLS HOTEL, 2016年, Photo by Akko Terasawa

第一のライブ書道パフォーマンスは、個展開催の2日前、札幌近郊に冬期のみ出現する、雪と氷でつくられたアイスヒルズホテル イン 当別 2016で催された一夜のパーティークロスジェネレーション Vol.19の最後に行われた。

コラボレーションの相手は、山口碧生が『彼の音楽には陰翳を感じる』という、シアトル出身・東京在住のサウンドアーティスト、コリー・フラー(イルハ)。彼の奏でる音が、冷たく澄んだ空気へ響き始めると、歓談していた人々が静まり返り、やがて氷の壁が透けて見えるほどの薄布が大きく広げられた。

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山口碧生 x Corey Fuller ライブ書道パフォーマンス, CROSS GENERATION Vol.19 in ICE HILLS HOTEL, 2016年, Photo by Akko Terasawa

座礼、瞑想など、山口碧生の身体に染みついた神秘的な所作と、コリー・フラーの深淵な音楽は、氷壁の中で共鳴しながら、空間と時間、そして観客の心へ、白紙のような余白を生み出した。

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山口碧生 x Corey Fuller ライブ書道パフォーマンス, CROSS GENERATION Vol.19 in ICE HILLS HOTEL, 2016年, Photo by Akko Terasawa

そこへ墨色の陰翳が広がり、終了直後には息が乱れるほどの気迫で書かれた文字は、英語で「Ephemeral + Eternal」(エフェメラル + エターナル / 儚い + 永遠)。この雪と氷が溶ければ二度と同じ冬は訪れないように、二度と同じパフォーマンスを見ることはできないが、共有した人々には二度とない特別な記憶として残るだろう。彼女が個展の副題とした「THE RESONANCE of SHADOWS」(陰翳の反響)を直感的に感じられるパフォーマンスだった。

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