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「カモフラージュはしない」展

HAPPENINGText: Fuyumi Saito

生物学的に、侵略的外来種は生物のダイバーシティが増減するのに影響を及ぼす。タイトルは、ユダヤ人のイスラエルへの流入やシオニスト(ユダヤ人がイスラエルに故郷を立て直そうとする運動)の政治を批判しているようにも捉えられるが、ガラスでできたカラフルな植物は美しく、現実離れしたファンタジックな造形で、排除と融合から変化していくアイデンティティについて物語っている。

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“ls–DK–ET–I-count-to-one–assemblage–original”, Dafna Kaffeman, 2014

2003年以降、重荷を背負ったイスラエルの追悼、哀しみ、犠牲の念をコンセプトに、複雑な社会や政治問題に目を向けて作品を制作しているカフェマン。奇麗な色の植物のせいで、絵本の中の詩的な1ページかのようにも見える作品は、しかし、見る者がテキストの内容を知った時に覚えるショッキングなストーリーを語っている。

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“Forever Happy”, Silvia Levenson, The Museum of Craft and Design, 2015

シルヴィア・レヴェンソンは日常にある他愛もないオブジェクト(家具や洋服、お皿、ボトル、薬など)を型どって作るガラス作品で良く知られるアーティストだ。今回の展示ではアームチェアとオットマン、電気スタンドが見られる。「Forever Happy」(フォーエバー・ハッピー)のシリーズからだ。手頃な価格でデザイン性ある商品が国際的にも人気なイケアで購入した家具を覆って作られたガラス細工の表面を、鉄線のような銅のワイヤーが囲む。安全で心地よい、幸福の中心であるはずの家が緊張と不安でいっぱいの空間となる。政治に対して積極的な意見を持つ、ユダヤ系ロシア人の家に生まれ育ったレヴェンソンのメッセージが印象的に心に焼き付く。

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Detail of “The Chosen”, Silvia Levenson, The Museum of Craft and Design, 2015

レヴェンソンの家族は1908年にロシアからアルゼンチンに移住したが、1981年、当時の軍事政権ジョージ・ラファエル・ヴェラの統治下、アルゼンチンからイタリアへ亡命した。レヴェンソンは政圧に対する改革を情熱的に推進し、熱心なフェミニストとなった。アルゼンチンではグラフィックデザインを学び、1980年代後半にヨーロッパで参加したワークショップを通じて初めてガラスの世界に飛び込んだ。その後、フランス系アメリカ人の彫刻家、ルイーズ・ブルジョワのニューヨークのサロンに入り、私的な経験や感情、暗い過去の歴史から生き延びるために、アートを作るのだという哲学を学んだ。ルイーズ・ブルジョワもまた、子供時代のトラウマを抱えたアーティストだったのだ。

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