スティーヴン・チータム
PEOPLEText: Yoshiko Kurata
イギリス出身で現在イタリア・ボローニャを拠点としているイラストレーター、スティーヴン・チータム。ポッブな色彩で描かれた愛らしいキャラクターたちが彼のイラストの中にはよく登場する。それらのキャラクターたちはパーソナルワークを飛び越え、グーグル、ブリティッシュ・エアウェイズ、ナイキ、UNIQLOなど数多くの企業にも登場してきた。日本では音楽イベント、ホステス・クラブ・ウィークエンダーのポスターやフライヤーデザイン、高島屋では母の日、父の日のムービーなどと共にプロジェクトを行っている。ボローニャに引っ越してからは、彼女と一緒にパターンデザインスタジオ「オール・ザ・フルーツ」としても、壁などインテリアのデザインも行うようになり益々活躍の場を広げている。パーソナルワークではピカチュウや芸者など日本のカルチャーにも興味を持つ彼にインスピレーション源などについて話を聞いた。
Stephen Cheetham
まずは自己紹介と作品について、簡単に教えてください。
スティーヴン・チータムです。イギリス生まれのイラストレーターで、「オール・ザ・フルーツ」のパートナーであるガールフレンド、ジェシカ・ピノッティと現在はイタリア・ボローニャに住み、活動しています。
Cut & Paste ‘Miami’, All The Fruits
イラストに興味を持ったのはいつですか?
学校に通っていた小さい時からいつも描くことが好きだったと思います。イラストを仕事にしようと思ったのはロンドンに住んでからです。
Girl With Phone, Stephen Cheetham
最近の作品やプロジェクトについて教えてください。
最近はオレンジというモバイル会社の作品を手掛けました。ライブの観衆から病院の医師まで、ありとあらゆるシーンが彼らのリクエストでした。最終的にどんな作品に仕上がるかまだ分かりませんが、もうすぐ完成予定です。他にも、国内向けの新聞の環境に優しい自動車の作品や、トロントで開催されたパンナム・ゲームズ2015(南北アメリカ大陸の総合競技大会)の機内誌など小規模な紙媒体の作品をいくつか仕上げました。
T by GASBOOK, All The Fruits
プロジェクトが実に様々なこと、これが僕がこの仕事を大好きな理由です。今年の始めには、ガスアズ インターフェイスと共に高島屋の母の日・父の日キャンペーンを手掛けました。それから「オール・ザ・フルーツ」として「T by GASBOOK」のデザインもしています。とても楽しい制作でしたし、反響も大きかったと思います。
Illustration for Clerkenwell Design Week, Stephen Cheetham
どのようにイラストを描いていますか?いつもアイディアをスケッチや言葉でメモしていますか?
依頼を受けた時は、すぐにパソコンに向かい、直接ワコムのタブレットを使ってイラストレーターで作業します。もう少しレイアウトなどの案を練る必要がある時は、スケッチブックを使うこともありますが、ほとんどのプロジェクトでは使いません。いつもスケッチブックは持ち歩いていますが、個人的な作品アイディアを書き留めるために使うことがほとんどです。
The Cresent print, All The Fruits
「オール・ザ・フルーツ」をスタートさせた時、イギリスからイタリアに移ったそうですね。2つの国のクリエイティブ・シーンには何か違いを感じましたか?
ボローニャに比べ、ロンドンにはギャラリーやクリエイティブなイベントが多くあり、クリエイティブの環境という面では大きな違いがありました。でもどの国でも、クリエイティブ・シーンが僕に影響を与えてくれることにはあまり違いがなかったと思います。今もロンドンにいた時と同じように仕事をし、仕事のチャンスも全く変わっていません。そういう点で特に違いがないことが、フリーで働くことの利点だと思います。僕の仕事は全てパソコンで行い、クライアントとはほとんどの場合メールやスカイプでやり取りするので、どこを拠点にしているかはあまり問題ではありません。
「オール・ザ・フルーツ」のデザインは、あなた個人の作品よりも少しシンプルでさっぱりとした印象です。壁紙のパターンを制作する時は、イラストの制作と比べ何か違うポイントはありますか?
「オール・ザ・フルーツ」の作品は、僕個人の作品とは全く別の物です。これはクリエイティブ・パートナーと共同で行っているからだと思います。僕とジェシカが、作品に対して別の個性を持たせるので、この共同作業が最終的な作品のでき上がりに効果的に働くのです。
ホステス・クラブとの仕事で「ホステス・クラブ・ウィークエンダー」の作品を手掛けていますね。このプロジェクトはどのように始まったのですか?
とても仲の良い友人がずいぶん前にホステスで働き始め、ホステス・クラブ・ウィークエンダーのイベントを始める際に連絡がありました。彼女がロンドンに住んでいる時にすでに彼女の音楽イベントのフライヤーを手掛けたことがあったので、このイベントのプロモーションのためのポスターと全ての出演者のキャラクターの制作を依頼されました。そのプロジェクトは大成功を収め、以来彼らと仕事をしています。キャラクターを作成するのは非常に楽しく、同じクライアントと長く仕事ができてとても嬉しいです。僕の仕事の多くは一回限りのものなので、毎年一緒に仕事ができるクライアントができたのは素敵な変化です。
Hostess Club All-Nighter, Stephen Cheetham
ホステス・クラブ・ウィークエンダーのポスターデザインは多くありますが、どれが一番印象的ですか?
僕はすぐに自分の作品に飽きてしまうので、今のお気に入りは一番新しいデザインです。これまでの東京のスカイラインのテーマから離れ、キャラクター全員を宇宙に飛ばしてみました。
Tiger Teddy, Stephen Cheetham
別のインタビュー記事であなたの作業スペースを見たことがあるのですが、たくさんのCDがありましたよね。どんなミュージシャンに影響を受けてきましたか?
いい質問ですね。僕に影響を与えてくれたアーティストがいるかはよくわかりませんが、仕事中にはたくさんの音楽を聞きます。質問の答えにはならないけれど、10代のころはピート・ファウラーの作品にかなり影響を受けました。ピートは僕がずっと大ファンのスーパー・ファーリー・アニマルズのアートワークを全て手掛けていて、彼らが僕の作品やスタイルにある意味影響を与えているのだと思います。
Mother’s Day for Takashimaya, Stephen Cheetham
高島屋の母の日・父の日のデザインを手掛けていますね。あなたの個人的な作品で、いくつかのキャラクターがたびたび登場しますが、コミックや漫画に影響は受けていますか?
多くの子供がそうだと思いますが、小さい頃からテレビでアニメを見て育ちました。でも主な影響はおもちゃから受けていると思います。たくさんのレゴやプレイモービルで遊んだので、そういったものが今の僕のキャラクターに組み込まれているかもしれません。
Wakey Wakey for NSPCC, Stephen Cheetham
ピカチュウや芸者など日本の文化に興味があるそうですが、もし日本に来たら何をしたいですか?
もちろん、全てのことをやってみたいです!たぶんそれが、長い間行きたいと思っていてもまだ行けていない理由ですね。長い時間と多くのお金が必要です。少なくとも1カ月は滞在して、見れるだけのものを見る。でもあまり急いで回りたくはありません。今実際に考えてみると、日本で何が起きているのか1年くらいかけてみるのがいいのかもしれません。ジェシカがどう思っているか確認してみないと。
Road Trip for Orange, Stephen Cheetham
何か今後のプロジェクトの予定はありますか?
「オール・ザ・フルーツ」のわくわくするプロジェクトがありますが、多くは今はまだ発表できません。他にも取り掛かりたい個人的なプロジェクトがいくつかあるのですが、今は仕事より夏休みのことを考えています。
Text: Yoshiko Kurata
Translation: Satsuki Miyanishi