久野志乃

PEOPLEText: Ayumi Yakura

shinohisano北海道を拠点とする画家・久野志乃の油彩画は、一度観ると忘れることができない。独創的な色使いによる、揺らぐように曖昧な情景が、深い記憶として確かに残っている。モチーフになることが多いという「他者の個人的な記憶の話」は、聞いた後の作品へどのように反映されていくのだろう?2014年、北海道の優れたカルチャーを国内外へ紹介するプロジェクト「クリエイティブ北海道」の台北展へ出品し、クロスホテル札幌で開催された凱旋展にも参加したばかりの彼女にインタビューすると、近年の活動や作品について、そして海外の滞在制作中に出会った女性にかけられた言葉など、貴重なお話を訊く事ができた。

shinohisano.jpg

まず初めに、自己紹介をお願いします。

札幌を拠点に絵画を制作しています。絵画では、ある出来事や物語の続きのような風景を表現しています。作品のモチーフとなることが多いのは、他者から聞いた個人的な記憶の話です。個人的な記憶が他者を通して、または長い時間を経て、変化していく様子は、多重の視点から見る風景の様に無数にありえたかもしれない世界を自分に提示してくれます。

shinohisano001.jpg
「The visitor」Shino Hisano, 「真實在他方 Somewhere is there on string」展, Crane Gallery(台湾), 2014年, 50 x 60 cm oval, キャバスに油彩 Photo: チャン・ホイ・ウェン

油彩画では他に見られないような、個性的で美しい色づかいや、揺らぐような風景描写が魅力的ですが、どのように描かれているのでしょうか?

溶き油を多く使い、色の透明感を損なうことなく重ねていく事を行っています。作品のモチーフとなる記憶の変容し続ける様をそのゆらぎで表現できたらと考えています。

shinohisano004.jpg
「Lemon drop」Shino Hisano, 個展「飛ぶ島の話」, ギャラリー門馬(札幌), 2012年, 60 x 50 cm oval, キャバスに油彩 Photo: 山岸せいじ

他者から聞いた個人的な記憶がモチーフとなることが多いとのことですが、聞いた後、その記憶は作品へどのように反映されていくのでしょうか?

お話を聞いている最中に、そのビジョンが自分に拡がってくる時もありますし、時間が経ってから、そうなることもあります。教えて頂いた記憶と自分の中にあるモノが組み合わされて、新しい風景を作っていくような行為だと思っています。

shinohisano003.jpg
「真夜中、音のない光」Shino Hisano, 個展「飛ぶ島の話」, ギャラリー門馬(札幌), 2012年, 65 x 182 cm oval, キャバスに油彩 Photo: 山岸せいじ

作品に描かれた人物に、顔がはっきりと描かれていないのは何故でしょうか?

人物を描く時はその匿名性を意識しています。絵を見てくれる人が、この人物を、名も知らない誰かであり、隣にいる誰かであり、自分であるかもしれない、という感じるような浮遊する自由な存在であってほしいと思っています。

shinohisano002.jpg
「Slip of memory」Shino Hisano, 「クリエイティブ北海道展 in 札幌 2014」, クロスホテル札幌, 2014年, 500 x 600 mm oval, キャバスに油彩

海外での活動について教えてください。これまで様々な国で滞在制作や、作品発表をしてきたそうですね。滞在前後で生じた変化や、学んだ事等、また、印象に残った批評はありますか?

昨年の夏はポーランドでペインターだけのレジデンスに参加しました。滞在制作の時はいつも目に飛び込んでくる見たことのない物事や新しい人との出会いにドキドキしながら、開かれた自分でいられる様に心がけています。印象的だったのは、2008年に滞在先の台湾で出会った女性が、この滞在は、作品のためではなく、あなたの人生のためよ。と、かけてくれた言葉です。制作を続けて行くということを広い視野で考えさせてくれました。

shinohisano005.jpg
左から「きおくちがいのはじまりに」「Under-ice」「Slip of memory」Shino Hisano, 「クリエイティブ北海道展 in 札幌 2014」, クロスホテル札幌, 2014年, キャバスに油彩

アートフェア札幌 2014」では、ギャラリー門馬から出品されました。参加していかがでしたか?また期待などありますか?

ギャラリーで展示する時とはまた違う層の方達に作品を観てもらえる良い機会であると思いました。また、道内外、海外のギャラリーのクオリティの高い作品を観られる事も刺激になります。個人的には山本昌男さんの作品の本物を初めて観られたのが嬉しかったです!アートフェアが札幌に定着して、様々な楽しみ方が為されていくといいなと思います。

shinohisano006.jpg
「声を探す人々」Shino Hisano, 2012年, 「クリエイティブ北海道展 in 札幌 2014」, クロスホテル札幌, 727 x 910 mm, キャバスに油彩

クリエイティブ北海道展 in 札幌 2014」の展示作品について教えてください。

2012年にギャラリー門馬で行った個展の時の作品と、最近描いた新作です。個展では、1人の女性の60年以上前の少女時代の記憶をテーマに作品を作りました。新作は、私用で訪れたアメリカヴァージニア州で見つけた馬の写真を元に描いている絵です。このビジョンを、過去に見たような気がするいう既視感と、未来にも見るかもしれないいう予感が自分の中で面白いレイヤーをつくっていったので現在シリーズで取り組んでいます。

アーティストとしての活動の中で、一番嬉しかったことは何ですか?

描く事に集中し、他の世界が真っ白になる瞬間が本当に時々、訪れた時にとても嬉しく思います。

shinohisano007.jpg
「氷のカーテン」Shino Hisano, 2013年, 「クリエイティブ北海道展 in 札幌 2014」, クロスホテル札幌, 803 x 803 mm, キャバスに油彩

アーティストとしてこれから挑戦したいこと、実現したいこと、伝えたいこと等ありますか?

挑戦したいことは沢山ありすぎるのですが…まずは今持っている複数のテーマをしっかり形にしていくこと。良いビジョンを作っていくことです。

MACHINAKA ART-X_edition vol.14
「クリエイティブ北海道展 in 札幌 2014」

会期:2014年12月1日(月)~2015年2月28日(土)
会場:クロスホテル札幌
住所:札幌市中央区北2西2
出品作家:川上りえ、久野志乃
主催:クロスホテル札幌(企画部 011-272-0051)
キュレーション:大井恵子(ギャラリー門馬)
協力:まちなかアート・プロジェクト
クリエイティブディレクション:大口岳人(クラークギャラリー+SHIFT)
http://www.crosshotel.com/sapporo

Text: Ayumi Yakura

【ボランティア/プロボノ募集】翻訳・編集ライターを募集中です。詳細はメールでお問い合わせください。
コントワー・デ・コトニエ公式通販サイト | 2016 SUMMER SALE
MoMA STORE