横浜トリエンナーレ 2014

HAPPENINGText: Chiaki Ogura

「忘れゆくこと」について考えたことがありますか?

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3年に一度の現代アートの国際展で、今年で5回目となるヨコハマトリエンナーレ2014。79作家の約400点の作品が横浜に集結する。横浜美術館と新港ピアで展開される展覧会の、今回のタイトルは「華氏451の芸術:世界の中心には忘却の海がある」。この長いタイトルは、レイ・ブラッドベリ作のSF小説『華氏451度』に由来している。焚書がテーマになっており、本を読むことも持つことも禁じられた近未来社会が舞台となっている小説だ。

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ヨコハマトリエンナーレ2014の記者会見にて

アーティスティック・ディレクターは、森村泰昌氏。本人自身も美術家として活動している。森村氏が新作旧作ともに合わせてセレクトした作品群は、「素晴らしい”マイ・フェイバリット・シングス”ばかり集めた」と意気込む。展覧会は、ふたつの序章と11の挿話から成り立っている。「忘却」の中には、さまざまな記憶が潜んでいる。取るに足らないものや見たくないもの、失敗や敗北・・・。それら膨大な数の”わすれもの”に、想いを馳せる機会になりそうだ。

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ヨコハマトリエンナーレ2014作品展示風景(横浜美術館会場)

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マイケル・ランディ《アート・ビン》2010/2014

横浜美術館に入ってまず一番目を引くのが、エントランスホールのど真ん中に置かれた、マイケル・ランディの《アート・ビン》。巨大な「芸術のためのゴミ箱」だ。ゴミ箱の中には美術家の失敗作や捨て去りたい過去の作品が捨てられる。一度、そのゴミ箱を世界の中心に置いてみるとどうなるだろうか?大切な忘れものが、きっといつもよりも目に入ってくるに違いない。

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『Moe Nai Ko To Ba』展示風景 2014

『Moe Nai Ko To Ba』は、レイ・ブラッドベリの小説『華氏451度』へのオマージュとして作られた「世界でたった一冊の本」。さまざまな国の言語による8本のテキストが収録され、すべて”忘却”というテーマに関わる内容をもっている。会期中、この本は観客が自由に閲覧できるほか、リーディング・パフォーマンス(朗読)も不定期に開催される。

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Temporary Foundation《法と星座・Turn Coat/Turn Court》展示風景 2014

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Temporary Foundation《法と星座・Turn Coat/Turn Court》展示風景 2014

林剛+中塚裕子が1983年〜1985年に「京都アンデパンダン展」で発表した「Court」シリーズ。法廷・テニスコート・監獄という3つのモデル(模型、範例)と5つの(審議、器)から構成されている。赤い法廷、緑のテニスコート、青い監獄。作品には、鏡が使用され、自分自身を映し出し、融合させることができる。視ること、話すことの位相を変え、「身体・領土・健康・安全」といった、今日的課題への再配置を試みている。

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ヨコハマトリエンナーレ2014展示風景(新港ピア会場)

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やなぎみわ演劇公演「日輪の翼」のための移動舞台車 2014

2つめの新港ピアの会場にも目が離せない。やなぎみわの作品の移動舞台車は、台湾で制作され、今回初公開だ。舞台化された新作演劇『日輪の翼』(原作:中上健次)をこの移動舞台車で巡業する予定となっている。内覧会では、ポールダンスが特別に披露された。来年に開催される京都でのパラソフィア公演も予定されている。

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土田ヒロミ《「ヒロシマ 1945-1979/2005」より》1979、2005(2014プリント)展示風景

土田ヒロミは、独特の視点で日本の文化や風俗をカメラで切り取る写真家だ。本展では、ライフワークともいえる「ヒロシマ」を題材にしたシリーズが展開されている。「原爆の子(長田新)」に被爆体験記を寄せた子どもたちの、その後を追った「ヒロシマ1945ー1979/2005」。被爆に関連する風景を、本人の言葉と過去をまざまざと映し出した写真を目の前にすると、戦争の残した傷跡について考えさせれる。悲劇の記憶の風化に警鐘を鳴らすとともに、これから決して重大な見落としをしないようにと、現代を生きる我々に伝えているかのようだ。

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イライアス・ハンセン ヨコハマトリエンナーレ2014展示風景

森村氏が発した、「”本当にいい美術とは何か”をヨコハマから発信したい」という、確固たる言葉。作品達を巡りながら、その言葉通り強い想いが感じられた。ぜひ、観て触れて感じて、忘却めぐりの旅に出てみてはいかがだろうか。

ヨコハマトリエンナーレ2014
「華氏451の芸術:世界の中心には忘却の海がある」

会期:2014年8月1日(金)〜11月3日(月・祝)
時間:10:00〜18:00(入場は閉場30分前まで)
   (8月9日[土]、9月13日[土]、10月11日[土]、 11月1日[土]は20:00まで開場)
会場:横浜美術館、新港ピア(新港ふ頭展示施設)
http://www.yokohamatriennale.jp

Text: Chiaki Ogura
Photos: Chiaki Ogura

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