アート・アップ!

HAPPENINGText: Valerie Douniaux

7度目の開催となる今年、フランス・リールのコンテンポラリーアートフェアは「リール・アートフェア」というシンプルな名称から「アート・アップ!」へと変貌を遂げた。イベントに変化と活力を与えようというオーガナイザーの意向が明確に示されたかたちである。以前と同じ運営陣が続投するも、今回、セレクションの質の高さを担保すべくコレクター1名と専門家数名により構成される委員会が補助に加わることとなった。

Art Up!
Art Fair View © Maxime Dufour

こうした努力にもかかわらず、アート・アップ!の全体の印象としては、大量に装飾的な絵画や彫刻を売りさばく純商業画廊と才能あるクリエイティヴなアーティストをプロモートする芸術本位なギャラリーの間のある種のアンバランスさがある。出展ギャラリーの多くは、リスクの大きい現代美術を避け、近代美術を紹介している。他方で現代美術分野では、カラフルでわかりやすいストリートアート、ポップアートの高い比率が目立った。あるいは、例えばリールのバックヴィルギャラリーのように、著名な作家(荒木経惟)と若い世代(ブース壁面に生じたびっくりする程の亀裂はオレリアン・メヤールの作品)の両方を広くセレクトしているギャラリーもいくつか見受けられた。幾何学的抽象は再び流行しているようで、フランス北部出身の作家ジュヌヴィエーヴ・クレスをとりあげたブース(ヴァグネルギャルリー、ル・テュケ)や、フランソワ・モルレ、オレリー・ヌムール、ヴェラ・モルナーらの美しい小品(ジャン・グレゼ、ブザンソン)が見られた。アーノルフ・ライナーやハンス・アルトゥング(ボカーズ・モダンアート、ロッカンジェ)といった、ヨーロッパのアートフェアではお決まりのアンフォルメルと表現主義の大家たちも健在だ。

BACQUEVILLE_AURELIEN-MAILLARD_SANS-TITRE.jpg
Galerie Bacqueville / Aurélien Maillard

中国人写真家の作品、反復的な都市のランドスケープや打ち捨てられた土地の写真などで溢れかえっていた前年と比べ、写真作品の存在感は顕著ではなかったが、この分野でも面白いものは見られた。最も目をひいたのはフランス人写真家フィリップ・スーサン(コンヴェルジャンスギャラリー/アントゥイティギャラリー3、パリ)の作品で、作家自身の作品の他にも、シュポール/シュルファス(60年代末フランスの芸術運動)に加わっていたアンドレ・ピエール=アルナルとのコラボレーションも披露している。また、アーティストブックや図版の販売業者の出展により、来場者は手頃で優れた発見が可能になった。そのうちの何件かは暗く狭い傍の方に貧相なブースしか与えられなかったことについて、本当に残念に思う人もいるかもしれない。

nffjapon_nunokawa.jpg
NFFJAPON / Nunokawa

もう一つ残念だったのは、幾つかのギャラリーが同じアーティスト(しかも同じ作品?)を毎年出してきて、セレクションを入れ替えることにあまり力を入れていないように見える点である。このことがフェアに既視感を与え、まだ新興であるリールのアートフェアに新しい息吹を吹き込むと考えられた今回への期待にもかかわらず、失望感を増すのである。アート・アップ!が考えを表明し、あまりにも多い露骨な商業ベースの作品を取り除くことによって、一定の成熟に達する事を願うばかりである。今年出展したヨーロッパのギャラリーの多さが示すように、海外のギャラリーも参加の用意は整っているようだ。ベルギー、オランダやイギリスなどの近隣からだけでなく、スペインやイタリア、ポーランド、ひいては日本(NFF、兵庫)やアメリカ(ウォルトマン・オルテガ、マイアミ)など遠方からの参加もあった。リールのアートフェアは、パリ以外のフランスの都市におけるリーディングアートフェアになったと言われている。リール自体もとても活気のある街で、毎年重要な芸術・文化イベントが多数行われている。例えば、リール3000が組織したトリポステルでのコンテンポラリーアートの展覧会など(今年はギャラリーペロタン25周年展が企画された)がある。言うまでもなくリールは、これらのイベントと同等の、フランス北部のコレクター(主にパリやブリュッセルで購入する傾向が強い)や海外のコレクターたちを惹きつけるフェアを持つに値する都市なのである。

Art Up!
会期:2014年2月13日~16日
会場:Lille Grand Palais, 1 bvd des Cités Unies, 59777 Euralille, Lille
http://www.lilleartfair.com

Text: Valerie Douniaux
Translation: Marie Okamura

【ボランティア/プロボノ募集】翻訳・編集ライターを募集中です。詳細はメールでお問い合わせください。
コントワー・デ・コトニエ公式通販サイト | 2016 SUMMER SALE
MoMA STORE