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札幌美術展「アクア・ライン – 岸辺に沿った美術」

HAPPENINGText: Ayumi Yakura

幌加内町出身の吉成翔子は 現在26歳で14名中、最年少だ。書道家の中野北溟が90歳と最年長であり、年齢幅の広い美術展だといえる。「静かなそよそよ」は、大小様々な鉄の作品が、森に生える植物のように点々と配置されていて、展示されている空間全体が作品となっている。

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「静かなそよそよ」吉成翔子, 2013年 Photo: © 山岸せいじ

鉄が丸みを帯びて曲げられた姿には、可愛らしい印象を受けるが、迎合しているようではない。また、物静かだが、鑑賞者を誘う軽やかな気配を発しているようだ。さり気なくて心地良い、自然体の遊び心を感じた。細くシンプルでも、その一つひとつの造形に、空間に景色を生み出すような独創性を感じる。

館内、第2会場入り口の暗幕の奥は、佐々木秀明による「雫を聴く」の空間だ。天井に吊るされた3つの装置の氷が溶け、静寂の中「ポチャン」という微かな音とともに、ガラス皿に落ちた雫が小さな水たまりを揺らすと、ランプが水たまりを透過して、床に映った光の輪が大きく揺れる。装置が床から遠いほど光の輪郭は淡く、水たまりが広がると輪が重なり合い、平らな床に架空の水深を感じられる。鑑賞者は、優しく揺らぐ光の層の中を歩いていくことができる。

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「雫を聴く」佐々木秀明, 2010-2013年 Photo: © 山岸せいじ

奥の壁には、ガラス板を3段重ねた作品もある。装置から雫が落ちて上段に溜まると、下段へと流れ落ちていき、表面張力で膨らんだ水面に落ちて、壁に映る影が生き物のように揺れた。どれほどの時間、この空間を眺めていただろう。時間の経過とともに様子が変わる作品だ。最初に入って、鑑賞のために五感を澄ませておくのも良いし、他の13名による多彩な作品を堪能した後に入って、穏やかな水の光に包まれながら鑑賞を終えるのも良いだろう。

「札幌美術展」は歴史が古く、元は札幌市民ギャラリーを会場としていたが、2008年に札幌芸術の森美術館に移されて以降、毎年独自のテーマを設けて開催されている。

同館の特長としては、恵まれた自然の中で彫刻を鑑賞できる「野外美術館」(冬期休館中)などが広く知られているが、その他にも、道外や海外で高評価されたアーティストを取り上げるだけではなく、道内アーティストや新カルチャーの価値を自ら見出し、企画力を駆使してコンスタントに発信するスタンスも、注目すべきところだ。

来年は「札幌国際芸術祭2014」の会場としても、異なるジャンルの人々が交わる場となるポテンシャルを感じる。芸術の森へ集った人々がアートを通して何かを感じ、そこで育まれたものが外へ広がっていくことに、今から明るい期待を巡らせている。

札幌美術展 アクア・ライン Art along the shore
会期:2013年11月30日(土)~2014年2月16日(日)
開館時間:9:45~17:00(入館は16:30まで)
休館日:月曜(祝日の場合は翌火曜)、年末年始
観覧料:一般700円、高校・大学生350 円、小・中学生150円
出品作家:蒼野甘夏、国松希根太、佐々木秀明、露口啓二、徳丸晋、中野北溟、端聡、前川アキ、前澤良彰、宮川美樹、八木保次、山田恭代美、山田良、吉成翔子
https://sapporo-art-museum.jp

Text: Ayumi Yakura

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