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ジェームズ・タレル回顧展

HAPPENINGText: Victor Moreno

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James Turrell, Key Lime, 1994, Wedgework: fluorescent and LED light into space with fiber-optic light, Dimensions variable, Los Angeles County Museum of Art, gift of Renvy Graves Pittman, M. 2013.3, © James Turrell, Photo © Florian Holzherr

「キー・ライム」は光と構造を工夫して作りだされた壁の幻覚である。目の前にあるベンチに座り、柔らかな色合いが、いくつかの面が合わさって長方形になった中に溶け込んでいくのを眺めるのもよいだろう。この作品を見つめていると、私たちの普段の認識作用がつい霞んでしまうのが分かるはずだ。

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James Turrell, Breathing Light, 2013, LED light into space, Dimensions variable, Los Angeles County Museum of Art, purchased with funds provided by Kayne Griffin Corcoran and the Kayne Foundation, M. 2013. 1 Pthoto © Florian Holzherr

「セントエルモの吐息」は空間が分割されたつくりになっており、一見すると壁が平面になっているように見えるが、実はよく見てみると壁に空いた底なしのような凹みから光が放たれているのだということが分かる。この作品は、2011年にLEDを使って制作された最新作「ユカルー」に似ている。再度、壁にできた「窓」によって異次元が作り出され、無限、美しい虚空、そして夜明けから日没のような青から深紅色の神秘的な空白感が感じられる。面白いことに、まるで近づくと呑み込まれてしまいそうな恐怖感も同時に沸き起こってくる。

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James Turrell, Twilight Epiphany, 2012, A James Turrell Skyspace, The Suzanne Deal Booth Centennial Pavilion, Rice University, Houston, TX © James Turrell, Photo © Florian Holzherr

その他の作品やインスタレーションの中で最も強烈な印象を与えるのは、タレルがアーティストであるロバート・アーウィンとエド・ウォルツ博士と共同で1969年にLACMAでアート&テクノロジープログラムの一環として仕上げた「知覚の小部屋」、その名も「ライト・レインフォール」だろう。階段を上がり、ブレード・ランナーのように寝台に横になって独居房のような小部屋へ入っていく。この部屋には20分ごとに一人しか入ることができないようになっている(そのために、数週間前に予約しておく必要がある)。この小部屋から寝台に横たわった「侵入者」が出てきたら、柔らかな青い後光が部屋の中から漏れ出るのが分かるだろう。それはあたかも雲の上で幸せな気分に浸っているようであり、まるで天国にいるような気持ちにさせられる。

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