ロン・ミュエック展

HAPPENINGText: Valérie Douniaux

カルティエ現代美術財団に、ロン・ミュエックが戻ってきた。

既に大きな成功を収めているこの展覧会は、オーストラリア生まれのロン・ミュエックが、パリにあるカルティエ現代美術財団で開催する2度目の展示会。前回も、2005年に同じ場所で盛大に開催された。

会場には、最近制作された彫刻6作品に加えてこの展覧会のために作られた3作品が展示されている。ゴーティエ・デブロンが撮影した45分の映像では、ロン・ミュエックのロンドン中心部のスタジオでの作品制作過程を窺い知ることができる。

ロン・ミュエックは初めクリエイティブディレクター及び人形制作の仕事をオーストラリアの児童番組および映画向けに行っていた。その後、ロンドンに自ら会社を立ち上げ、写真のようにリアルな小道具やアニマトロニクスを中心に創作活動を続けた。このことがきっかけでシリコンや繊維ガラスを用いた写実的な彫像を創作しだしたが、彼が生み出す彫像は細部まで忠実に再現されており、今にも動き出しそうなほどである。一見すると、思わず本物の人間と間違えそうになるが、大きさだけは実物よりもかなり異なっている。ロン・ミュエックが作り出す作品は、いつも実物より小さい、あるいは大きく、作品に対峙した時に感じる不思議さをより際立たせている。

Ron Mueck Exhibition
Couple under an umbrella, Ron Mueck, 2013 © Thomas Salva / Lumento for the Fondation Cartier pour l’art contemporain

まず最初に見える作品では、水着姿の巨大な中年のカップルが、パラソルの下でベンチ代わりに地面に座り、男性の方は女性の膝に頭をもたれ掛けている。彼らの疲弊した顔と体からはこれまで過ごしてきた人生が決して安泰だったわけではないことが読み取れるが、お互いに視線を交わしているわけではないのに、男性が女性の腕をしっかりと掴み、女性は男性の方を冷淡かつ見守るような表情で見つめるところから、2人の間にはまだ親密さが残っていることが感じられる。

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Woman with Sticks, Ron Mueck, 2009, Mixed media, © Ron Mueck, Photo Courtesy Hauser & Wirth, London

次の部屋では、夢心地な感じがより一層増し、巨大な息絶えた鶏、枝の束を抱きかかえる小さな裸体の女性、あるいは赤ん坊を抱いた小さな女性といった作品が並べられている。3つ目の作品は、赤ん坊をコートにくるんで抱きかかえながら食料品が詰まった袋を抱える母親という、テーマとしては最も普遍的なものである。だが年齢以上に老けて見える母親の冷めた表情、赤ん坊との意思疎通の欠如、そして赤ん坊の表情、これら全てが人生における義務の重さからくる疎外感につきものの不安な感情を呼び起こしている。

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Mask II, Ron Mueck, 2001, Mixed media, Anthony d’Offay, London © Ron Mueck, Photo courtesy of Anthony d’Offay, London

展覧会は地下へと続き、階段を下り終るまさにその先に、はっと息を呑むような眠る男性の巨大な頭部が置かれている。作者そのものを思い出させるその顔は、顔面の構造をつぶさに見せることで、現実世界の幻想を打ち砕いている。まるで特大の仮面のようであり、裏側は大きな空白になっている。ミュエックの作品は実は非常に軽く、内側は空洞で木の構造で支えられており、それらはゴーティエ・デブロンが撮影した映像で確認することができる。

地下には過去に展示された作品(謎めいた裸の男性が、大きな木製ボートに座りながらどこかを見つめる作品)に混じって新たに制作された作品が並んでおり、これは若さ特有の敏感さが感じられる若い一組のカップルの像だが、後ろから見ると何故男の子が女の子の前腕をしっかり掴んでいるのだろうかと考えずにはいられない作品となっている。

ある部屋はまるでその部屋自体が一つの作品のようであり、作者自身が照明を調整して、完璧な環境を作り出している。海辺を思い出させる青みがかった光の下では、水泳用パンツを着用した実物よりも小さな男性が、プラスチックでできたマットレスにもたれて両腕を広げている。くつろいでいるように見えるが、同時に十字架に貼り付けにされたイエス・キリストを想像させる。さらに、その男性は壁の上部に配置されているために観客は首を伸ばして見なければならず、その姿はまるで彼が黒いサングラス越しに皮肉を込めて観客を見下ろしているようである。

これら全ての作品たちは、圧倒的な写実性をもって私たちそして私たちが生きる社会をつぶさに表現している。大きさは全く違うし、それぞれが持つ態度にも驚かされるが、それが作品を神秘と夢の世界に境を接しさせ、それぞれの作品の人生、そして作品が考えていることに思いを馳せることとなる。観客は作品の前に立つと無関心ではいられなくなるが、それこそがこの展覧会を忘れがたい特別な思い出としてくれるのだろう。

ロン・ミュエック展
会期:2013年4月16日〜9月29日
時間:11:00〜21:00(火曜22:00まで、月曜定休)
会場:Fondation Cartier pour l’art contemporain
住所:261 Boulevard Raspail, 75014 Paris
TEL:+33 (0)1 4218 5650
http://www.fondation.cartier.com

Text: Valérie Douniaux
Translation: Yuki Mine

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