プリマベーラ・サウンド2013

HAPPENINGText: Julio Cesar Palacio from Panopttic

一週間前の天気予報では、終日雨という予報だったのでプリマベーラのような野外フェスにとっては、今回は最悪の事態となるであろう、と覚悟していた。しかし、実際は天気予報は外れ、晴れ模様!寒波の影響で寒さは応えたが、僕にとって過去最高のプリマベーラとなったのだ!
昨年は、以前と同様だが経済的危機による影響が色濃くでており、バンドのラインナップがあまりにもメインストリームに偏ったり、インディ・レーベルと雑誌の力もかなり加担していたようだった。ただ、今年は違う。ヒップホップやアフリカン・サウンド、メタル、実験音楽等にインディーバンドが混ざったバラエティに富んだ顔ぶれが見られるのだ。

PRIMAVERA SOUND 2013

僕らは木曜日から参加し、念の為レインコートをはりきって着用し、ハイネケン・ステージでのテーム・インパラからスタートを切ることに。まだ明るさが残る20:30のスタートだったので、彼らのサイケデリック・ロックを楽しむにはもっと遅い時間が似合っていたかもしれない。

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ここ数年何度か出演し、まだまだ観客を集めるダイナソーJr.。J・マスシスは変わらずキャッチーなティーンエイジャー・ロックを届けてくれる。お決まりのラインナップで大盛り上がりの50分のステージを堪能できた。

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レイバン・ステージではニュー・アルバム「モノマニア」を引っ提げてディアハンターが登場。なんだか昔の主婦のような衣装を着たブラッドフォード・コックスらが「ディザイア・ラインズ」や「アゴラフォビア」を演奏。土曜日には、バンド・オブ・ホーセズの代役も努め、なんと二度ステージに立つことになった。

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サンディエゴから来たバンク・ロック・バンド、ホットスネイクスを見にATPステージへ。「プレンティ・フォー・オール」、「ラックス」、「ブレイントラスト」などの素晴らしい楽曲で激しく、恐ろしいステージを見せ付けた。

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その後もATPステージでデス・グリップスを見る。このショーが今回一番楽しめたかもしれない。ドラマー不在には気付かなかった程、彼らの演奏はパワフルで凄まじく、圧倒的な雰囲気をかもし出す彼らは木曜日の大きなハイライトだった。

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さて、金曜日は心に残る一日となった。まずはロックデラックス・オーディトリの屋内でムラトゥ・アスタトゥケの”エチオ・ジャズ”をゆったり座って堪能。ビブラフォンや、コンガドラムの音色を響かせる素晴らしいバンドに支えられた、感動的なステージだった。ラストは観客全てスタンディング・オベーションで彼らを見送った程だ。

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ムラトゥの素晴らしいステージ同様、ダニエル・ジョンストンのステージを見るのはとても特別な機会だった。ジョークを交えながら、往年のヒットを歌い上げる彼。ギター、ベース、ドラムのシンプルなバンドの音が心に染みる。アカペラで歌い上げた「スピーディー・モーターサイクル」なども特に印象に残っている。

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屋内ステージでかけられた魔法をひきづりながら、プリマベーラ・ステージへと移動。ブリーダーズが「ラスト・スプラッシュ」や「キャノンボール」で観客を大いに盛り上げる。もっと観たかったのだが、4曲で切り上げてを次を観るためにまた移動。ビヨンセの妹、ソランジュだ。ミュージック・ビデオでしか見たことがなかったのだが、混雑のはるか遠くに見える彼女はとても美しかった。しかし残念な事に音響が遠くまで届かず、あまり長くは居なかった。

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Jジム・ジャームッシュとジョゼフ・ヴァン・ヴィセム× Sqürlのコラボレーションも見に行ったが、暗い繰り返しのフレーズと低くうなる音が面白く、素晴らしいサプライズだった。

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同じ時間にレイバン・ステージでは、サハラ砂漠からやってきたトゥアレグ・ティナリウェンがロックとフォーク・サウンドとブルースをミックスしたような音を奏でていた。たくさんの観客が見に来ていたことに驚いたが、(ジーザス&メリーチェインがちょうど同じ時間にかぶっていたのだ)観客のリアクションもとても良かった。エキゾチックなギター・サウンド、サイケデリックな魅力に溢れたサハラのソウルを感じる、最高のステージだった。

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お次は、プリマベーラ・ステージを30分前には既に満員にしていたジェイムス・ブレイク。今年は、真夜中に大きなステージでの演奏だ。デリケートかつ、エレガントなエレクトロニック・ミュージックを放つ英国出身のシンガー・ソングライター、やはり彼の存在は特別だ。二年前に初めてプリマベーラに出演したときにも、小さなステージで大きく観客の心を掴んだが、今回の巨大なステージでの彼は、たくさんの観客に囲まれ、3人の才能豊かなミュージシャンとのステージに我々は圧倒された。「CMYK」「リミット・トゥー・ユア・ラブ」などを歌い、「オーバーグロウン」、「レトログレイド」ではまるでアンセムを歌うかのような盛り上がりを見せた。「母親を連れてこれるかも」、僕はこのコンサートを見て、そう思ってしまった。

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プリマベーラのようなフェスで面白いのは、このようにとても繊細なコンサートを観た後に、ダークで生々しいニューロシスのようなポスト・メタルバンドを観れることだ。ドームメタルのステージのセットも、完璧だった。寒い夜に、ヘッドバンギングでいい汗をかかせてくれた。

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デモかと思うような人々の大群がいるかと思いきや、そう、今年のプリマベーラには彼らが来ているのだ。言わずと知れたUKポップバンド、ブラー。今年の観客の大多数はイギリスから来ていることは知っていたが、デーモン・アルバーン率いる彼らは僕らの期待を裏切る事なく、「ガールズ&ボーイズ」等のビッグヒットの連発、そして「ザ・ユニバーサル」で締めくくられ、ファンも大満足だったことだろう。

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ブラーの後は、ハイネケン・ステージからバイス・ステージまでの長い道程を移動し、NY・ブルックリン発の素晴らしいエクスペリメンタル・バンド、ガーディアン・エイリアンのパフォーマンスを見る。彼らは、まるで違う惑星から来たかのような(だからこのようなバンド名を付けたのに違いない)、圧倒的なパフォーマンスを1時間ノンストップで見せ付けた。グレッグ・フォックスが力強く叩き続けるドラム、神が君臨したかのようなアレックスの響き渡るヴォーカル、神秘的で官能的な音色は放ち、圧倒的なカリスマ性を我々に見せ付けた。2人いるギタリストのうちの一人、ベルンが信じられないようなリフでメタリック・サウンドを奏で、僕達は天国から火星へと連れさられてしまった。まさしく、最高のパフォーマンス。観客はかなりの体力を消耗したようだった。さて、そろそろ帰るにはいい頃かな!

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金曜日は大忙しで、朝食を食べたのも午後4時のことだった。今日の締めくくりに、オーケストラ・ポリリズモ・コトノーを観れるというゴールにたどり着いた。今年の出演者の中でも、大きなハイライトの一つであろう彼ら。時間通りにステージにも到着し、準備完了。コンガラインのようなリズムで僕らを踊らせ、アフロビートに酔いしれる素晴らしい、完璧なショーだった。正直この二日間で少し疲れがでてくるのは避けられてないので、こういったステージは最後の日を楽しむためにも、素晴らしい栄養補給になるのである。

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レイバン・ステージから最後の日は始まった。80年代に活躍したネオクラシカル・ダーク・ウェーブバンド、デッド・カン・ダンスのパフォーマンスがあるのだ。13歳の頃に彼らがとても好きで、軽やかな、神秘的なライブだったことを覚えている。ラストの日の21時に求められているサウンドではないのかもしれないが、彼らのサウンドはとにかく非の打ち所がなく美しい。しかし、屋内ステージでのパフォーマンスの方が向いていただろう、とは思った。

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そして、このフェスティバルで最も待ちわびていた瞬間がやってきた。クラッシック・オールド・スクール、唯一無二のNYの伝説、ウータン・クランだ。レザ率いるクルー、ジザやゴーストフェイス・キラがクラシカルな選曲で会場を最高潮の盛り上がりへと導く。そして、もちろんODBへの敬意も払った個性的で力強いステージだった。

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ライアーズを観にピッチフォーク・ステージへと移動。ニュー・アルバム「WIXIW」からの以前に増したダンサブルで親しみやすいサウンドには驚かされ、とてもハッピーな時間を過ごせた。

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ハイネケン・ステージでニック”・ケイヴを観ようと集まっている人のごった返しを避け、ATPステージへお目当てのスティーヴン・ステイプルトン(ナース・ウィス・ウーンド)へと急ぐ。フェスの中でも一際アヴァンギャルドかつ実験的なショーだったのだが、残念な事に多くの機材トラブルに見舞われたり、そこで地元のミュージシャンをステージに上げギターを演奏してもらったり・・となかなか手こずった様子だった。心残りではあるが、エクスペリメンタル・ミュージックとは、まさにこういうことなのだ。予期せぬことが起きる音楽を追求してゆくことなのだろう。

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ナース・ウィス・ウーンドの後に、フェスティバルの最後のハイライトが訪れた。シリアのミュージシャン、オマール・スレイマンの音に酔いしれて朝の3時まで踊り狂い、そのキャッチーなサウンドに身を任せた。ダブケの先駆者であり、レバノンやパレスチナ、ヨルダンの結婚式で流れるような、ノリのいい個性的なサウンド。無駄のない、アラビアスタイルのシンセサイザのメロディーとキーボードで僕らの体を動かす本物のMCだ。スレイマンのキャリアは長く、彼のディスコグラフィーを見ると500以上の作品を世に送り出しているが、そのエキゾチックな音が人々に愛され、たとえ歌詞の意味はわからなくとも、自然と踊り続ける事ができるのは、彼が常に新鮮さを失わずに音楽を続けているからだろう。本当に素晴らしいステージだった。

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過去5年間の中でも、最高の内容だったプリマベーラ2013が終わってしまった。カルト・バンドと共に、新しい様々な原石のようなバンドが混在し、ローカル・バンドやワールド・ミュージックも堪能できる素晴らしいフェスだった。天気予報の外れには心から感謝!全体を通して寒さが厳しい日が続いたが、体を熱くさせるホットな音楽に溢れたプリマベーラだった。

Primavera Sound 2013
会場:Parc del Fòrum, Poble Espanyol, Barcelona
会期:2013年5月22日〜26日
http://www.primaverasound.com

Text: Julio Cesar Palacio from Panopttic
Translation: Junko Araki
Photos: Julio Cesar Palacio from Panopttic

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