ジャズ展

HAPPENINGText: Eri Yamauchi

2013年6月29日より、サッポロ・シティ・ジャズが開催される。 すっかり札幌の夏の風物詩として定着したこのシティジャズを楽しみにされている方も多くいるだろう。

SHIFTのキュレーションで、まちなかアートの一環として開催されているクロスホテル札幌の展覧会は今回で8回目を迎える。 今回のテーマは「ジャズ」。シティ・ジャズのライブ会場にもなるクロスホテル札幌では、北海道出身の気鋭のアーティスト5人に「ジャズ」というテーマのもと、ジャズのイメージを作品化し、2013年へのシティジャズへ華を添えてもらった。

まちなかアートは、街中にアートが溢れ、気軽に楽しめる環境づくりを目指すプロジェクト。ギャラリー、作家、店舗が一体となり、アートのある日常をつくるというもの。札幌から展開している。

エントランスの1階からフロントのある2階へ上がると最初に目に入るのが赤いピアノと脇に飾られた2枚の絵画だ。

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「J」「Z」野沢桐子, 2013年, H530 × W455 mm, アクリル、油彩、キャンバス

「J」「Z」というタイトルのこの2つの絵画、人物はモノトーンで背景はカラーという配色が印象的だ。連続する緑の円は、ステージの光だろうか。横からステージを観ているようなアングルで、リアルな人物と、単純化された背景はまるで記憶の中にある映像のようだ。観る者の記憶の中にある、好きなミュージシャンの姿やライブで味わった興奮や熱狂、そういうものを思い出させてくれるような作品だ。そしてその記憶はこれから始まるシティジャズへの期待につながるのかもしれない。

作者の野沢桐子は、ロックミュージシャンや文豪を多く描き、その特徴は「リアリズムを追求した肖像画に情緒を吹き込む」ことだ。今回の作品も、写実と単純化を巧く使い分けることで、事実(=実在の人物)とそれにまつわる記憶や感情などを融合させ、味わいのある作品に仕上がっている。

次に目が行くのは、フロントの右奥にあるポップな絵画。

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「EMPEROR」山本稔, 2013年. H910 x W1,167mm. マーキングペン、キャンバス

黒を基調とし、太さが均一の白い線のみで描かれるこの作品は一度見ると忘れられないインパクトがある。線の太さを均一にし、また黒い背景に白い線を引くことで、モチーフが持つ造形や動きの面白さを引き出している。今回の作品で言えば、ミュージシャンがトランペットを吹くことで現れる頬のふくらみや力の入った口先、複雑な楽器を操る指などが強調されている。一見シンプルだが、よく見ると面白さが増してくる作品だ。

作者は旭川出身の山本稔。今回の展示で見られるのは本作「EMPEROR」だけだが、同作家による他の作品も基調は黒・線は白という同様の手法で描かれており、一目で山本の作品と分かるようなものばかりだ。

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