キム・ヨンジュ

PEOPLEText: Satsuki Miyanishi

アメリカを拠点に活躍するキム・ヨンジュは美しさが生まれる現象を探求するアーティストだ。彼女がデザインをするユニークな身につけられるアートは人を惹き付けてやまない様だ。私達は彼女の経験、そして作品の背景についてインタビューを行う事ができた。

Yong Joo Kim

まずはじめに自己紹介と最近の活動について教えて下さい。

名前はキム・ヨンジュです。私は韓国のソウルで生まれ育ちました。2007年にアメリカに引っ越し、2009年にロード・アイランド・スクール・オブ・デザイン(RISD)をジュエリー&金属細工の美術学修士で卒業しました。それからアーティストとして、そしてアメリカのロードアイランド州プロビデンスに拠点を置く「サブライム・エクスペリメント」の共同設立者/取締役として活動しています。サブライム・エクスペリメントでは「内なる美しさ」の「外への表現」で身につけられるアート作品が、どのように信頼、美しさ、共感、そして価値というコンセプトについて対話を引き出せるかと言う事を探ります。この様な対話がギャラリーや美術館などではよく行われている事は知っていますが、このプロジェクトでは、身につけられるアートが、日常の中でこの様な対話を思いがけなく円滑にしてくれるのではないかということを探りたいと考えています。私は社会的状況の中にあるアート作品は私達に質問をさせたり、自分達が理解する世界を再度考えさせたり、日常に隠れた美しさを見つけたりする力を与えると考えます。自分と他人に対する強い信頼から湧き上がる美しさですね。

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学生の頃からクリエイティブな作品づくりを始められたのですか?あなたのアーティストとしてのモチベーションは何ですか?

はい。大学の時に作品をつくり始めました。そして大学院でもです。しかし学生の時は自分をアーティストとは呼びませんでした。自分がアーティストの道を歩き、自分をアーティストと呼ぶ事に自身を持てる様になってきたのは、ここ3年くらいです。作品を制作する事によって得る責任感があると私は感じ、私にとってはこれが自分をアーティストと呼ぶ事にしっくりとくる事ができた理由ですね。つくる事によって理解する事ができたのは、この過程によって前は知らなかった、そして存在する事すら知らなかった、予期もしない新しい事を学ぶという事ですね。この学びが何度も起こる事で、次は何を学ぶか知りたくなり、これは人生自身の燃料になっています。これだけではないのです。そんな学びの経験から生まれた作品を披露した時、それは見た人にも興味心と驚きを持たせる事も学びました。この経験から自分の作品が建設的な影響を社会に与えるポテンシャルがある事がわかり、これらの気付きからアーティストとしての責任感や道義の感覚を身につけ、自分をアーティストと呼ぶのに落ち着く様になったのです。

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作品のインスピレーションはどこから得ますか?

私のインスピレーションは日々の生活から来ます。日常からと言うのはよくある他人とのやりとりやその振り返りから影響を受けます。

私はよく歩いている時、周りを観察します。地面に山積みになった葉っぱだったり、棚に積まれたり並べられた金属製品だったり。それらは自分の作品の新しい配列の方法に影響を与えます。そして作品をつくる事によって素材自身がまた私に影響を与える要素になります。ここでは私はその素材を観察というよりその素材と対話をします。例えばその素材の物質の特徴を理解しようとしたりです。新しい形というのはしばしば、単に物質の特徴を理解しようとしている時に現れます。私は更に振り返り、そして記憶の重要性も述べたいです。自分の人生で経験した全ての事が作品をつくると言う過程の中で自動的に誘発される様に感じます。それらは潜在意識下で私の手を導き私が下す判断を下します。私はこれがどの様に起こっているのかに興味がそそられます。ある人はこれを直感と呼んだり、好み、能力、または美的偏見と呼びます。実際に何かはわかりません。

確かなのは、これらは内面的なインスピレーションであり、感謝をしているという事です。そして同じくらい興味深いのはそんな潜在意識下の決断から生まれる作品と立ち会う事ができる事、そしてその作品を振り返る事がまた自分に影響を与えてくれます。私はたびたび制作の技術上の観点では無く、形状の想像力の面で「どうやってつくったのかしら」と思う自分に出会います。

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作品では何の素材を使いますか?高価な素材から新しい素材にどの様にして変わったのですか?

私が主に使う素材はべルクロ®の面ファスナー(マジックテープ)です。面ファスナーを使い始めた事と高価な素材から新しい素材に変えた事は、私のソウルとプロビデンスでの経験、両方を話す必要があります。私は韓国のソウルで生まれ育ちました。一千万人もの人口がある街、目に映るのは人だけです。忙しい人達です。人間観察をするのが私の習慣になりました。どんな洋服、鞄、アクセサリー、そして靴を人々は身につけているのか。そして2007年に大学院の為にプロビデンスに来た時、物事は変わったのです。通りは空っぽで人と出くわすのが難しいくらいでした。街は小さく、私が見慣れている物とは違いました。人はゆっくりと歩いていました。私もゆっくりと歩き始めました。ゆっくりと歩き始める事により人以外の自分の周りにある物に気がつき始めました。以前は興味が無かった物に興味を持ち始めました。自分の周りの環境に敏感になる事により、自分の作品に選ぶ素材も変わってきました。ソウルにいた時は物事を早く行う事に重要性を感じていました。それにより、元々美しいと思える素材を選んでいました。しかしプロビデンスに来てから、自分が見つけた素材をより理解する為に、新しい環境に時間をかけて冒険をする様になったのです。自分の周りの環境を冒険すると言う新しく発見した自分の好奇心により、以前使っていた石や高価な金属などの素材から離れ、釘や豆やストロー、そしてべルクロ®の面ファスナーなど日常的で高価では無い素材で実験をし始めました。それが、再構成する事で見つける事のできるそれぞれの隠れた美しさを発見する事に繋がったのです。2009年の卒業後は限られた設備と道具しかありませんでした。限られたリソースにより、私は素手で形の作れる物のみを使う様になりました。べルクロ®の面ファスナーが今まで選んできた素材の中で今でも使っている素材です。面ファスナーはつけ外しが簡単で、積み重なる事と並ぶ事に長けています。切ったり、丸めたり、曲げたり、縫ったりする事もべルクロ®は素手で行う事ができます。フックの光る様な特性にも惹かれました。2009年以降、私は主な手段としてこの素材に着目して来ました。

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あなたの作品はアートでしょうか?ファッションでしょうか?

私は自分の作品をファッションよりもアートとして見ています。私が情熱を持っているのはアート作品を作る過程です。私達に質問をさせ、自分達が理解する世界を再度考えさせたり、日常に隠れた美しさを明らかにする様な作品です。アートの分野の中でもウェアブル・アート、つまり身につけられるアート、そして結果として人と共に動くものですね。この様なものはギャラリーや美術館に行かなくても人と交流できるというメリットがあります。ウェアブル・アートであるという特性は私の作品に特有の責任感と特権を与えてくれます。

あなたにとって内なる美しさとは何ですか?

どれだけ物が平凡であったり、通常の物に見えたとしても、それらが優れている、特別だ、美しい、と信じ諦める事なく作業を行えば、自分でも知らなかったその物の特性を発見する事に驚くと思います。その物が持っている特徴を拡大したり、強調する事により現れる美しさを何度も目撃しています。つまり、美しさは隠れた特性を発見し、みせる事で生まれ、気がついた欠点を隠す事ではないと思います。それが内なる美しさだと思います。

韓国とアメリカのアートの現状に違いはあると思いますか?

韓国にアーティストとして住んだ事がないので、韓国とアメリカのアートの現状の違いをお伝えできる程の情報と経験が私にはありません。

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あなたに影響を与えた、あなたの好きなアーティストを教えて下さい。

私の好きなアーティストの1人はピエール・オーギュスト・ルノワールです。中学校の頃から彼の光の輝きの表現の仕方に惹き付けられていました。「輝き」と言っても、感じる鮮やかさやリズム、そして温かさです。私が実際の生活で体験している様に、彼は葉っぱ越しに観察する光の体験を捉えるのです。

お休みの日のはどのように過ごしていますか?

韓国のソウルの家に帰って家族や友達と過ごす様にしています。

予定されているプロジェクトはありますか?次にチャレンジしたい事は何ですか?

私の作品の大きさはだんだんと大きくなっています。もうすぐ本格的な衣装の大きさにまでなるかも知れません。その様になったら、美術館やギャラリー、街路ではなくランウェイなど異なった環境に自分の作品を置くのはどの様な感じかを見るのは興味深いです。人々が私の作品を体験する新しい方法ですからね。そうなった時、アートとファッションの関係について更に考えることはとても面白いと思います。

Yong Joo Kim
キム・ヨンジュはニッチ・アワード受賞者でありサブライム・エクスペリメントの共同設立者/取締役。つくる事の意識/潜在意識を調べ美しさがどの様にして生まれるかを探究している。フィラデルフィア美術館のアドリアナ・ファレリ・プライズ、ファイバーアート優秀賞受賞。彼女の作品はミュージアム・オブ・アーツ・アンド・デザイン(MAD)の常設展にも選ばれ、その他にもニューヨーク、ボストン、シカゴ、マイアミ、フィラデルフィア、シアトル、パリ、プラハ、シドニー、フェレンツェ、ソウルなど各国の美術館やギャラリーなどで展示される。

Text: Satsuki Miyanishi
Translation: Meiko Maruyama

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