NIKE 公式オンラインストア

戸塚憲太郎

PEOPLEText: Yu Miyakoshi

会場のイメージはどんな感じですか?

華山1914クリエイティブパークという場所で開催します。元酒造工場にイベントスペースやレストラン、バー、ギャラリーなどが入り現在はクリエイティブなスペースになっているのですが、そこを借りて、ブースを立てて展示をします。基本的には日本の商材や作品が中心ですが、現地の学生と一緒に現地の廃材で什器をつくったり、台北市街地でイベントを行ったりと、色々な形で交流イベントをします。また、「ART TAIPEI」との交流もあり、「ART TAIPEI」のVIPプログラムで紹介していただいたり、会場同士をバスで結んだりして連携をはかっています。お互いに客層が異なるので、相互にメリットがあると思います。

アジアと共同していく必要性は感じていらっしゃいますか?

日本は島国ですし、開いてくのが難しいと思います。でも、そんなことは言っていられないですし、台湾の人たちとハイレベルなクリエイティブの水準をつくりだせたら、それを東アジアに広げていきたいと思っています。それは日本のためでもあります。貧富の差が少ない日本では、ラグジュアリーブランドでもない、かといって安っぽくもない、特殊なファッションの市場が育ちました。そういった市場が東アジアでも育つ可能性があるので、ファッションとアートを一緒に持っていくのです。世界でも、日本ほどお洒落な国はありません。ただそれは、消費者としてのレベルが高いだけで、結局は発信元は今だに欧米にあり、日本から発信はしていません。今後を考えたら、欧米の次に東アジアが来て、その時にイニシアチブをとるのが日本であるべきです。このままでは、アジアの他の国にイニシアチブを譲り、日本はまたレベルの高い消費者になってしまう。日本から発信をしていき、価値を付けていかなければ、この先は無いと思います。だから「NEW CITY ART FAIR Taipei」は、日本と台湾のライフスタイルを合わせて底上げしていこうというイベントであり、ひいては日本のためのイベントなんです。話が大きくなってしまいましたが(笑)。
ただ、東アジアで展開していこうという時に、欧米的な資本主義をベースとした考え方をすれば、次は北京や上海に行くべきですが、僕は最近、そっちではないところに価値があるのではないか、と思い始めているので、今後の展開はやってみなければわかりません。

欧米的な資本主義に違和感を?

最近気づいたことがありまして、欧米型のアート市場と、日本にあるべきアート市場のかたちというのは、もしかしたら全然違うのものなんじゃないか、という風に思いはじめました。どういうことか言いますと、今までは欧米のように、ホワイトキューブなギャラリーをつくり、ギャラリーがアーティストをリプレゼントし、大きなアートフェアやオークションを開催し、コレクターを呼ぶという、海外で見て来たような市場を目指すものだと思っていました。でも、そういった欧米型のシステムは、欧米のライフスタイルや住環境や歴史といった、様々な背景から生まれてきたものですよね。何故日本がそれをやらなければならないのか?ニューヨークのチェルシーなんかを歩くとギャラリーに5mぐらいの写真が飾られていて、それが数千万で売れてしまう。凄いと思うけど、虫の色や葉に落ちる水滴を「美しい」と愛でているような国民が、それを見てピンときますか?という話なんです。欧米で育まれてきたものをそのまま引き継いでも、元々自分たちのものじゃないじゃないか、では日本はどうだったのか、と考えたら、日本には昔から、王様が擁護して絵を描かせたような欧米型のアーティストなんて居ませんでした。居たのは、職人や工芸の作家で、職人たちが競う中で凄いものを残した。そういった日本の「美」が、戦後から完全に分断されてしまったのです。それで、自分たちは一体何なのか、今まで目指してきたものは違うんじゃないか、というのが最近思っていることです。そんな感じで、色々なことに気付きつつ、目指すところが変わりつつやっていますが「NEW CITY ART FAIR」では、日本人の価値感を向こうに持っていき、それを好きになってくれる人がいたら、好きになってもらえばいい。それが自分たちにとっての市場だと思っています。

色々な可能性が広がっていきますね。

新しい市場をつくるためにはどうしたらいいのか、何をしたらいいのかというのが、今僕が手掛けている全ての活動です。そして、「アートを買いたい」という人たちが出てきた時に、買いに来る場所はギャラリーであって欲しいから、「hpgrp GALLERY TOKYO」は最初につくったけれど、最終目的地です。今ギャラリーを自分で運営している若い人たちも、10年後、20年後に市場が充実していればいいと思っているはずです。僕はたまたま企業でやっているので、業界全体、最終的には日本という国のためなればいいと思っています。とにかく、市場をつくらないと何もはじまらないと思います。それで今お話ししたような一連の活動をしています。今後はもっと日本独自の価値観、日本独自のアートというものを探していきたいです。こういった考え方に賛同してくれる人は業界の垣根なく、広く探していきたいですね。

NEW CITY ART FAIR TAIPEI 2012
会期:2012年11月8日(木)〜11日(日)
会場:華山1914創意文化園区(台湾台北市中正区八徳路)
フェアディレクター:戸塚憲太郎(hpgrp GALLERY TOKYO)
主催:アッシュ・ペー・フランス株式会社
https://www.newcityartfair.com

Text: Yu Miyakoshi

【ボランティア募集】翻訳・編集ライターを募集中です。詳細はメールでお問い合わせください。
MoMA STORE