クリスチャン・ボルタンスキー「ミグランテス」展

HAPPENINGText: Mami Goda

20世紀前半に建てられたオテル・デ・イミグランテスは、当時ブエノスアイレスに到着したばかりの移民たちを5日間だけ受け入れる場所だった。ブエノスアイレスのラプラタ川沿い、現在は移民局の裏に置き去りにされたように、しかし独特の存在感を持って佇んでいる。

クリスチャン・ボルタンスキー「ミグランテス」展

当時、何千もの移民が、そこで文書登録され、寝泊りし、メディカルチェックを受け、仕事探しに明け暮れた。建物を半分に割るように横断する長い廊下は、各種手続きに追われる多くの移民たちの列で埋め尽くされていた。

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その建物の3階で現在、クリスチャン・ボルタンスキーのインスタレーション「Migrantes」 (移住) が公開されている。ブエノスアイレスのトレス・デ・フェブレロ大学により全4ヶ所で開催されている「プロジェクト・ボルタンスキー」の中のメインスポットだ。

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この移民滞在館のために構想されたインスタレーション。ほぼ廃墟化したこの場所で、ボルタンスキーは床に放られたままのほこりまみれの文書に出会う。移民達のアイデンティティーが記された紙の死体。新しい土地で新たな人生を始めようと夢を持って訪れた移民達の未来と、離別を強いられた彼らの過去が共存するこの場所で、アートによって移民の亡霊を蘇らせた。

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終わりのない廊下は、高い天井から吊るされた電球のわずかな光のみ。暗がりには霧が立ち込めている。その中を約500人の移民たちの声を聞きながら歩く。名前、年齢、職業、到着日など母国語で語る声。夢と寂しさを共有し合った何千万もの移民たちの亡霊の声。

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暗がりに吊るされた古着のコート。蛍光灯で点され、ビニールシートで覆われた金属製ベッドが並ぶ部屋、背には上着が掛けられた木製の椅子が無造作に並ぶ部屋。移民の個の記憶と全体の記憶が、インスタレーションの各エレメントに喚起される。

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他3ヶ所でも「プロジェクト・ボルタンスキー」の違うインスタレーションが公開されている。ボルヘスが館長を勤めた旧国立図書館では「フライングブック」と題した500冊の本が飛ぶインスタレーションが、テクノポリスでは個人の心臓音を収集するプロジェクトが、トレス・デ・フェブレロ大学ではボルタンスキーの数作品が展示されている。全会場12月16日まで開催。

Christian Boltanski’s Migrantes Exhibition
会期:2012年10月12日〜12月16日
時間:11:00〜20:00(土曜日15:30〜20:00、月曜日休館)
会場:MUSEO de INMIGRANTES
住所:Av. Antártida Argentina 1355
TEL:+54 11 4317 0285
http://boltanskibsas.com.ar

Text: Mami Goda
Photos: Mami Goda

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