ジン・ニュ

PEOPLEText: Hiromi Nomoto

淡い色の彫刻、彼女らはいつも何かを考えているようだ。この作品の作者もこんな表情で物思いにふけるのだろうか。

ジン・ニュ(金钕)

活気ある中国アート界では、若くして有名になるアーティストがいる。ジン・ニュ(金钕)もその1人。ジン・ニュは1984年生まれのアーティストだ。2007年に北京市にある中央美術学院を卒業した。

init_595.jpeg
「Grow Up」Jin Nu, 2006. 210x75x220cm, 樹脂着色

半人半馬の作品についてお聞かせ下さい。


大学の卒業制作でつくったのが人馬少女『Grow Up』です。構想を練り始めたころは、人馬ではなくユニコーンがつくりたかったのです。

ユニコーンはとても興味深いキャラクターです。耽美の象徴で、個性的で、そして物事に対してとても疑い深い性格です。ユニコーンと馬とで、頭の角以外で最も大きく異なる部分とは、権力や強さを象徴するライオンのようなシッポを持っているところです。ユニコーンは草食動物ですが、肉食動物の内面を持っています。そこに私は興味を持っています。

当時私は少女から女性になるまでの過渡期について調べていました。成長への過程で、心の中にぼんやりとした考えがあります。立ち尽くしている孤独な少女は前に進もうか、それとも後ろに下がろうか、迷っています。女性のイメージと少女のイメージ、それからユニコーンのイメージを繋げました。正確には “ユニコーン少女” と言えるでしょう。

init_603-1.jpeg
「夜」Jin Nu, 2008, 71x16x46cm, 樹脂着色

2008年の作品「夜」は、2009年に今日美術館で行われた「“Enliven–現実と虚実の間” アニマミックス・ビエンナーレ」を見て以来、私にとって忘れられない作品となりました。

私は人馬の形をした作品を多く制作して来ました。それぞれの作品全ては、自分の感情と関係があります。この作品では、女性の背中に男性がもたれかかっています。この男性は女性によりかかり、彼女の肩を噛んで、お腹に手を抑えています。つまり “依存” です。女性は男性を背負い、雪の中を走っています。

これは当時の私の感情と関わっています。当時の私は過度に、男性と女性の関係について、男性はとても強いのですが、多くの場面で女性に頼っており、女性は男性に多くを注がなければならないと考えていました。

%E6%81%8B%E4%BA%BA%20Lovers%2050%C3%9718%C3%9785cm%20%E6%A0%91%E8%84%82%20Resin%202011.jpg
「恋人」Jin Nu, 2011. 50x18x85cm, 樹脂

「恋人」シリーズは、少女ではなく大人の人馬の作品です。これらの作品についてお聞きします。

私も徐々に成長していき、男性と女性の関係は、決して誰が誰に属しているというような簡単なものではないと分かりました。

女性はもともと母性を持っています。自分でどうすることもできない、母親の気持ちです。愛する人に対しても同じです。これは女性の持つ母性から出ていると思います。ですから、そのとき私は新しい内容のイメージをつくろうと思ったのです。

人馬の腹部にいるのは子供ですか?

宿しているのは、私の子供というわけではなく、私の愛する人です。実際には私は、私たちの生活において本当に愛する人との関係を暗示しています。

私たちが母体の中にいたとき、へその緒で母親と結びついていました。生まれてから、子供は両親の注意を引き、彼らに無償の愛を与えさせます。ある日子供は成長し、両親との関係は遠くなっていきます。女性に限らず異性への感情とは、母親に取って代わり、結びつきたいと思っているからです。私たち人類はいつも、親子の愛情や男女の愛情に限らず、別の人との間の関係を必要としています。

%E9%87%91%E9%92%95%20Jin%20N%C3%BC%20%E5%BC%B1%E6%B0%B4%20Ruo%20Shui%2080%C3%9745%C3%9760cm%20%E6%A0%91%E8%84%82%20Resin%202011.jpg
「弱水」Jin Nu, 2011. 80x45x60cm, 樹脂

この繊細な色使いは、他のアーティストたちの作品と全く違った印象強く与えています。これはどのようにしてつくられたのですか?

私は、深刻で重過ぎるものや他の人と同じようなものをつくりたくありません。これを作品の質感で突破したいと思い、ピンク色を選びました。実際には女性の本能なのでしょう。この穏やかで優しい質感とデザインで、私の求める効果が得られると考えました。その後、実験に実験を重ね、始めた頃の数十点は失敗し、それらを全て廃棄しました。最終的に、安定し、丈夫で、私の求めるものに近い質感を見つけました。

制作する際に、最も重要としているものは何ですか?

最も重視しているのは私の気持ちです。女性はやはり敏感で直感的です。ですから男性アーティストのように、あまりに大きなテーマを選択しません。私の生活環境や経験、より自我を主張するように、全て私自身から発しています。やはり自分の生活と密接です。自己の生活と自我を作品の中に込めています。

%E5%86%B7%E5%85%893%20Luminescence%203%2022cm%20%C3%97%2022cm%20%C3%97%2027cm%20%E6%A0%91%E8%84%82%E7%9D%80%E8%89%B2%20Resin%20Stains%202009%20.jpg
「冷光3」Jin Nu, 2009. 27x22x22cm, 樹脂着色

小さいころに書画を習っていたそうですが。あなたの作品に中国の影響はありますか?

やはり関係があると思います。確実に深い影響を受けています。しかし、現在の制作には特別に深い影響は感じられないかもしれません。西洋式の彫刻技術に影響を受けています。しかし、私は気質があると思います。例えばピンク色の彫刻には、柔らかさ、それから玉のような風格があります。これは、中国の伝統的な彫刻ではなく、中国の伝統文化の影響です。それは国に関わらず、日本や韓国を含めた東洋のアーティストは往々にして細やかな質感を選びます。これが東洋の文化なのでしょう。

あなたはとても人気のある若手アーティストです。中国では若いアーティストが多く存在します。そして彼らの作品はとても人気があります。他の場所ではあまりないことだと思います。あなたはこれをどのように考えていますか?

私は幸運だと思います。今中国はさまざまな環境や経済での発展で、ちょうど社会変革のような時代にあり、社会は大きな影響を受けています。私たちはこの地点にでてきたばかりです。他の国では、変革期が10年以上前に完成していたのでしょう。ですから、中国のアーティストは外国の若手アーティストより大きな注目をされるのです。

私は実際のところ、若手はみんな同じだと思っています。作品について言えば、何も違いはありません。私たちは経済的な環境の影響を受けているだけです。それで関心を得ているだけです。

%E5%86%B7%E5%85%891%20Luminescence%201%2028cm%20%C3%97%2020cm%20%C3%97%2057cm%20%E6%A0%91%E8%84%82%E7%9D%80%E8%89%B2%20Resin%20Stains%202009%20.jpg
「冷光1」Jin Nu, 2009. 28x20x57cm, 樹脂着色

あなたの作品とあなた自身は、まるで一緒に成長しているようですね。これから先はどうなっていくのでしょうか?

これからの作品がどうかは、自分でもどのような変化があるのかは上手く言えませんが、試し続けます。

たとえば “孤独” のような、人びとに共通する体験は、みんなが持っています。私だけではありません。孤独な少女のように、おそらく全ての人が生まれてから死ぬまで、孤独な1人です。これらの気持ちは共通しています。私がつくるのは、自分と関係のあることだけでなく、人びとに共通する作品です。

Text: Hiromi Nomoto
Photos: Star Gallery

【ボランティア/プロボノ募集】翻訳・編集ライターを募集中です。詳細はメールでお問い合わせください。
コントワー・デ・コトニエ公式通販サイト | 2016 SUMMER SALE
MoMA STORE