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トラフ建築設計事務所

PEOPLEText: Noriko Yamakoshi

作品に必要な機能性とお二人らしい意匠性とのバランスはどのようにとられたりするのでしょうか?また常に立ち戻る尺度というかルールのようなものがあったら教えて下さい。

自分たちは建築家なので、まずは条件を整理する事が一番最初にすることですね。クライアントからの要望もその条件のひとつですが、建築であればそれ以上に敷地が持ってる条件の方が強かったりしますから、それらを読み取っていく作業がまず一番大きいですね。その後、問題点や、矛盾点、関係性などが出てくるようになってようやくその案件の本質的な「問い」のようなものが見えてくる。そしてやっとそこからデザインを始めていく事が可能になります。

それによって「これをこういう風に解決するから、こういう形にしよう」という説得力をもった提案をしていけますし、基本のその「条件」をきちんとクリアしていればクライアント的にも納得して貰えると思うのです。その上で自分達が見たいな、とか欲しいなと思うかどうかというフィルターを通していくと、そんなに自分達の主張がなくてもおのずとそれが後からにじみ出てくるし、多分それぐらいが丁度良いなと思いますね。

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GREGORY TOKYO STORE, 2008 Photo: DAICI ANO

自分たちがどうしても創りたい形やデザインだけが先行することはあまりありません。なので単純に「綺麗な椅子を作ってください」と言われてしまうと逆に困ってしまう場合もあるのですが、そんな時は製作工場に行ってみたりする「紐解く」プロセスのなかで、例えば「テラスだけで使える椅子」というテーマで建築でいう敷地みたいなものを想定してみます。このように特定の場所でしか使えないという条件を与えてみると絞れてきたりするので、例え自由に製作できる環境であっても敢えてそこに条件というか縛りを与えて考えていますね。

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回転体, 2004 Photo: Nobuaki Nakagawa

建築はクライアントのお金を使って形にする仕事ですし、またクライアントもいくら自身の敷地だからとはいえ、その街や風景に対する影響というものを全く無視する事はできないので、そういった正統性や必然性を踏まえて提案します。また建築は何十年も残るものですので、使い勝手を作り手から押し付けるスタイルではなく、なるべく余白を残したいというか、使う人が自分なりの楽しみを見つけ出せるような「完成品にならない」という事を常に念頭に作るよう心がけてます。

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空気の器, 2010 Photo: Fuminari Yoshitsugu

それは建築以外の作品にも反映していて、例えば空間を意識してつくった「空気の器」にしても、もうでき上がった状態で「こういう形ですからこれを見て下さい」というプロダクトでは無くて、自分で広げて好きな高さや大きさを形作る体験をしてもらうことがこのプロダクトのとても大事な要素のひとつなっています。

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