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天使の話・失くしものの歌

HAPPENINGText: Yu Miyakoshi

かくして当日、プログラムは伊保石仮設の集会場で開かれたワークショップから始まった。時間になり40代~70代ぐらいの女性たちが賑やかに集まってくる。中央に並んだ毛糸の山を見て、ますますお喋りが加速する参加者の方に、松本由伎子さんと力さんが指編みで帽子を作る説明を始める。由伎子さんは「わからないから、一人づつね」と言って丁寧に見て回る。すでにハッピーキャップ・プロジェクトで帽子を作って被災地に送るという活動をしていた由伎子さん、説明は慣れたものだ。

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レクチャーを行う帽子作家の松本由伎子さん

本多さんと小林さんは録音機を手に、一人一人にインタビューをしていく。この時に集めた声は今後、このワークショップをテーマにした作品に生かされていく予定だ。被災地の集会場に集まる方たちは、集まって話をすることでどんどん元気になっていくという。石巻でも、主婦の方が自発的に集まり、アクセサリーを作る活動をしているという話を聞いた。その活動の主な目的は、生活の糧というよりも、外に出て何かしていたい、集まって話をする場が欲しい、ということだった。今回のワークショップでも、参加者の方々が元気で賑やかだったことが印象的だった。ワークショップは、ハッピーキャップ・プロジェクトからプレゼントされた手編みの帽子が配られて幕を閉じた。

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この後はライブ会場であるビルド・フルーガスへ。震災のあった当時は、塩竈の港からほど近いこの場所にも津波が押し寄せ、浸水とヘドロの被害を受けたという。水道や電気が復旧し、やっとスペースがきれいになったのは3月末。だが、当初は被災地に届ける文房具の置場として使用していたため、ギャラリー・スペースがスタートができたのは7月からだった。当時のこと、現在の活動について高田さんに訪ねると、次のように答えてくれた。

『以前から宮城在住の作家さんたちとワークショップをするという活動などはしていたんですけど、ビルド・フルーガスは北米のアートを紹介するということを中心にやっていたので、どちらかと言うと外を見ていたんです。そこに震災があり、復興活動が加わりました。仮設住宅の方にワークショップを届けるという活動は、以前はやっていなかったことなので、新たな出会いや繋がりを生かしていける、やれること、やりたいことが広がったという実感は湧きましたね。私は人の力を信じているので、どんなジャンルの方々とでも共感できる場を作りたいと思っているんです。アート=作品ではなく、アート=それを生み出す発想力や機動力でもあるんですよ。なので私はここにいて、皆でこの現実と向き合っていきたいと思いますし、アートを媒体に生きる人々が周りにいて下さっているので、今は人のこと、街のこと、世界のことを考えながら、それを強みに希望を持って活動していきたいなと思っています』

震災以降、アートに何ができるのか、という疑問があちこちで投げかけられていたが、高田さんのしてきたことや塩釜フォトフェスティバル2011などのアート活動がどれだけ人を励ましてきたかと思うと、感慨深かった。

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スティーブ・ベイカー
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