TOKYO FRONTLINE

HAPPENINGText: Yuko Miyakoshi

新しいアートフェア、新しいアートプラットフォーム 

TOKYO FRONTLINE

廃校からアートセンターに姿を変えた「3331 Arts Chiyoda」で、今年初開催となるインターナショナル・アートフェアが開かれた。2011年2月16日、オープニングには1000人もの人が訪れた。主軸となるアーティストは若手が中心。大御所アーティストが名を連ねているわけでもないのに、何がそんなに人々を惹き付けたのだろう?

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フェアは3つのセクションから成る。ファーストセクションは38人のアーティストによるショーケース「FRONTLINE」。今フェアのオーガナイザーである後藤繁雄氏と美術手帖が、今後要注目のアーティストをセレクトしており、鈴木ヒラク、高木こずえ、うつゆみこなど、新進気鋭のアーティストが揃う。

セカンドセクションは様々なジャンルから集められた団体によるプレゼンテーションブース「EXCHANGE」。+81 Gallery+Lab、G/P +JAXA+IDÉE、TOKYO CULTUART by BEAMS、TSUTAYA DAIKAN-YAMA PROJECTなど、国内外の新しいカルチャーを牽引する団体の名前が並ぶ。

サードセクションはなんと体育館を展示会場にしてしまった「GYM」。g³/、ミサシンギャラリー、エモン・フォトギャラリーなど20のギャラリーの展示が見られる。
また、今年度からスタートするアワードもフェアの熱を上げている。審査には篠山紀信、ホンマタカシ、南條史生などが参加しており、アーティストの発掘と支援を目的としている。

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それでは、写真と共に会場の様子をお伝えしていこう。入り口のウッドデッキの階段を上がると、エントランスロビーにはカフェや南風食堂と秋田清酒のブースがあり、活気に溢れている。さらに奥へ進むとホワイトボックスが開け、そこが以前、公立中学校だったということはすっかり忘れてしまう。3331 Arts Chiyodaの風通しのいい空気は、アーティストを育てゆく現代アートギャラリーの願いとマッチしている。

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アムステルダム発のフォトマガジンを紹介していたのはフォーム。赤い風船、赤いクッションを配し、背の高いコミュニケーターの男性の姿がひときわ目をひく。ご存知の方も多いと思うが、フォームはアムステルダムで写真美術館も運営している団体で、雑誌自体の内容もエッジが効いている。

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紙を使用した作品で人を集めていたのは台湾の劉文瑄。ガラス張りの箱の中に集積した紙が美しい。この紙にはロランバルトの「明るい部屋」が、点字に変換されタイプされている。さらにオルゴールのハンドルを回すと、点字が音となり聞こえてくる。感覚や記憶、愛着、思考などといったものを静かにばらし、また紡ぐような不思議な作品だった。

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山縣良和というファッションデザイナーがいる。名門セント・マーチンズを首席で卒業し、ジョンガリアーノのアシスタントを経て、東京コレクションのトリを飾るなどの経歴がありながらも、7mのブラジャーを制作したり(A LONG STORY, 2004)、保育園でファッションショーを行ったりという、明らかにファッションの枠には収まらない活動を行っている。その山縣良和が立ち上げたレーベル「writtenafterwards」の初作品を見ることができる。全面をレースで形造られた「レース地球儀」は、量産されるファッションプロダクトでは決して見られないもの。地球儀を展開しそのまま額に入れたような作品「世界地図レース」は、繊細な編み目から壮大な夢を垣間見せてくれる。

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このほか、東京芸大大学院に在学中でありながら注目を集め始めている小室貴裕、メディアアートにシュールな可愛さがあったTeng-Yuan Chang(張 騰遠)などなど、紹介したいアーティストは尽きない。

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ちょっと早足で2階へ移ろう。体育館であったスペースは赤い絨毯がひかれ、展示会場に姿を変えている。入り口で鮮やかに迎えてくれたのは、スノーコンテンポラリーの飯沼英樹。一見プラスティックの様な印象を与えるが、木彫りの彫刻だ。今回はヨーロッパで活動してきた作家の日本初公開。確かな造形力は流行りの服に身を包んだ女性の通俗性を十分に救い、リアルな今の女性像を切り取ることに成功している。

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圧倒的な存在感を見せていたのはヒョンギョン(g³/)の「Super blue」。プリミティブでもあり、清新でもある強い光を放つ。ヒョンギョンは原始的な力を内在する共鳴体であり、現代においては希有なその精神で「今」を吸収し、タブローに爆発させている。

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このほか、中央に配された東恩納裕一の照明作品、エモン・フォトギャラリーの横波修、丸の内ギャラリーのジャン・クロード・ウーターズなど、GYMセクションも1階の展示に負けないほど刺激的だった。

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また、今フェアでは、美術家の名和晃平や哲学者の千葉雅也など、様々なゲストが登場するイベントも毎日開催されていた。私が訪れた日には、後藤繁雄、コミュニケーション・ディレクターの森本千絵、脚本家の倉本美津留のディスカッションがあり、幸運にも拝聴させて頂くことができた。

上記三氏がそれぞれに気になる作品、欲しい作品について語り、美術館で絵を鑑賞するのとは少し違う、『買う気になって見る』というアートフェアの楽しみ方について触れた。現代アートには、今まさに同時代に生まれてくるものの価値がある。コレクターでなくとも、もしこの作品を手に入れたら、プレゼントにしたら、などと考えるのは楽しい。倉本氏の「買うこともひっくるめて現代アートやねんな」という言葉はとても腑に落ちた。さらにその後、蜷川実花の飛び入り参加もあり、ディスカッションは盛況のうちに幕を閉じた。

TOKYO FRONTLINE元年は、日本の現代アート界における、まさにHAPPENINGのようなお祭りだった。2011年の会期は終わってしまったが、ファーストセクションで紹介されていた38人の情報はiPad対応のアプリケーションで見ることができる。

また、近々、音と映像のコンペティション「SOUND & VISION AWARD」を開催する予定があるという。坂本龍一プロデュースのレーベル「commmons」とタッグを組み、次世代のアーティストを発掘していく。そう言った意味では今年のTOKYO FRONTLINEはまだ終わっていない。一年後の開催を待たずとも、様々な動きを見せてくれそうだ。

TOKYO FRONTLINE
会期:2011年2月17日〜2月20日
会場:3331 Arts Chiyoda
住所:東京都千代田区外神田6-11-14
http://www.tokyofrontline.jp

Text: Yuko Miyakoshi
Photos: Yuko Miyakoshi

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