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グザヴィエ・ヴェイヤン展「FREE FALL」

HAPPENINGText: Memi Mizukami

これまで幾度となくファッションの世界にアートの分野を持ち込んできたルイ・ヴィトンが、新たな展開としてパリのメゾン・ルイヴィトンにあるアートスペース「エスパス ルイ・ヴィトン」の世界で二番目となる施設を、2011年1月15日、東京の表参道に「エスパス ルイ・ヴィトン 東京」として設立。エスパス ルイ・ヴィトン 東京が行う初めての展示として、フランス人作家のグザヴィエ・ヴェイヤンが選ばれた。

グザヴィエ・ヴェイヤン
© Keibun Miyamoto

2009年にはヴェルサイユ宮殿で展示を行ったヴェイヤン氏は、「Urban Reality」として都市との関係性を作品に用い制作している。都市に対しての自分自身というものを、作品を見ることで感じられる作風を持ったグザヴィエ・ヴェイヤン氏を、この東京を代表する文化的なランドマークとして存在しているルイ・ヴィトン東京が選んだことは必然だったように感じる。


© Sebastian Mayer

まず会場に入り圧倒的な存在感を見せつけられるのが、「Regulator」と名付けられたインスタレーション作品。光の沢山入り込むこの会場に美しい影を落としながら佇んでいるこの作品は、天井に届きそうな程の高さがあり、作品の骨組みとなっている白い鉄骨は、会場自体の骨組みと似た素材で作られており、まるで会場と一つの建築作品のようにすら見える。骨組みの下には11の木材でできた関節のある足があり、その一つ一つの先には漆黒の多面体がぶら下がっている。そしてスタッフの手によりスイッチが入るとその不思議な形体をしたそのモノが、ゆっくりとその頭上にある扇風機が放つ風を受けて回り出す。それは機械的な音を伴いながら、遠心力を生み、関節を目一杯に伸ばしながら回る。ヴェイヤン氏はこの作品に対し、「頭で解ってはいるけれど目にすることのない動き」を実体化する試みであると言った。子供の頃に体験した遊び、無論その当時はその遊びが遠心力であることなど解るはずもなく、子供が遊びの中で見つける永遠的な遊びを、レオナルド・ダ・ヴィンチの設計図を彷彿とさせる骨組みで実体化させた。


© Sebastian Mayer

「Tokyo Statue」と名付けられた彫刻は、ガラスで覆われた会場から表参道を見渡すように設置されている。ヴェイヤンン氏が言う、都市との繋がりの意識はこの作品から多く感ぜられる。作品そのものから何かを得るのだけでなく、作品の一部となっているベンチ部分に腰掛け街を観ながら、自分がなぜここに、なにを思い、どうするか?と自分に置き換え、この街との繋がりを考えてみることがこの作品の楽しみ方なのではないだろうか。


© Sebastian Mayer

遠心力や圧力、意識と無意識。ヴェイヤン氏の作品は人間として生きる中で、無意識でいれば疑問にすら思わない当たり前のことを、意識し、詰め寄ることで即座に魅了されるモチーフとして向き合っている。ヴェイヤン氏は東京の街を、静かに感じると言った。情報や文字の溢れるカオティックな雰囲気も、日本語の解らない彼にとっては一つの静止画に写り、静かに感じる。そして古くから日本で美とされているミニマルデザインも彼の作品作りの重要なファクターであるそうだ。数学的で緻密に計算されたヴェイヤン氏の作品はアートであると同時に非常に建築的でもあり、無駄を省き洗練されたデザイン性。そこには確かに日本の美とも通ずるものを感じることができる。この美しい空間と非常に良く合った彼の作品を是非ご覧になって頂きたい。一つ一つの作品から非常に多くのことを考えることのできる良い時間を手に入れるはずだ。

グザヴィエ・ヴェイヤン展「FREE FALL」
会期:2011年1月15日~5月8日
時間:12:00〜20:00(入場無料)
会場:エスパス ルイ・ヴィトン 東京
住所:東京都渋谷区神宮前5-7-5 ルイ・ヴィトン表参道ビル7階
TEL:03-5766-1088
https://www.louisvuitton.com

Text: Memi Mizukami
Photos: Sebastian Mayer Courtesy of the Espace Louis Vuitton Tokyo

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