高橋喜代史

PEOPLEText: Mariko Takei

個展タイトルにある「ハイブリッドアート」というのは何を意味するのですか?

それは僕が勝手につくったタイトルです。昔、パンクラスという格闘技団体があって、そこにいた船木誠勝というレスラーが、ハイブリッドレスラーといわれていて。ハイブリッドってどういうことか知りたくて本を読んだら、レスラーは基本的に肉体を鍛えるものだけど、それだけではなくて、精神と肉体の両輪で鍛えていくと。それが掛け合わさったものがハイブリッドレスラーで強いんじゃないかって言ってたんです。そのハイブリッドという言葉もかっこよかったし、雑種とか掛け合わせ、肉体と精神の両輪という考えもかっこいいなと思っていたので、まず”ハイブリッドアート”というのは、船木の“ハイブリッドレスラー”のパクリなんですよね。

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「batman」

筆シリーズでいうと、書道と漫画やアニメとジャクソン・ポロックなどのアクションペインティングが合わさっていて、そういういくつもの要素が噛み合わさったものから、新しいものが生まれるのではないかと思ってます。擬音シリーズは、言葉と音と漫画とドナルド・ジャッドなどのミニマルアートが掛け合わさったもので一つの作品になっています。

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個展 「ハイブリッドアートⅢ そして伝説へ…」/ 2010 / CAI02(札幌)写真:小牧寿里

他に今回の展覧会では「ド」という文字をテーマにした小作品の新作も展示してますね。

「ド」の作品でいえば、「ドーン」もそうですし、ニュージーランドで滞在制作して、生徒たちと一緒に作った作品が「ドドドドドドドド」でした。ようやく最近分かってきたのが、「ド迫力」とか「どアップ」とか「ド根性」とか、「デカイ」より「ドデカイ」とか、超とかスーパーというのを「ド」ひとつで表現しているなと。何かを越えたものというのが、現代美術そのものだと僕は思っているので、「ド」という領域は、「何かを越えて行く」という僕の到達願望領域そのものなんです。

影響を受けたアーティストはいますか?

めちゃめちゃ沢山いますけど、一番好きなアーティストは、顔真卿(ガンシンケイ)という中国の書家です。1200年以上前の書道家で、ツートップの内の一人です。もう一人は、バッハみたいな存在の王羲之(おうぎし)。顔真卿の方は、ヘタウマみたいな感じなので、最初なんで顔真卿の作品がいいのかわからなくて、30才くらいの頃に東京在住時に行ってた書道教室の先生にその良さを聞いてみたんです。そうしたら、顔真卿の「裴将軍詩」という作品を見せられて、何を書いてあるかわからないけど、涙が止まらなくて、自分でもビックリでした。その自由さは本当にスゴイです。

海外で活動をしてきてますが、擬音シリーズなどは海外ではどんな反応ですか?

例えば日本人から見るとアルファベットの擬音シリーズの作品だとあまりすんなり入ってこなくて、カタカナのほうがすんなり入ってくる。その逆で、それは海外でもいっしょだと思うんですよね。なので、『これどういう意味なの?』って聞かれることが、ひとつのコミュニケーションの手段にはなるんですけど、英語力が追いついてないので、説明しきれないんですよね。そんな中で今回の擬音シリーズには新しい方向を展開したので、ちょっと光が見えてきたというところですね。

今後やってみたいことはありますか?

めちゃくちゃありますね。アイディアはしこたまあるんですけどね。あと、札幌だけでなく、北海道外、海外含め、いろんなところで活動していきたいですね。
これまでの「筆シリーズ」「擬音シリーズ」に新たなシリーズも考えていて「日本シリーズ」というインスタレーション作品を熟考中です。

高橋喜代史個展 「ハイブリッドアートⅢ そして伝説へ…」
会期:2010年8月20日(金)〜9月4日(土)
時間:13:00〜23:00
休館:日曜・祝日
会場:CAI02
住所:札幌市中央区大通西5丁目昭和ビル地下2階
TEL :011-802-6438
主催:CAI現代芸術研究所
https://www.cai-net.jp

Text: Mariko Takei

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