高橋喜代史

PEOPLEText: Mariko Takei

IMG_1595-468.jpg
個展 「ハイブリッドアートⅢ そして伝説へ…」/ ビームサーベルエンジン パフォーマンス風景 / 2010 / CAI02(札幌)写真:小牧寿里

今回のCAI02での個展ではどのような作品を発表するのですか?

僕はエンジンを使った筆をつくりたくてつくりたくて、ようやく念願かなって「筆シリーズ」からエンジンを搭載した作品「ビームサーベルエンジン」をつくりました。この筆は二刀流型です。文字も書けるには書けるのですが、ここで描くのはイメージに近いものですね。インクには墨を使ってます。この筆と墨にこだわっているというのは、書道からきてると思うんです。例えば、ジャクソン・ポロックとかのアクションペインティングでは筆を重要視してないですが、中国の書法における硯と墨と紙と筆というのは、文具四宝とよばれ一個一個が美術工芸品として尊重され、そのこだわりや、道具に対する愛着っていうのは、アジア人特有なんじゃないかなと、たぶんそこから系譜を受けついで、大切にしたいなと思っています。

IMG_1608-468.jpg
個展 「ハイブリッドアートⅢ そして伝説へ…」/ 「ギューン」展示風景 / 2010 / CAI02(札幌)写真:小牧寿里

今までは擬音語の文字をそのまま立体化してきた擬音シリーズは、今回の個展で発表している「ギューン」で新しい方向性を感じさせるものとなってますね。

「ギューン」は鉄でできていている作品なんですが、レールがあって、その内側に車輪が入っており、車輪の上に板が載っている状態で、手前でギアを回すとスプリングが伸びて、ある一定のところまでくると、その伸びきった状態のところでバーンと弾けて板がレールを駆け上がるという作品です。板がギューンと直角を駆け登っていく勢い、そのギューン感というのは、誰にでも伝わるのではないかと思って、言葉だけじゃなくて、動きや形だけを抽出して作品をつくりたいなというアイディアのもとでき上がった作品です。

03_s4-433x650.jpg
「fujiyama」(2007)

この「ギューン」のアイディアが生まれたのは、3年くらい前なんです。「ドーン」の後、北海道立美術館で開催したグループ展「Born in HOKKAIDO」(2007)に出品したときに、デッカイ富士山をつくって展示した頃です。ある日家で本を読んでいたら「ギュン」っていう文字が、ギュンって上がるイメージを思いつきました。それでやっぱり擬音なんだなと。その時からずっと考えていて、個展2ヶ月くらい前に、そのアイディアが黒い板がレールを駆け上がるというイメージに更新されて、擬音シリーズの作品なんですけど、言葉を削ぎ落とした結果、ギュンという勢いだけが抽出されてた。僕の作品の「勢いの視覚化」というコンセプトの核心により近づけた。それが「ギューン」なんです。

続きを読む ...

【ボランティア募集】翻訳・編集ライターを募集中です。詳細はメールでお問い合わせください。
MoMA STORE