シュ・ユ個展「残飯」から「茶シミ」まで

HAPPENINGText: Ralph Yuu

長く遠い旅は、昨晩の夢と、遥か彼方に聞こえる笑い声であふれている
ここで出会うために私たちはいくつの道を渡っただろうか、そしてまたこれから渡るのだろうか?
もはやあなたは、情熱をもって夢を追いかけていた今までのあなたではない
そして私ももはや、いつもの笑顔の私ではない
これは、時とともに流れゆく水の物語
それは人を変える
始まりがそうであるように、汚れなき源泉は、思い出の中でいつまでも感傷をそそるものだ

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アーティスト、シュ・ユは、2年間かけて「茶シミ」(Tea Stains)と名付けられた一連の作品を完成させた。その作品の全貌が2010年4月3日、北京の798芸術区のロング・マーチ・スペースにて初めて明らかになった。作品をみた途端、私の頭の中には、セピア色に染まった無邪気だった時代の思い出が、形のない渦となって、いやおうなく流れ込んできた。そして80年代に流行った前述の台湾民謡が、完全に私の頭の中にある思い出を捕らえたのだ。ノスタルジアと懐古の念を想起させるシュ・ユの作品は、時間に取り残された痕跡をたどり、それを取り戻そうとする点で、冒頭の台湾民謡と似ている。

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一般の人々が最後にシュ・ユの作品を観たのは3年前だ。2007年夏、「残飯」(Food Remains)と名付けられた一連の作品が展示され、その前代未聞の特質が、思いがけず、この物議を醸すアーティストを世間の前に呼び戻した。

彼のペインティングは平穏、静寂でありながら、荒涼とした白いプレートの上に描かれた“残りカス”が多くを語り、観る者の想像力をかき立てる。そこには、状態を瞑想的に反映した、卓越的なセンスと何とも言えない深さが宿っている。それはただの食べカスではあるが、驚くほど豊かな視覚体験を提供してくれる。またバラバラな色の断片も、ある種の神秘的な辛辣さを心に呼び起こす。

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