NIKE 公式オンラインストア

シュ・ユ個展「残飯」から「茶シミ」まで

HAPPENINGText: Ralph Yuu

明らかにシュ・ユは精神的なものと、絵画における静寂の表現様式を結びつけようとしている。その表現様式は例の歌のなかで識者が用いたもので、元朝では現実を忠実に模倣する、西洋絵画の写実技法と共に使われた。個人的に、私はこのような2つの芸術的な視点の衝突は、平穏で静かな叙事詩をつくりだし、長く心に残っていくと思う。

「残飯」に比べて、「茶シミ」ではグレーのトーンが用いられ「残飯」でみられたような色の鮮やかさや複雑さはないが、実際、時間や記憶の影をよりうまく伝えている。中国のコンテンポラリーアートでは、アーティストのスタイルの特徴や作品の背後にあるコンセプトは、視覚芸術の専門用語で定義されることがしょっちゅうだ。シュ・ユの芸術的選択は、彼の作品が記憶と表現の残像を示唆する一連のヒントを含んでいることを意味している。「残飯」から「茶シミ」までの一連の作品は、色彩でシンプルさを追求し、それを強調するだけでなく、食物を用いて、人間の経験や歴史を表現している。

%E8%8C%B6%E6%B8%8DNo.2.jpg

現代生活の騒がしい騒音はしばしば悩ましいものだが、しかしそれと同時に私たちの歩んできた道を振り返るきっかけとなり、私たちが本当に望む生活のペースを明らかにする。自らの経験、アイディア、空想、現実、これらはアートの感情的な経験から得られるものと関わっており、これらを通して私たちは自分のバランスを見つけ出している。グレーのトーンにまとめられたシュ・ユの「茶シミ」は実は私たちの人生の鏡なのかもしれない。お茶を飲んだ後に明らかに残るまだらのシミは、人生のレイヤーがゆっくりと動かされ、私たちが残された日々に近づいていくにつれ、ねじれて認識できなくなったシミと共に取り残されるだけなのでは、という恐れを反映している。

しかし一方、存在の内的状態と、最も深くて暗い、魂の安寧所を、これほどまでに美しく与えくれるのは、これらのシミに違いない。無数の思いがけない出来事や不完全な事柄、戦いの傷跡は、成長のプロセスや、人生の不変の浮き沈み、下降とそこからの回復、上昇というプロセスに取り残されている。

時とともに
流れゆく水の物語

「茶シミ」は、驚くほどこの物語を忠実に表現した、静かな鑑賞者なのだ。

クレジット:本文中で使用した歌詞は歌謡曲「Guang Ying De Gu Shi」より。作詞作曲:ルオ・ダーヨウ、歌い手:シルビア・チャン。

Zhu Yu Solo Exhibition – What on Earth Is That?
会期:2010年4月3日(土)〜5月16日(日)
会場:Long March Space
住所:798 Art Zone, No. 4 Jiu Xian Qiao Road, Chao Yang Zone, Beijing
TEL:+86 10 5978 9768
https://www.longmarchspace.com

Text: Ralph Yuu
Translation: Saori Hashiguchi
Photos: Courtesy of Long March Art Space

【ボランティア募集】翻訳・編集ライターを募集中です。詳細はメールでお問い合わせください。
MoMA STORE