第53回 ヴェネツィア・ビエンナーレ

HAPPENINGText: Daniel Kalt

もうひとつの問題は、機械を用いた作品の中に長く使われすぎて動かなくなってしまったものが出てくるということである(ヴェネツィアは湿度が高いということも忘れてはいけない)。例えばラトビア館のチェーンソーを用いた作品。もし動いていたらどのようなものだっただろうと、非常に興味を惹かれた。さらに、パビリオンの中には作品情報の書かれた資料がもう切れていたところもあった。

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マケドニア館のスタッフはこれを彼らの人柄でカバーするべく最善を尽くしてくれた。さらに最悪なことに、入口のサインが見えなくなってしまったがために展示会場であること自体がわからなくなってしまった場所まであった。(アッタ・キムの展示「オン・エア」の会場入口のポスターは激しい雨によってはがれ、下に描かれていた2007年の展示のポスターがあらわになっていた。)

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注目すべき「工事中」作品のリストは続く。信じられないほど湿気ったグルジア館(かびたソファはもはや座ろうという気になれない)、ルクセンブルク館では2つのビデオ作品の窃盗があったし、いちばん衝撃的だったのはアルメニア館の絵画作品の下で見つけた犬の糞の小さなかたまり。こうした例を挙げながらも私は、ヴェネツィア・ビエンナーレが夏の終わりには魅力を失うため絶対に6月か7月に行くべきだという話をしているのではない。

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むしろ私が強調したいのは、ヴェネツィア・ビエンナーレは変化し続けるイベントであり、オープニングから2ヶ月か3ヶ月経った頃には全く違う顔を見せるということなのである。何もかも正常に機能していないにも関わらず(或いはそのお陰で)、秋のビエンナーレはとても好ましく、楽しく、そして落ち着いている。真のビエンナーレファンならば、ここを二度訪れるべきであろう。

The 53rd La Biennale di Venezia (Venice Biennale)
会期:2009年6月7日(日)〜11月22日(日)
会場:ヴェネツィア
https://www.labiennale.org

Text: Daniel Kalt
Translation: Shiori Saito
Photos: Daniel Kalt

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