ヴェネツィア建築ビエンナーレ 2008

HAPPENING

外の世界:建物を超える建築。

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ヴェネツィア・ビエンナーレ第11回国際建築展は、建物を超える建築を探求している。総合ディレクター、アーロン・ベッツキーの手によって、この2008年の国際建築展は、実験と、ビジョンと、確かな批評精神が濃縮されたものとなっている。


アーロン・ベッキーは本展に寄せて次のようにコメントした。『では、建物を超えた建築とはなにか?私たちの考えるそれは、単にシェルターを提供するだけの建築でなく、混沌とした現代社会の中に安心できる空間を作り出し、さらに、我々が縛られている、コントロールできない建築の構造を変えるような選択肢を提案することもでき得るものなのだ。』

Venice Architecture Biennale 2008

ヴェネツィアでのつかの間の滞在の間に、私は会期終了2日前に2つの主な展示会場を訪れる機会を得た。32カ国がパビリオンを展開するジャルディーニと、23の厳選されたインスタレーションが名を連ねるアルセナーレ。アルセナーレに展示を行ったのは次の面々。アシンプトート、アトリエ・バウワウ、バークロウ・ライビンガー・アーキテクツ、ニゲル・コーツ、コープ・ヒメルバウ、ディラー・スコフィディオ+レンフロ、ドルーグ・デザイン+ケッセルクラマー、ヴィッセント・ガラート、フランク・O・ゲーリー、ザッハ・ロジーナ、プィリップ・ラーム、マシュー・リッチーとアランダ/ラッシュとダニエル・ボシア/ARUP AGUのコラボレーション、クラメルヴァンデルビア、ソニック、そしてUNスタジオ。

Venice Architecture Biennale 2008

国際展示では、ポーランドの展示「ホテル・ポローニアー建物の余生」に、最優秀賞である金獅子賞が贈られた。また最優秀インスタレーションにはアメリカのグレッグ・リン・フォームの「リサイクルされたおもちゃの家具」が選ばれた。すべての受賞作品はここでチェックできる。

Venice Architecture Biennale 2008
ポーランドのパビリオン「建物の余生」

グルゼゴルグ・ピアテックとジャロスロウ・トライバスによる「建物の余生」は建築物の耐久性に疑問を投げかけ、時間の経過と社会的変容がいかに建築に影響するかを問う。これはリサイクル物件というものを、当初の意味を離れて再定義する作品ともいえる。

Venice Architecture Biennale 2008
「未来のリサイクルおもちゃ」グレッグ・リン

グレッグ・リンはたくさんのプラスチック製の玩具を使って、魅力的な家具を製作した。『私の子供が、巨大で中身のないプラスチック製のおもちゃで遊んでいるのを見てアイデアを得ました。』と彼は言う。『誰もがすぐに手に入れることのできる製品に仕上げたかったのです。』

Venice Architecture Biennale 2008
ベルギー・パビリオン

ジャルディーニで見られるすべてのパビリオンを観覧したあと、私は思った。“展示を行った国すべてが、建物を超える建築というテーマを真剣に考え抜いたわけではない”と。展示の中には、よくある建築展覧会で見られるような、ありきたりなフロアプランや建築モデルもあり、それらは総合ディレクター、アーロン・ベッツキーが提唱するものとはほど遠く、少々がっかりさせられた。

個人的に印象に残ったのは、ベルギー・パビリオン。明るく白い空間に一面の紙吹雪が敷かれており、その一帯、さらには街全体にその跡を残していく。私は妻とちいさなトラットリアで食事をとっていたとき、ビエンナーレを訪れたのであろう隣の席の客が残していった2片の紙吹雪をみつけた。

ロンドンの住居について批判的アプローチを試みた、イギリスの展示もまた興味深いものであった。また、エストニアの展示は、ロシア館とドイツ館の間にガス管を通すというインスタレーションで、この展覧会で最も挑発的なものであった。

『計画中のノードストリーム・パイプライン・プロジェクトから発想を得て、このインスタレーションは実物大のガス管を、ロシア館とドイツ館の間に設置した。このプロジェクトの目的は、批判美術と建築の可能性を試すこと、そして現代の空間環境、政治的景観、生活基盤設備、エネルギー施設に課されている様々な課題を主張するものである』 – biennaal.arhliit.ee

Venice Architecture Biennale 2008
ガス管ーエストニアの展示

アルセナーレの方は、計23のインスタレーションで構成されている。ただ見るだけの展示ではなく、どれもが非常にインタラクティブで遊び心に満ちたものであった。
私自身は、ヴィセント・ガラートベスチアリオIカタロニア建築推進協会 (IaaC)、ビット&原子センター MIT (CBA)とコラボレーションした作品が気に入った。

Venice Architecture Biennale 2008
超住宅ー世界の再プログラミング

その作品「超住宅ー世界の再プログラミング」は、物体に埋め込まれたマイクロコンピュータで、家具、洋服、カトラリーといった我々の住む物質世界を表現したものである。そしてネットワークを表現し、繋ぎ、その間に横たわる関係性を確立するものであった。

Venice Architecture Biennale 2008
「家具のプロトタイプ:潜在意識のための3つの家」アシンプトート

アシンプトートのプロジェクト「家具のプロトタイプ:潜在意識のための3つの家」についても触れておきたい。これは、光に照らされた滑らかなプラスチック製の物質が、建物と家具の間に設置されたインスタレーションだ。

ヴェネツィア建築ビエンナーレ2008への訪問は、素晴らしく、刺激的な経験であった。総合ディレクター、アーロン・ベッツキーは自らの問いに対して適切なテーマを用意した。建物を超えた建築を考えるということは、社会を考えること。そして、イギリスの展示で見られたように、現代の住居を批判することは建築に必要なことであるに違いない。我々はいま、世界規模で危機的な時代を迎えているのだから。

第11回国際建築展覧会
会期:2008年9月14日〜11月23日
会場:ジャルディーニ、アルセナーレ
ジャルディーニは、1895年以来ヴェネツィア・ビエンナーレの歴史的展示会場である。この展示会場はイタリアン・パビリオン他、長い年月をかけて作られた30以上のパビリオンを擁し、現代建築にとって貴重な作品集(アンソロジー)ともいえる場所となっている。

Text and photo: Eduard Prats Molner
Translation: Shiori Saito

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