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ウィーン・アート・ウィーク 2008

HAPPENINGText: Daniel Kalt

これだけ色々な大衆参加型のイベントがあっても尚、ウィーンアートウィークはややお高く止まったアート界のエリートを一緒にした感は否めない。海外アートシーンを刺激する具体的な何かが感じられないのだ。ハイエンドな聴衆に向けてのみ講演を行うのは、少し危険なところがある。しかし、ウィーンアートウィークでは、新しい才能に出会う機会、既存の確立したアートーシーンから脱却する機会を得ることができる。こういった意味で、会期中に開催された最も面白いイベントは、「ARTmART」アートフェアだったかもしれない。

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Billboard

フェアでは、一作品70ユーロと標準的な値段で作品を買うことができる。キュレーターたちお墨付きのアーティストの作品が並び、そのほとんどは、アート市場に参入したばかりの若い有望なアーティストたちのもの。地元のキュレーターたちは、このアートフェアを有望なアーティストをスカウトできる場所として認識しているのだ。もちろん、大きなアート作品なんて買えないという質素倹約なアート好きのためのオプションも用意されている。

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Christiane Reiter

今回のフェアの秘蔵っ子は、クリスチャン・ライター。彼女の繊細なポートレート作品は、訪問者の間でも熱狂的な人気となった。彼女に話を聞くと、「作品の反応がしっかりと伝わってくるし、美術館のキュレーターやギャラリストたちとのネットワークの可能性も開けた」と大喜びの様子だった。

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Peter Wehinger

ARTmARTには、余りに多くの作品が展示されていて、どれかお気に入りをを選べと言われてもなかなか難しい。クリスチャン・ライターの作品の隣には、ピーター・ウェインガーのぬいぐるみの戦車が展示されており、全く害のないオモチャの戦車が並ぶ姿は何だか面白い。ウェンデリン・プレッスルによる訪問者向けに作られた詳細なマップも、まさにこのフェアに合った魅力的なデザインだった。

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ARTmART, Christian Eisenberger

クリスチャン・アイゼンベルガーによるインスターレーションは、ハイアーッシュホルンに似た作風を感じる(ただしこの作品に関してはあまり面白くはない)。また、ニチョス・ラビット・アイによる作品の中では、コマーシャルアートスペースで展開されるストリートアートの傾向が伺える。

一日の終わり、いやフェアの一週間の終わりの日に、主催者はその来場数を振り返って満足するかもしれない(個人的には成功に終わったと思うが)。しかし、長い目で見て、非常に控えめなウィーンのアートシーンを外からやってきた大勢の人々にとって、このアートウィークは本当に魅力的なものになっているのだろうか。そのような議論が内部で十分に行われているかは依然としてはっきりとしない。とりあえず、賞賛が上がっている限りは、このフェアの動向を追ってみてはどうだろうか。まだ3年の歴史しかないが、街のアートシーンへの大きな貢献を感じ取れる。これを考えれば、ウィーン・アートウィークは、秋の終わりの怒涛のアートフェアの後に小休止できる場所としてその地位を築いていくことだろう。

Vienna Art Week 2008
会期:2008年11月17日〜23日
会場:ウィンーン市内、ギャラリーなど
https://www.viennaartweek.at

Text: Daniel Kalt
Translation: Tatsuhiko Akutsu
Photos: Daniel Kalt

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