日本ファッション・ウィーク 2008

HAPPENINGText: Naoko Wowsugi

9月1日より、世界の4大コレクションに先駆けて開催された第7回「東京発 日本ファッション・ウィーク(JFW in Tokyo)」。数年前より日本のファッション界は様々な角度からファッション発信の強化に取り組み、コレクションも回を増すごとに盛り上がりを見せている。
5日間の会期中、コレクションに参加したブランドは37に及び、関連のスペシャルイベントが連日行われた。新進デザイナーが活躍するこのイベント。幅広いジェネレーションが会す中でも、おしゃれが大好きな若い世代が多く足を運び、JFWムードに染まったメイン会場の東京ミッドタウンは、ワクワクをスタイリッシュなアウターの中に押さえ込みながら次のコレクションを会場の前で並んで待つ人々のエネルギーで包まれていた。

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多才なデザイナー達が発表をするコレクションの中でも絶大なインパクトで私の目を覚ましてくれたのは「G.V.G.V.」。真っ白な光が強く放たれたランウェイを『隠す時代から見せる時代よ!』といわんばかりにビートの効いた曲に乗り、ボディコンシャスでプレミティブなデザインが颯爽と目の前を通ってゆく。野性とインテリジェンスを共存させた女性像。スキンカラーと黒が基となる色使いは新鮮、多様で建築的なパターンは一瞬で過ぎ去ってゆくのが惜しいほどに目を奪われる。

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DJ「Soft&Hard」としても活動するデザイナー「MUG」。自らの肌で「Tokyo」を触覚し、受け取ったものを脳内で分解し考える。そうして作り出されてゆくデザインには生命が見え、声が聞こえてくる。コレクションのコンセプトはデザインはもちろんスタイリングや、照明、選曲などが相乗してより具現化される。ファッションショーは舞台であり、ライブであって、イリュージョンであるのだと改めて気付き、この束の間のショーの後には心躍る感覚だけを鮮明に残され、しばらくそれにしびれていた。

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SOMARTA」、春夏のテーマは「EVOLUTION BODY」。ステージ正面にはこのテーマを助長するように、波のように漂うDNAをモチーフにしたCG映像が映し出され、ゆっくりと音楽が流れる。特異なヘッドドレスを着けた最初のモデルが登場すれば「惑星ソラリス」や「2001年宇宙の旅」のような哲学的SF映画の雰囲気に会場が演出される。アイボリー、薄いサーモンピンクなど優しい色をふんだんに使い、女性のやわらかさを神秘的、かつ科学的に引き出す。

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ショーが進行するにつれ、テーマにある通り、身体の進化が加速し、服のデザインも大胆にデフォルメされ、細胞、身体、宇宙といった生命の根本への興味がストレートに伝わってくる。ニットなどの素材を編み込み、骨格を表した作品にはため息がでるし、多くの時間を費やしたであろうディテールには感謝をしたくなる。デザイナーの廣川玉枝さんはファッション、グラフィック、サウンドをデザインする「SOMA DESIGN」を設立しており、決してファッションという外観だけでなく、人体から発生するというファッションの根源へも回帰しているようだった。
このコンセプチュアルなコレクションは会場全体がひっそりと、目の前で進化するファッションの未来を見守るかのようにショーに見入っていた。

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日本人の服装に対する関心やこだわり、外見に内面をも見出す文化には驚くほどの哲学や観察がある。若者はその歴史を引き継ぎつつも、世界中の文化や情報が集まるこの東京でありとあらゆる化学反応を楽しみ、そして独特なファッション文化を生み出している。今ではその多様なスタイルや独自の進化が世界中からの注目も高く、世界中のおしゃれがあこがれる街「Tokyo」へと繋がっていった。「東京発 日本ファッションウィーク」の歴史はまだ始まったばかりだが、海外からのプレスも多く駆けつけ、他の4大コレクションとは違ったポジションを確立してきている。秋の高揚感と共にポジティブエネルギーを放つ東京ファッションの未来はアカルイ。

東京発 日本ファッション・ウィーク 2008
日時:2008年9月1日~7日
会場:東京ミッドタウン・ホール Hall A、ラフォーレミュージアム六本木、原宿クエストホール、他
http://www.jfw.jp

Text: Naoko Wowsugi
Photos: Naoko Wowsugi

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