日本ファッション・ウィーク 2009 A/W

HAPPENINGText: Naoko Wowsugi

前回のS/Sコレクションに続き開催された、日本ファッション・ウィーク 2009 A/Wコレクション。世界中のファッションに出会える街「東京」だけあって世界中から多くのファッション、プレス関係者が集まった。東京の各所で数多く行われたショーやイベントをいくつかレビューしたい。

SOMARTASOMARTA

SOMARTA

「物質と人の意思がダイヤモンドのように輝き、比類なき堅固さ、アダマンティン(ADAMANTINE)」というテーマで前回の「生命の進化」から「人類の文明」に繋がったような今季のショー。このショーは服の根本の役割でもある防御から発想を得たよう。和と洋の鎧をモチーフにレザーとスワロフスキーを多用し女性の強さを輝かせ、その中にも前回のコレクションでも目を引いたニットワークと折り紙を連想させるパターン使いが繊細さと優しさを表現していた。明治時代のユニークさを現代に再現したように、和と洋を共存させ引き立たせ合うのはデザイナーの高いセンスを証明していた。会場の空気感、デザイン全てがコレクションの意思を強く反映し、細部で技を効かせてくるSOMARTAのショーの完成度に感嘆し、服を常に高尚な作品として再認識させられる。さらなる次元に進み続けるデザイナー、廣川玉枝の来期のコレクションも注目。

翡翠翡翠

翡翠

ラフォーレミュージアム原宿でおこなわれた翡翠の今季は「現代のジャンヌダルク」を展開した。
「ヘア」をテーマにしており、おかっぱヘアを思わせるハイウエストなスカートや三つ編みに見立てたニット、7:3分けのジャケット、たなびく髪の毛を連想させるモールやファー使いのデザイン。色もミリタリーカラーと黒をふんだんに使った。カジュアルで普段着用できそうなデザインの中に翡翠独特のテイストを用いてアクセントを効かせていた。迷路のようにセットされた長いランウェイをモデル達が仏頂面で颯爽と闊歩する様子は都会の中を戦闘態勢で歩く現代女性、まさに「現代のジャンヌダルク」をパワフルに打ち出しているようだった。

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小夜子

JFW映像スペシャル企画として催された「日本が生んだ世界のファッションモデル…世界を陶酔させた東洋の粋・小夜子」。2007年に急逝した山口小夜子さんが出演した数多くのファッションショーでの映像を編集し、モデルという存在を表現者へと昇華させた彼女の軌跡を上映した。会場には三宅一生をはじめ、多くのファッション関係者が足を運んでいた。この貴重な映像群を見ても山口小夜子の神秘を解き明かすことはできず、彼女の妖艶さに改めて憑かれてしまう。ファッションモデル=服を着る人がどれだけデザイナーにとって大切な作品の要になっているかということが分かる。人が服を選ぶのだが、服も人を選ぶのだ。ファッションは自身のセンスや内面を体現してくれる表現行為であり、山口小夜子はその危うさや喜びを全身全霊で伝えてくれた、まさに日本が誇る世界の「美」であった。彼女の映像を企画することで日本ファッションウィークのファッションという文化への貢献活動も知ることができた。

今回のファッションウィークは先に行われたパリコレクションに続いてということもあり、来場者のモチベーションが高くなっていた。世界のコレクションに必要不可欠な場所になりつつある東京コレクションは今がファッション文化の成長期であると感じられた。次のシーズンの進化や動向に引き続き注目していきたい。

日本ファッション・ウィーク 2009 A/W
会期:2009年3月23日(月)~29日(日)
会場:東京ミッドタウン・ホール他
住所:東京都港区赤坂9-7−2
https://www.jfw.jp

Text: Naoko Wowsugi
Photos Courtesy of Japan Fashion Week Organization

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