ロザルブ・デ・ムーラ
PEOPLEText: Kazumi Oiwa
ファッションシーンがまだ確立されてない、前共産主義国のルーマニアで一つの物語が誕生している。主人公の名前は、ロザルブ・デ・ムーラ。彼は、ルーマニアのファッションブランド「ロザルブ・デ・ムーラ」のスタッフが考えた空想の人物であり、何かを創造する時に現れ、彼らを動かすとても魅力的な男爵だ。ロザルブ・デ・ムーラは、空間と時間と情熱を持って旅するトラベラー、または、とても奇妙で様々な事に関心を持つ探求者として、彼の考えや好みをファッションで表現している。それは本当に独特で、時代錯誤な男爵だからこそ考えられる型破りなデザインと、そしてルーマニアの美しい風景を見せてくれる。そんなロザルブ・デ・ムーラ男爵を愛し、従事しているデザイナー、オラー・ジャーファス氏にお話を伺った。
Olah Gyarfas, designer for Rozalb de Mura
まずはじめに自己紹介をお願いします。
ルーマニアにあるトランシルヴァニアの山の中、ミエルクレア・チュクという所に住んでいます。空気がとても澄んでいて、冬はとても寒い場所です。雪が降り積もると、静かで、何もかも見えるもの全てを無にしてしまうような、私にとっては完璧な場所です。にもかかわらず、逃れられないリズムに捕われた筋骨粒々の肉体で彩られる熱帯の水々しさを備えたアフリカの赤い土といった、記憶の中のどこか懐かしい心の風景を夢見ます。
仕事が冒険に変わる時、何かを創造する時、物語の魔法を引き起こします。そこに現れるのが、神秘的で時代錯誤な男爵。それが、ロザルブ・デ・ムーラです。寛大な精神、空間と時間を情熱を持って旅するトラベラー、とても奇妙で、また芸術、音楽、自然および科学に関して熱心な探求者。そんな彼の元に従事し、デザイナーとして仕事ができることをとても幸せに思っています。
Rozalb de Mura FW 07/08 Collection「砕けた微笑および沈黙の叫び」
最近の活動を教えください。
5月末のブカレストでのルーマニアとフレンチファッションのフェスティバル「パサレラ」でショーを行いました。最近では「ランデヴー・オム」というパリのファッションフェアーに参加しました。
また、いろいろなアーティストと働く刺激的な過程がありました。現代美術、音楽と映像とロザルブ・デ・ムーラの関係は強力です。21世紀において、ファッションとアート、デザインの境界は魅惑的に流動していますね。
チームと共に、私たちは、多くの面白い専門的なプロジェクトに熱中しています。ロザルブ・デ・ムーラは英国の音楽家、ミハイル・カリキスにアイディアル・ベルリンでのショーの音楽の作曲を依頼し、私たちはこの秋発売予定の彼のリミックスアルバムやパフォーマンスの衣装を担当しました。そして、もう一つの最近のプロジェクトは、「When Things Cast No Shadow (影が失われる時)」と題した第5回ベルリン・ビエンナーレのために特別なバッグをデザインしました。
インテリアデザインも大好きで、インテリアデザイナーのリスト・ノアールと仕事する機会を得てショップ内装を手がけてもらいました。ロザルブ・デ・ムーラのショップは3つの異なる内装で構成されてます。
Rozalb de Mura FW 07/08 Collection「砕けた微笑および沈黙の叫び」
いつ、また、どのようにしてファッション・デザインの道へ進んだのですか?
この業界へは必然的に引き込まれていきました。故郷のトランスシルバニアの美術学校では絵画を勉強しました。そのことは私の将来へのマイル・ストーンとなりました。ティミショアラの美術大学でテキスタイル・デザインを選ぶという私の決断は、生い立ちが影響したのかもしれません。母は、仕立て屋でした。子供の時から、常に服やテクスチャーとパターンに囲まれていて、人々がそれを美しくまとう様子をよく見ていて、とてもワクワクしたものです。私は彫刻や服が持つ立体的な感覚がとても好きでした。
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