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マーク・ジェンキンス&木之村美穂「光沢ある一瞬のパラダイス」展

HAPPENINGText: Wakana Kawahito

通りを歩いている時、ゴミ箱に頭から突っ込んでいる人や壁に追突している人がいたら、よく見てほしい。それはもしかしたらアート作品かもしれない。

マーク・ジェンキンスはサランラップや包装用のビニールなど日常の素材を使い、彫刻を作るインスタレーションアーティストだ。そんな、ストリートをギャラリーにして活動しているアーティストがこの度初めて日本に来日。ロサンゼルスを拠点に活動する木之村美穂(STUDIO.D.O.G.INC)とのコラボレーションによる展覧会を東京・青山にある「DIESEL DENIM GALLERY AOYAMA」で行った。

マーク・ジェンキンス&木之村美穂展

テーマは「Glazed Paradise」(光沢ある一瞬のパラダイス)。マーク・ジェンキンスが作り出す「一瞬のパラダイス」とは?マーク本人と木之村美穂さんにインタビューを行った。

まずは、アーティストのマーク・ジェンキンスに今回の展示について聞いた。

展示されているそれぞれの作品について詳しく教えてもらえますか?

会場を入ってすぐ右手にある作品は「ピクニック」というもので、「ピクニック」とは3つの人形が囲んでいるサークルのことを指しています。これは、今回のインスタレーションのメインであり、4人目である観客を招いています。この作品では、中央に置かれたおっぱいをピクニックにきた四人が箸で狙っています。これは一見おかしく馬鹿げていますが、実はそこには深い意図が隠されているのです。観客側から見て正面にいる骸骨の頭をした人形は死を意味しており、隣の象徴的な”胸”を持つ女の子を見つめています。この女の子は自分を見失っていて、いろんな意味でこの中のメインのキャラクターになりうると考えています。観客から見て左隣に位置する、犬の頭をして舌を出した人は、真ん中にあるおっぱいを見つめています。それは、セックスに対する我々人間の、動物的”強欲”を表しており、サークルの中央にはビニールで作られた赤ちゃんが上から食物を狙って降りてきています。
この作品では、セックス、死、強欲、 育成の必要性、に対する緊張が、瞑想的なサークルを通して一種のバランスを保っている世界、を表現しています。

マーク・ジェンキンス&木之村美穂

もう一つのメインのインスタレーションは膝をついている女の子の上に天使が浮いていて、その下をアヒルが泳いでいるというものです。こ こでも金髪の女の子がメインになっています。先ほどと同じで、頭を垂れて目の前が見えないこの女の子は自分を失っている状態にあることを示唆しています。彼女は頭髪のない幻影(天使) にひざまずき、膝を開いてアヒル達が彼女の性器へ戻っていくのを待っているのです。「ピクニック」と同様に、彼女が悲しいのか、恥ずかしいのかま たは深いトランス状態にあるのかどうか、を感じとることは難しいのですが、女の子が祈っていることで、また違う瞑想空間を作り出しています。
この作品には観客に対する直接的な”招待”はないのですが、祈る金髪の女性の隣に同じようにひざまずいて鑑賞するのがベストな方法ではないでしょうか。

マーク・ジェンキンス&木之村美穂

他のインスタレーション「Trasher」(ゴミ袋に足のついた人)とその隣にいるつぶれたこの女性はカモフラージュを意味していて、さらにこの女性は”trashed”(英語のスラングで飲み過ぎてつぶれてしまった人)を意味しています。つまり “trash(ゴミ袋)” と “trashed(飲み過ぎた人)”をかけているのです。

マーク・ジェンキンス&木之村美穂

階段を上がった二階のビデオがある場所では別のカモフラージュがあり、彼女はギャラリーを訪れ、ビデオを見ながらキーボードの上で気絶してしまった……という設定です。

私の多くの作品はハイパーリアリズムにおけるカモフラージュ(ダマし)を町中で展開していますが、今回、これらをギャラリーの中で行うことは一種の挑戦でした。

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