フランシスコ・ロペス

PEOPLE

エクスペリメンタル・エレクトロニックミュージック界のブラームス。

フランシスコ・ロペス

フランシスコ・ロペスは国際的に有名な、エクスペリメンタルミュージックシーンの代表的な人物の一人である。ベルリンで最近行われた「märzmusik 2008」での彼の実体験型ライブパフォーマンスは、この5年間私が見てきた中で最高に素晴らしいものだった。本当に実体験できたライブだ。ここで言う「実体験」というのは、その音楽の中に吸い込いこまれてしまうような状態のことだ。 ロペスは、シンセサイザーを使わず、自然や現実に存在する音だけを使って音楽を作っていく。しかし、その音景はとても人工的で、いままで聞いたことのない音の世界へ招待されるようだ。彼とのインタビューでより詳しい内容を理解していただけるだろう。

あなたの音楽はよく催眠的と呼ばれますが、それが目的なのですか?


私の音楽を聴いてくれる人たちには、それ以上のものであって欲しいと思っています。音と一体化し、個々の記憶や感情、想像の扉を一つずつ開いていくような経験や、私がコントロールや想像さえできない受け止め方をして欲しいと思っています。これが、私の考える個々が自由な体験をするための音楽 “空白の現象” です。私にとって、表現やコミュニケーションというものは 重要ではなく、音楽を作る側からみれば、それは見当違いであると思っています。音楽のエッセンスは、私たちではなく、音楽を聴いている人によって作られるものなのです。そのような目線から見れば、作曲家はある種の “媒体” (厳しい言葉で表せば)となり、技術者というかたちでより重要になってくると思うのです。彼/彼女の役割を減らしてしまうのではなく、その音を操作し肉付けするために、技術とケアを重んじるという考え方です。

いつもどのようなセッティングでパフォーマンスが行われるのですか?

観客の周りには、サウンドシステムに囲まれたマルチチャンネルがあります。会場は暗闇の中で、観客に目隠しをくばり、私自身は、丸く並べた椅子(またはマットレス)の中心にスピーカーの方を向いて演奏しています。

フランシスコ・ロペス

目隠しについて、なぜ、観客に目隠しをすることを求めるのですか?

私のパフォーマンスにおいて、視覚的な要素は目障りなものと感じるようになったのです。音が内へ浸透し、その価値を知り深い経験をする、視覚はそれを邪魔するものなのです。目隠しは単純ですが、とても効果があります。ライブパフォーマンス中に完全な暗闇を作り出すこともできます。また、このようなプレゼンテーションは、集合的にも深い経験をすることができます。ある種の、任意的な儀式のよう。

フランシスコ・ロペス

フランシスコ・ロペスをエクスペリメンタル・エレクトロニックミュージック界のブラームスと呼んでもよいでしょうか?

オーケストラミュージックのコンセプトやその始まり方など、ライブパフォーマンスが作り出すものには大変興味があります。それらの音楽が作り出す経験には、スケールや音色、音の感触のようながものがあり、 私はクラシックミュージックで演奏する楽器は使いませんが、 その “具体音楽” を持っていると思います。ある意味、私のゴールは、観客の周りや、その内を通して、音でできている全世界の潜在性を引き起こすことなのです。

ご自身の音楽をよく 「絶対的具体音楽」と呼んでいますが、その意味は?

本質的には、私たちの精神/心の扉にアクセスする音へ深い敬意をささげています。音楽を全く知らない人たちでも、理論的や神学的にではなく、非常にはっきりしたダイレクトなかたちで経験できるものなのです。

生物学者として勉強されたようですが、 その経験がご自身の音楽のコンセプトへどのように影響していますか?

基本的に、現実にある特別な自然の音、熱帯雨林や砂漠のような音に没頭できる機会を、私に与えてくれていると思います。実際、現実は材料(例えば録音など)だけではなく、インスピレーションというとても重要なものを与えてくれるという特徴を持っています。これらは、どんな条約やソフトウエアよりも遥かに私たちの概念にある速度や、スペース、音質クオリティ、強弱やテキスチャーなどに決定的な影響を及ぼすのではないかと思うのです。

ピエール・シェフェールとミシェル・シオンの他に影響を受けた人物はいますか?

私にとってシェフェールとシオンの両方は、音楽用語についてではなく、いつも 「具体音楽」を理解する上で欠かせない存在です。他にも異なった多くのアーティストから影響を受けましたが、私は “現実” から多くのことを学んだように思います。後者の影響と、その可能な技術的変化によって、私はこの仕事をしてるのです。

将来はどのような方向に進んでいきたいと思っていますか?
今後、エクスペリメンタルミュージックがどう発展していくかご自身の意見をきかせてください。

私は将来を予想するのがとても苦手なので、いつもエクスペリメンタルミュージックの将来はわからないと思っています。おそらく、この音楽が50年ほどにわたってここまできたのですから、時代の時術的傾向の特徴を示すのではないでしょうか。個人的には、音楽を見せ物にする代わりに、これを進める集団(または個人)を作ることで、音楽と観客の関わり方のレベルを上げていくことができればと思っています。

フランシスコ・ロペスのCDはアマゾンで購入できます。

Text: Shintaro Miyazaki from La-condition-japonaise, Berlin
Translation: Maki Otomo

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