フランソワ・ピノー・コレクション展「時間の通路」

HAPPENINGText: Kana Sunayama

次にアートの中心に位置するアメリカやヨーロッパなどの、欧米出身ではないアーティストたちによって、現代の世界における文化的アイデンティティーの違いが暴力的に捉えられた作品群。アデル・アブデスメッドの主要作品は、全て揃っていた。

フランソワ・ピノー・コレクション展
Hiroshi Sugimoto, “The Last Supper”, 1999

ビジターを最後の最後まで感嘆させ、喜ばせることが目的のように並んだ杉本博司、アンドレ・セラーノ、トーマス・シュトルートの写真たち。宗教、とくにカトリックの最後の晩餐をモチーフにあつかった作品が多く見受けられた。

フランソワ・ピノー・コレクション展
Bill Viola, “Going Forth By Day”, 2002 © Adagp, Paris 2007

そして何よりも声を失わせるビル・ヴィオラの5本のビデオ。

フランス現代アート界関係者から惜しみない賞賛を受けた今回のフランソワ・ピノー・コレクション展。「これもピノーが買っていたのか。これもピノーが持っていたのか。」とほぼ全ての作品の前で、ため息をつくほどの量と質を併せ持つ展覧会であった。素晴らしいコレクションと展示であったが、ここ数年の大衆向け展覧会に見られるような遊園地的アトラクションがない展覧会でもあったので、普段現代アートと関わりの多い人にだけ評価の高いものかと思っていたが、最終的には3ヶ月にわたる開催期間中にこの展覧会に9万3千人もが足を運んだようだ。

フランスで最初のコレクション展を首都であるパリでは行わず、リールという街で開催することによって地方分権にも貢献したフランソワ・ピノー。しかし、イギリスやベルギーからの観光客も多く、そしてパリからも電車で一時間というリールの選択には、彼の実業家としての戦略も多いに感じた展覧会であった。

François Pinault Foundation Collection: Passage du Temps
会期:2007年10月16日〜2008年1月6日
会場:リール、Tri Postal
https://www.lille3000.eu

Text: Kana Sunayama
Photos: Kana Sunayama

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