丸田絢子

PEOPLE

ファッションと建築とアートの境界線。

丸田絢子
撮影・首藤幹夫

日本でも多くのファンをもつブランド、DIESEL。そのDIESELが展開するDIESEL DENIM GALLERYは、ニューヨークと東京のみに存在するショップとギャラリーを兼ねた空間だ。オープン以来、若手を中心とするアーティストのサポートを一貫して行なってきたが、今回、DIESEL DENIM GALLERY AOYAMAでは、アーティストとして初めて建築家をフィーチャー。

その第一弾は、丸田絢子氏。2006年に独立したばかりだが、コマーシャルスペースやインスタレーションなどで活躍し、注目を集めている。1階での展示は、それ自身、いかにも建築的なオーダーを主題とするインスタレーションでありながら、商品ディスプレイとしても融合しているドラマティックな作品となった。その丸田氏に、作品を中心としてインタビューを行った。

現場用ランプでつくろうと思われたきっかけ、また、そのどこに魅力を感じられましたか?


作品製作は、設置するDIESEL DENIM GALLERYの空間を考えることからスタートしました。天井高が4.8mと高いことを生かすため、天井から作品を吊り、ダイナミックさを出したいと考えました。そこで、何を吊って作品を形作るかをはじめて考えたのです。私は、これまでもスチールやダンボールといった見慣れた素材の中から、新しい見え方を作り出す作品を作ってきました。そこで、今回も、普段吊られているものの中から素材を選びたいと考えました。工事現場用のランプは建築の仕事の際、よく現場で見かけていたものです。夕方になると、作りかけの荒々しい現場の中で、ランプとゴールドのシェードが美しく浮かび上がります。実用性のみを追求してつくられたランプがこのような美しさを持っていることに、作業着として誕生し進化してきたデニムの歴史に通じるものを感じ、作品の素材として採用しました。

丸田絢子
撮影・首藤幹夫

製作過程で一番、ご苦労された点は?

ランプの集合でどのような形を作るかを一番考えたと思います。一つのケーブルに一つのランプしか吊り下げられない。この条件をクリアし、また、条件を感じさせないくらい強いメッセージを持つ形を作りたいと考えました。そこで私のバックグラウンドでもある建築から、アーチと柱という様式を採用しました。ランプがアーチの曲線と、柱の上下についた装飾部を表現し、ランプを吊るすケーブルが柱や壁といった面を表現します。アーチと柱という様式は本来下から石を積み上げられて作るものです。そのような形を上から吊り下げられたもので作る、というのも面白いなと考えました。

丸田絢子
撮影・首藤幹夫

このインスタレーションで、もっとも魅力的だと思われるのはどこですか?

形と構造について、実体と虚像について、オブジェと空間についてなど、様々な切り口で読み取っていただけることでしょうか。Suspended Figureの柱の下端は床から浮いており、アーチは途中で断ち切られています。下から積み上げられて作られる本物のアーチではありえない状態です。まったく違う構造をもちながら、形は同じスタイルをとる違和感。この感覚を突き詰めていけば、私たちがどのように形を認識しているかがわかるのではないでしょうか。また、この作品では単体のオブジェが、集合することで空間に近いスケールへと拡大しているのですが、オブジェと空間の境界は一体どこにあるのでしょうか。Suspended Figureは発光する見た目がとても華やかな作品ですが、その華やかさの先に、様々な思考を許容する深さをたたえていてほしいと思っています。

丸田絢子
撮影・首藤幹夫

インスタレーションであると同時に、ショップのインテリアにもなっているわけですが、そのあたりでご苦労された点、逆に、なにか発見された点はありますか?

今回ホワイトキューブの中に作品を作るのであったら、もっと悩んでいただろうと思います。私はこれまでアートとしてものを作るというより、建築家として活動してきました。建築家として活動していくと、クライアントの要望や敷地の条件は作品のコンテクストの一部となります。特徴のある空間の中で、デニムを中心とした商品と共存する作品をつくるという状況は、建築家の活動に近く、とっかかりは見つけやすかったと思います。

丸田絢子
撮影・首藤幹夫

Suspended Figureはもともと、形を扱った抽象的な作品であると同時に、ショップインテリアとして成立することを考えて作りました。ランプの集合体だけでなく、商品を載せる什器やハンギングパイプなども私がデザインしましたし、商品やトルソーの基本的な配置もイメージスケッチの形で指示しています。作品とショップが共存しているというよりも、ショップの形を取った作品というか、空間全体を作品と感じていただければうれしいと思っています。

今日、建築家にとって、仕事がしやすいとも、しにくいともいえる時代ですが、丸田さんご自身のスタンスはいかがですか?

経済成長や環境のことを考えると、純粋に建築を作るという仕事は少なくなってくる時代かと思います。これからは、建築家としてではなく、より広義のデザイナー、クリエイターとしていかによい作品を作っていくかが大切だと考えています。

丸田絢子
“SO-EN 70th+1 PAPER FANTASY”

かねてより、デザインとは様々な問題を創作活動で改善したり、ときに感動を与えることと考えていました。ですので、建築というジャンルに捕らわれず、その状況に最良のデザインを提供できる今の時代は肌に合っていると思っています。ただ、建築という学問そして職業が与えてくれた技術的な知識、デザインへの感性、多くの業種の人々とのかかわりは、広義のデザイナーとしても最大の武器であり、アイデンティティーであると感じています。どのようなジャンルの仕事をしても、やはり建築家と呼ばれるよう、アイデンティティーの感じられる仕事をしていきたいと思います。

丸田絢子
“DAIRY FRESH STORE”

丸田さんのこれまでのご活動をお教えください。

設計事務所で建築デザインの経験を積んだ後、2006年に独立しました。独立後は若さというか、発想力を求められる仕事をいただくことが多く、ショップのインテリアデザインや展覧会場の空間デザインなど、ジャンルを問わずに活動しています。今後は、リノベーション(改修)やコンバージョン(用途変更)にも挑戦できればと思っています。

Suspended Figure
会期:2008年1月30日〜8月17日
会場:DIESEL DENIM GALLERY AOYAMA 1F
住所:東京都港区南青山6-3-3
TEL:03-6418-5323
営業時間:1F STORE 11:00〜20:00/2F GALLERY 13:00〜20:00
www.diesel.co.jp/denimgallery

Text: Masaaki Takahashi (Curator)
Photo: Mikio Shuto, Daici Ano

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