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ニーブス・ブックス

PLACEText: Nem Kienzle

はじめてニーブス・ブックスの名前を耳にしたのは、 東京の友人が経営する No.12 ギャラリーがニーブス・ブックスとコラボして「A World Zine Exhibition」を企画しているというのを聞いた時だった。それからしばらくして、ベルリンのアートブックストアPRO QMで購入したジョッシュ・ペセリックのジン「Lispering」が、またもやあのニーブス・ブックス出版だった。

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チューリッヒのホールストラッセにあるニーブス・ブックスのオフィス

白黒コピーをホチキスでとめただけのジン。かわいいけれど、どことなくノスタルジックで大人の雰囲気が漂うイラスト。ドキッとするような素肌に迫る写真集。ニーブスの出版物は日常的にデザインやアートブックに見慣れている目にも新鮮に映る。では一体何がニーブス・ブックスをそんなに際立たせているんだろう。そして、どうやったらこんなに沢山の面白いジンや本が、スイス一小さいインディペンデント出版社から生み出されているのだろう。というわけで、日頃からニーブス出版への熱い思い入れもあり、興味半分でチューリッヒにあるニーブス・ブックスのオフィスを訪ねてみることにした。

実際訪ねてみると、2001年創立のニーブス・ブックスはアートブックやジン専門の個人出版社だった。創立者で経営者でもあるベンジャミン・ソマホルダーはアートディレクターでもある29歳のスイス人。

ホールストラッセのオフィスはコンクリートビルの一階にあり、ファサードはカーブした巨大なガラス窓で覆われている。その前には近所の中古車販売店のオレンジや青のビンテージカーが並び、60年代のガソリンスタンドみたいな雰囲気を醸し出している。オフィスの入り口にシンボルマークとして掲げられている看板はグラフィックアーティスト・映画制作者として有名なマイク・ミルズによるもの。

オフィスの中に入ると更にタイム・トリップ。古い木の家具の上に本が積み重なり、ポスターが壁一面を覆っている。奥の部屋にも本棚が壁一面を埋め尽くしていた。ここは一般の人が思い描いているミニマリストなスイス人デザイナーのオフィスとはほど遠い空間。どちらかといえば散らかったアトリエといった感じだけれど、それがまたなんともいえないくつろいだ雰囲気をかもしだしている。


ヴィトラ社デザイン家具カタログ「ホーム・コレクション」

オフィスのインテリアはスイスの有名グラフィックデザイナー、コーネル・ウィンドリンが手がけたヴィトラ社デザイン家具カタログ「ホーム・コレクション」に登場するインテリアを連想させる。このカタログでは、飾り気のない日常の生活スタイルに魅力と美を再発見している。実はベンジャミン本人もこのカタログ制作にスタッフとして参加しており、ニーブス・ブックスで紹介しているアーティストの作品がこのカタログを飾っている。

このオフィスから数えきれないジンと本が生み出され、ベンジャミンと同じ感覚を持った人々の手に渡っていった。

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