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第4回 ベルリン・ビエンナーレ

HAPPENINGText: Yoshito Maeoka

第4回ベルリン・ビエンナーレが始まった。今回は、かつてベルリンのコマーシャルギャラリーがしのぎを削ったアウグスト通りを中心に展開される。かつて、と書いたのは既にベルリンのアートの中心はここミッテ地区の中心から移動しており、もはやベルリンアートシーンの立役者である幾つかのギャラリーは数えるほどしか無い。正確には、2005年9月のガゴシアン・ギャラリー・ベルリンのプレイベント開始からベルリンビエンナーレはスタートしていた。それ以来、ここでは毎月の企画展を行い今日に至っている。

さて、このガゴシアン・ギャラリー、世界のアートシーンを詳細に記憶する人間であれば耳にあるかもしれない、ニューヨークにある世界屈指のコマーシャルギャラリーだ。遅れてやって来た有名ギャラリー、これはビエンナーレのディレクターであるマウリツィオ・カテラン、マッシミリアーノ・ジオーニ、アリ・スボトニクの仕掛けた手の込んだジョークだと受け取って良い。

ディレクターである彼らについて少し触れよう。マウリツィオ・カテランは、アーティストとしても知られている。マッシミリアーノ・ジオーニ、アリ・スボトニクは、それぞれキュレーターやライターとしてニューヨークを中心に活躍。3人は、ニューヨークにロング・ギャラリーというスペースを持っており、今回のビエンナーレに出品しているポール・マッカーシー、トマ・アブツ、ティノ・セーガルマーティン・クリードを始め、パヴェウ・アルトハメル、サム・デュラント、キャメロン・ジェイミー、ジェイソン・ローズ、エリザベス・ペイトン、パオラ・ピヴィ、シラーナ・シャーバジなど最先端のアーティスト達を取り扱っている。

今回のビエンナーレでは「OF MICE AND MEN(二十日鼠と人間)」と題している。これは18世紀のスコットランドの文筆家ロバート・バーンズの詩が起源で、後にジョン・スタインベックが同名の不条理劇を書いている。一般的な国際美術展の動向である、新しい才能やムーブメントを鮮烈に紹介する、といった傾向ではなく、過去と未来という時間のつながりを描く事に重きを置いた構成となっている。これは暗に、ベルリンという街が様々な栄誉と敗北、両方の側面を抱えている事を浮き彫りにしている。

ところで、この展覧会では時間と場所を越えて60を越えるアーティストが名を連ねているが、この中にアジア系のアーティストは含まれない。テーマは「誕生」「喪失」「死」「屈服」「悲嘆」「哀愁」という生における基本的な概念となっているが、そのような概念を演出するには、ヨーロッパを舞台とした場合、アジアは少々その役割からは外れてしまう、という事なのだろうか。少なくとも私は、アジア系のアーティストが国際舞台でアジア人としての役割を演じる、という傾向と表裏一体だと感じた。

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