SAL VANILLA パフォーマンス

HAPPENING

オリジナルの空間芸術を生み出すパフォーミングアートユニット「SAL VANILLA」が、横浜市の旧郵政博物館倉庫をリノベートした「横浜 BankArt NYKホール」を会場にして、独特な空間の特性を生かしたライブパフォーマンスイベント「+813」及びサウンドメディアイベント「.JP」を行った。

2005年中、全三回に渡って開催されているイベント「Vanilla Sports」では、Vol.01、02と好評を博してきたSAL VANILLAだが、その中間地点における今回の開催は、日本オリジナルな現代的表現感覚にフォーカスしたものとして、タイトルにも表れている。


横浜の運河沿いに開かれたエントランスエリアでは、「KLOMA」「LUFTZUG」らDJによる野外ラウンジが運営されており、バー「Vanilla Fish」のブースが並ぶ。まだ残暑が厳しいながらも、清清しい景観と海面にまで響き渡るサウンドの中、開演までの時間を思い思いに過ごすことのできる気持ちの良い場所だ。つまり訪れる者はこの場所についた瞬間から、既にイベントの空気を感じることになる。

「BankART Studio NYK」会場内は、中央に大きな柱が並んでいること、そして残響が凄まじいという特徴がある。この度ここで行われたパフォーマンスは、そういった特徴が全て最大限に活かされていた。会場の特徴と全ての要素が完全な一体感をもって、通常の劇場では成し得ない数々の表現を可能にしたのだ。会場の3分の2以上を占める上演スペース、その5面に渡って2台のプロジェクターから投影される光や映像は、見る者の空間感覚を狂わせた。

「+813」は、SAL VANILLAの新作公演2作品、「MINIMALMAN」と「人ノ像」を中心に展開された。サウンドアーティストによる日替わりのライブ上演も行われ、公演2日目に登場したダブDJ「knoto」は、サウンドテクニックと共に観客をこれから繰り広げられる空間の世界へと導いた。心地よいエントランスエリアから会場に入り席についた観客がその世界へ迷い込むまでは、一瞬の事だった。

最初の作品「MINIMALMAN」は、「KLOMA」の迫田悠の映像と「WC」のsalmonの音が加えられた、蹄ギガのソロパフォーマンス。柱によって大きく4つに分割されたスペースを移動しながら、シンプルで奇妙な動きを展開していく。セットされた机上のカメラによって顔や指先がリアルタイムで場内に大きく映し出されたり、時に思い掛けない場所から現れるプロップが用いられ、使用されたそれらは散乱していった。動き、プロップ、映像、音のまさに”ミニマル”な構成の中、後半は自転車を使った回転、光の回転が加えられ、ゆっくりと激しさを増して最後には完全に会場を呑み込んだ。ギガ氏の存在感、顔の表情から指先に渡る表現はもちろんのこと、場所と映像と音と動きの統一感には圧巻である。

続く「人ノ像」は、同じ蹄ギガの演出で、7名のSAL VANILLAメンバーによって演じられる作品。映像投射の設計を建築家の河内一泰が行い、サウンドを「WC」のsaoriが手掛けたものだ。前列に並べられた椅子に腰掛け、7名が支離滅裂な単語を呟くことで、客の現実的な注目を一瞬集めると、瞬く間に映像と絡みあい、音を掴んで非現実の世界へと広がっていった。投射される様々な映像によって奥行きの感覚を失わせられる。細胞にまで届く音によって、均一に見えて個性が強調された7名の表現によって、自分が一体どこにいるのか、または時間の認識さえも簡単に壊されてしまった。また、この人数ならではの力強さや”対称”の面白さが随所に感じ取れた。

一方、イベント期間中の1日のみを使って開催された「.JP」では、音楽とマルチメディア表現を主体としたライブパフォーマンスが行われた。マシュー・マーティンの幻想的なサウンドインスタレーションに始まり、ターンテーブリスト真鍋大度とビジュアルアーティスト堀井哲史のライブは、激しいテクニックと驚異的なサウンドでいつまでも会場内を振動させる。

サウンドアーティストbloken hazeとkiyoは深く軽快なビートと共に和ませ、「+813」でサウンドを手掛けた「WC」のsalmonとsaoriが、ビジュアルアーティストVokoiと共に体感的なライブでそれに続いた。振動が心臓に触れる程に大きく広がるサウンドと、それぞれの世界観を繰り広げるビジュアルの数々。会場に備えられたターンテーブルの4つのブースは、ライブが終わる度に次々に下げられ、最後にドラムを中心としたパーカッションのセットが2つ残された。

そのセットの間に「ROVO」主宰のバイオリニスト勝井祐二が、腰を下ろした。静かに聞こえてくるバイオリンの音は、「KLOMA」の迫田悠による映像と重なり水面に広がる波紋のように響き渡り始める。バイオリンの音はエフェクターを通して加工され、まるで多重演奏をしているような効果を持っていた。ドラム・パーカッションの芳垣安洋と岡部洋一が登場すると、響きは何重にも膨れ上がった。実際に楽器から生まれる音と、さらに残響が共鳴しあう中、SAL VANILLAのメンバーが登場する。音の高鳴りに合わせるように加えられた力強い動き。幾度もの高揚を向かえながら、果てしない空間サウンドパフォーマンスが続いた。

こうして「+813」「.JP」2つを通して感じられたのが、統合することで生まれる、もはやジャンルを問わない空間の可能性である。単独で“パフォーマンス”となり得るあらゆる要素やアーティストを統合し、見事な一体感をなして横浜海岸沿いのある一角を揺るがした。建築、音、映像、身体表現、インタラクティブメディア、それらが織り成す空間の様子には、四次元という世界が見えるとしたらこういうことではないだろうか、とさえ思う。

時には、立方体の内側一面に貼付けられたような感覚、時には宇宙空間の闇に浮かび上がる現象を見るような感覚に陥り、そういった感覚が重なるほどに、イベント全体の広がりを体で感じた。デジタルであってアナログ、均一的なバラバラ、静かで激しい、丸くとがった、古くて新しい、ここまで矛盾表現があてはまる空間は、たぶん他には見られないであろう。

「BankART Studio NYK」という会場がこれから迎え入れるもの、そして、そんな会場を見事に染めあげたSAL VANILLAという集団がこれから益々発信していくものの2つに注目したい。

SAL VANILLA 「+813」「.JP」
日時:「+813」2005年9月7,8,10日 19:00〜 11日 17:00〜
   「.JP」2005年9月9日 17:30〜
会場: 横浜 BankART NYKホール
住所: 横浜市中区海岸通3-9
TEL/FAX : 045-663-4677
問い合わせ:SAL VANILLA(03-3710-5344)
info@salvanilla.com
http://www.salvanilla.com/813/

「+813」
上演作品:SAL VANILLA「人ノ像」、GIGA HIZUME 「MINIMALMAN」
ライブ: Missing Man Foundation、knoto、broken haze、松本充明

「.JP」
出演: 勝井祐二 (ROVO)、芳垣安洋、岡部洋一、迫田悠 (KLOMA)、真鍋大度、堀井哲史/salmon (WC)、saori (WC)、Vokoi (ARch)、broken haze (insector labo)、kiyo (schematic)
空間・サウンドインスタレーション:河内一泰、Eiji Nexus 6、Mathieu Martins

Text: Yurie Hatano
Photos: Photoperformer Pas

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