サル・ヴァニラ「+813」「.JP」

HAPPENINGText: Yurie Hatano

「+813」は、サル・ヴァニラの新作公演2作品、「ミニマルマン」と「人ノ像」を中心に展開された。サウンドアーティストによる日替わりのライブ上演も行われ、公演2日目に登場したダブDJ Knotoは、サウンドテクニックと共に観客をこれから繰り広げられる空間の世界へと導いた。心地よいエントランスエリアから会場に入り席についた観客がその世界へ迷い込むまでは、一瞬の事だった。

最初の作品「ミニマルマン」は、クロマの迫田悠の映像と、WCの音が加えられた、蹄ギガのソロパフォーマンス。柱によって大きく4つに分割されたスペースを移動しながら、シンプルで奇妙な動きを展開していく。セットされた机上のカメラによって顔や指先がリアルタイムで場内に大きく映し出されたり、時に思い掛けない場所から現れるプロップが用いられ、使用されたそれらは散乱していった。

動き、プロップ、映像、音のまさに “ミニマル” な構成の中、後半は自転車を使った回転、光の回転が加えられ、ゆっくりと激しさを増して最後には完全に会場を呑み込んだ。ギガ氏の存在感、顔の表情から指先に渡る表現はもちろんのこと、場所と映像と音と動きの統一感には圧巻である。

続く「人ノ像」は、同じ蹄ギガの演出で、7名のサル・ヴァニラメンバーによって演じられる作品。映像投射の設計を建築家の河内一泰が行い、サウンドをWCのサオリが手掛けたものだ。前列に並べられた椅子に腰掛け、7名が支離滅裂な単語を呟くことで、客の現実的な注目を一瞬集めると、瞬く間に映像と絡みあい、音を掴んで非現実の世界へと広がっていった。投射される様々な映像によって奥行きの感覚を失わせられる。細胞にまで届く音によって、均一に見えて個性が強調された7名の表現によって、自分が一体どこにいるのか、または時間の認識さえも簡単に壊されてしまった。また、この人数ならではの力強さや“対称”の面白さが随所に感じ取れた。

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